【ミニレポート】「2019国際ロボット展」 おっ! と思った技術はコレ!

 「2019国際ロボット展」(主催=日本ロボット工業会、日刊工業新聞社)が、12月18日~21日までの4日間、東京ビッグサイトで開催され多くの来場者で賑わった。現在、ロボットを活用した製造ラインの自動化・省人化がトレンドだが、「おっ!」と目を引いた技術を掲載する。

(順不同:不二越、東芝機械、DMG森精機、トライエンジニアリング、ミツトヨ、ジェイテクト)






1㎏可搬ミニロボットは世界最小6軸設計
1㎏可搬ミニロボットは世界最小6軸設計
 不二越で注目したのは、新製品の「MZ01」。これは、クラストップレベルの高速・高精度を誇り、1㎏可搬のミニロボットだ。1㎏可搬クラスでは世界最小6軸設計となっている。こうしたロボットは、電子基板の部品など、非常に小さい小型電子部品の組み立てにはもってこい。小さいので作業者1人分のスペースに2台設置可能であることも嬉しい。







バリ取りセル
バリ取りセル
 不二越は、多彩な事業・技術をあわせ持つ総合機械メーカーという強みがあるが、この強みを存分に生かしたバリ取り・面取りなどの仕上げ加工を自動化する「ロボットバリ取りセル」が展示してあった。ワンパッケージにして売り出した、というのはおそらく不二越が初めてだろう。ティーチングもあっという間で簡単だった。コンパクトボディなうえ、ロボット、スピンドル、回転テーブルを標準装備し、押し圧を柔軟に変えられるため、ダイカストや樹脂など幅広いワークに適応する。そして、バリ取りセルとともに幅広い用途で活躍する超硬ドリル「アクアドリルEX スターティング」も展示してあった。食いつきがよく、高精度な位置決めが可能であり、切れ味のよい刃先形状は良好な加工面をもたらせてくれる。また、同社では中期スローガンに「世界のものづくりを先進のFAシステムとメカトロニクスで革新する」を掲げており、ロボット事業に注力している姿勢と気合がひしひしと伝わる展示だった。



重いものでも細かくスピーディーに動く!
重いものでも細かくスピーディーに動く!
 東芝機械も、自動化ニーズに対応していた。同社の目玉となったのは、新製品のスカラロボット「THE600」とロボットコントローラ「TS5000」。スカラロボットのキモとなる点は、細かい動きや重いものをもってもしっかりと早い搬送ができることだ。長年にわたりスカラロボットをつくっている同社としても、今回のモデルは力を入れてつくったモデルだという。注目点は、基本的な部品の全てを見直して剛性の高いボディをつくり制御をしっかりしたこと。

 「TS5000」はIT機能を強化している。今までは通信ポートはメインのCPUで処理をしていたが、今回、専有のポートで独立して処理をしている。メリットはほとんど性能の低下がないこと。制御周期を従来機比3倍に高速化したことで周期制御追従性度が向上した。制御周期の1ミリセカンドのサーボのトルクや速度やIEOの状態まで全部データをとることができ、標準でフルタイムのフィードフォワードを搭載している。PTP制御で荒い動作や速度が速いときも遅いときもほとんど経路誤差がない。これも剛性の高い同社のスカラロボットTHEシリーズだからできたこと。自動化機構や生産ラインの効率向上、品質向上、投資回収の早期化に貢献するとしている。

システム全体を一元的に構築
システム全体を一元的に構築
 DMG森精機は工作機械とともに展示。搬送ロボットアームがワークを直接掴んで搬送する自動化システムをPR。計測装置などの周辺装置との連携が高いところも魅力だった。柔軟性の高いソリューションが得意な同社ならではの展示で来場者を魅了しており、セル生産や工程削減に興味を示す来場者が足を止めていた。注目したい点は、自動化システムを導入するには、工作機械メーカーだけでなく、周辺機器メーカーとの連携をユーザー自身が行う必要があったことだが、DMG森精機ではこれらの連携も含め、システム全体を一元的に構築する「シングルソースターンキープロバイダー」としての機能を果たしていること。簡単にいうと、ユーザーは同社に連絡するだけでOKという、まったく煩わしいことがないうえ、納品後の立ち上げもスムーズ。高度な自動化ソリューションを提供していた。

