年頭所感(日本機械工業連合会/日本産業機械工業会/日本工作機械工業会/日本工作機器工業会)
グローバル競争に打ち勝つ戦略を構築し、実践していくことが重要
●日本機械工業連合会 会長 伊藤源嗣
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。皆様におかれましては、お気持ちも新たに新年を迎えられたことと存じます。年頭にあたり、平素より日本機械工業連合会にお寄せ頂いております皆様の暖かいご指導とご支援に対し、心より御礼申し上げます。
昨年は3月に未曾有の大災害となった東日本大震災が発生し、被災地は勿論、我が国経済にも大変深刻な苦難をもたらしました。現在、被災地においては、関係各位の献身的なご努力により、復旧・復興に向けての歩みが着実なものとなってきておりますが、他方では今回の震災関連の被害が甚大であったため、未だに不自由な生活を余儀なくされている被災者の方々や、事業活動の再開に困難を抱える企業の方々も、多々居られます。そうした方々の一日も早い復旧、更には復興を、心より念願する次第であります。
さて、我が国経済は、東日本大震災で寸断されたサプライチェーンの復旧に伴う生産の回復や震災の復興需要などにより、昨年7-9月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比1.4%増、年率換算では5.6%増と1年振りにプラスとなりました。しかし、欧州の財政金融危機を契機とした世界経済の減速、歴史的な円高、エネルギー不安、タイの洪水など懸念材料も多く、景気の先行きが未だ不安視されております。政府におかれましては景気が再び悪化せぬよう、円高対策や第三次、第四次補正予算の早期執行など、確固たる対応を早急に講じて頂きたいと思います。
近年、我が国を巡る経済社会環境は、急速な少子・高齢化による人口減少が進む一方、新興諸国も加えたグローバル競争が激化するなど、非常に厳しい状況が続いております。これらの困難を乗り越え、今後の我が国の繁栄を確保するためには、政府、企業、国民が一丸となり、諸課題の解決に全力で取り組んで行く必要があります。政府には新成長戦略を早期に確実に実行するとともに、持続可能な社会保障制度の構築及び中長期的な財政健全化のために「社会保障と税の一体改革」を実現し、国民が安心できる社会システムを構築することが期待されています。
一方、企業には産業活動を活発化し、輸出の増大、国内産業の振興と雇用の確保を図ることが求められています。しかし、我が国の事業環境には、円高、突出した法人税、労働面や環境面の規制、経済連携の遅れなど、国内においてものづくりを続けていく上で大きな障害があります。これらが早急に改善されなければ、国内の生産や雇用、技術が丸ごと海外へ流出してしまう「好ましくない海外展開」が広がっていく心配があります。我が国企業が国の内外において対等な条件で海外企業と競争を行うことができるよう、国際水準の事業環境整備を早急に進めることが重要と考えます。
機械工業は我が国産業の中核として、未曾有の大震災からの復興を先頭に立ち推し進めるとともに、今後の活力ある経済社会実現の牽引役とならねばなりません。その実現のためには、我々企業はイノベーションによる新技術や新製品の開発、コストの削減、機械の安全性や省エネの徹底などにより、他国製品とは違う、国際競争力に秀でた製品を作り上げるとともに、世界各国を市場として、また、生産基地として、厳しいグローバル競争に打ち勝つ戦略を構築し、実践していくことが重要であります。優秀な人材の育成はその課題解決の鍵であり、国を挙げて取り組む必要がありましょう。機械工業はこれまで幾多の苦難を乗り越えて来ました。難局に直面した時にこそ、日本企業の底力が発揮できます。非常に厳しい道のりとなりますが、今回の困難も我々はかならず克服できると確信しております。
困難が続く中ですが、朗報もあります。我が国はTPP(環太平洋経済連携協定)への交渉に参加することとなりました。世界で最も成長が期待されるアジア太平洋地域の需要を取り込むことは、我が国の活力ある経済成長の確保に欠かすことが出来ず、今回の政府の決定は国益を重視した的確な対応であったと思います。これを契機に日中韓FTA(自由貿易協定)や東アジアでの広域貿易圏構想も動き始めており、自由貿易は我が国成長の源泉であるため、その早期実現が非常に重要と考えます。また、先月のCOP17(国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議)では京都議定書が延長され、2020年に新たな法的枠組みを発効させることで合意されました。地球規模の問題である温暖化への対処は、世界全体で当たるべきであり、その体制への道筋がようやく付いたと申せましょう。我が国は議定書延長には参加せず、自主的削減努力を行うこととなりましたが、温暖化防止に対する取り組みは技術革新を生み、経済の成長を促す面もあり、積極的に臨むことが産業界にとって重要と思います。