塗装面に光る蛍光灯の光をよく見てほしい。赤マル左はロボット研磨+手補修研磨面、右は従来の研磨で塗装面に映る蛍光灯にゆがみが!
塗装面に光る蛍光灯の光をよく見てほしい。赤マル左はロボット研磨+手補修研磨面、右は従来の研磨で塗装面に映る蛍光灯にゆがみが!
 トライエンジニアリングでは、非常に画期的な研磨ソリューションを展示していた。このソリューションは、半導体研磨で培った精密研磨材技術を提供しているフジミインコーポレーテッドと、トライエンジニアリング独自のロボット技術をベースにしたもの。研磨に必要な繊細な圧力制御機構を搭載したロボット研磨システムは、自動化やシステム化、そして圧力制御がものをいうが、これが非常に難しい開発であることは製造現場ドットコムの読者ならお分かりになるだろう。

 写真にあるのは車のボンネットを鏡面加工し、蛍光灯を当てたものだが、蛍光灯の光の歪み具合がまったく違うことがお分かりいただけるだろうか。同社のロボット制御で加工したものは、蛍光灯も歪みがない。従来の鏡面加工だと、ボンネットにうつる蛍光灯の光にユラユラとゆがみが生じている。従来はこうした鏡面加工は職人が手磨きをしており、この技術は超高級車しか使われていなかったが、この作業をロボット化することで、大衆車にも使える可能性がある。これに使うロボットは、今回、ファナックの緑色ロボットである“協同ロボット”が研磨作業を実行していた。最も注目すべき点は、協同ロボットは、“人にぶつかると止まる”機能が付いていることである。研磨作業はそもそも製品にドンとぶつかって研磨するので、それが人にぶつかったのか、製品にぶつかって研磨しているのか、見分けなければならない。そんな難しいことを、安全を確保しながら、研磨作業をロボットにさせる技術を確立していたのだから、非常に画期的だ。この技術は製造現場に新たな新風を巻き起こす予感がした。

同一システムでの多品種少量生産は製造現場のトレンド
同一システムでの多品種少量生産は製造現場のトレンド
 ミツトヨの小物部品自動搬送計測システムも画期的だった。乱雑なワーク位置を自動認識し、小物部品の自動測定がノンストップで行われるソリューションを展示していた。ロボットハンドにビジョンセンサを搭載し、ベルトコンベヤで流れてくる部品の種類や角度の判別を行い、ピッキングして測定機に自動搬送することができるというシステム。メリットは同一システムでの多品種生産により設備投資を削減でき、手作業による作業スピードのバラつきやポカミス発生という作業者の負担を抑えて安定運用を実現するといったもの。






体力に自信のない方でもこれがあれば幅広い作業環境に対応できる!
体力に自信のない方でもこれがあれば幅広い作業環境に対応できる!
 ジェイテクトは、「パワーアシストスーツ」を展示。近年、様々な年齢の方が作業現場で働いているが、重たいものを持つと、身体のあちこちに負担がかかり、ちょっと無理な姿勢でもしようものなら、肉体に負担がかかる可能性がある。腰痛、肩痛、膝痛を防ぐためにも、自然な姿勢動作を機器がサポートしてくれたらどんなに良いだろう。そんなありがたい製品が展示されていた。この「パワーアシストスーツ」は、幅広い作業環境にも対応し、雨天時でも使用できるからうれしい。重作業での肉体にかかる負担が楽になる。また、左右独立に作動するため、幅広い作業姿勢へ対応するのも魅力だ。装着も簡単で、ベストやベルトが洗えていつでも清潔を保つことができる。
moldino_banner

 

JIMTOF2024