一方、法律面では改正労働者派遣法で検討されていた「製造業派遣の原則禁止」が見送りとなりました。雇用の流動性確保に繋がるものであり、労働規制の足枷の一つが取り除かれ、雇用確保の面で中小企業も含めた企業経営に好影響を及ぼすものと予想されます。
日本機械工業連合会では、我が国機械工業の競争力を維持、発展させていくための課題に鋭意取り組んでおります。本年も、若手理数系グローバル人材の育成・教育調査、ドイツ機械工業連盟と協力した模倣品対策調査、機械の安全対策や標準化、レアメタル等の代替材料技術の開発など、会員各位の企業経営にとって密接なテーマを取り上げ、調査研究を進めるとともに、税制面での改善方策など機械業界の事業環境改善に向けた要望や政策提言などを行って参ります。
皆様には大変厳しい事業環境が続く中、ご苦労が多いことと存じますが、日本機械工業連合会は、新たな時代に求められるニーズに対応し、皆様と産業界の利益のために誠心誠意努力を続けたいと存じます。皆様の一層のご活躍とご健康を心から祈念申し上げます。
震災からの復興と日本の再生に向けて
●日本産業機械工業会 会長 日納義郎
昨年3月11日に発生しました東日本大震災により被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。また、被災地の皆様のご健康と一日も早い復興を心からお祈り申し上げますとともに、復興活動にあたられている方々のご奮闘に敬意を表します。平成24年を迎えるにあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年のわが国経済は、年初より懸念材料を抱えつつも全体としては外需主導の景気回復の流れにあったと思われます。年明け以降に緩やかな増加基調を示していた生産や輸出も、大震災によるサプライチェーンの寸断や電力不足など大変厳しい供給制約に直面し、大幅に減少いたしました。
その後、大震災で深い痛手を負ったサプライチェーンが予想以上のスピードで復旧し、自動車産業を中心に生産が回復に転じるなど、わが国の7-9月期GDPは3四半期ぶりに増加いたしました。
しかしながら、夏場以降は新たな懸念材料として、欧州の財政問題を背景とした海外経済の減速や歴史的な円高の進行、タイの洪水被害の影響、今冬も続く電力不足への対応などが加わり、極めて厳しい状況に見舞われております。
私ども産業機械業界の昨年の受注は、大震災の影響により落ち込む中、製造業の底固い需要や電力供給不足への緊急対応、アジア新興国の需要等に支えられ、夏場にかけ総じて持ち直しつつありましたが、秋口以降、製造業の需要に陰りがみえ始め、さらに外需では中国向けなどで前年比マイナスに転じるなど、先行き不透明感が高まっております。
本年につきましても、欧州経済の混迷に伴う新興諸国を含めた世界経済への影響とそのリスクに対する警戒感が強まる中、円高や電力不足等の課題も抱えており、産業機械業界にとりましては厳しい受注環境が続くものと予想されます。こうした閉塞感を打破し世界の変化へ適応していくためには、国際競争力をより強化しアジアの成長を見据えたネットワークの構築に努め、ビジネスチャンスの一段とした拡大を目指し、果敢にチャレンジしていくことが必要であると考えます。
我々産業機械業界は、大震災後の供給制約を解消していく過程でも発揮された、日本の「ものづくり」の底力・現場力、品質へのこだわりやきめ細やかなサービスなど、世界に誇る独自性や強みを数多く保有しております。さらに、わが国は世界の成長センターであるアジアの一角を占めており、地理的な有利性にも恵まれております。
こうした強みを活かし関連産業と連携しながら、競争力の源である技術革新・技術結合等を強力に推進し、需要にマッチした供給体制を整え、グローバル展開と内需開拓の両面を戦略的に進めることにより、わが国成長力の強化に繋げ、大震災からの復興と日本の再生に貢献することが重要であります。さらに、より一層の省エネルギー性能に優れた製品を開発し、わが国のみならず世界に供給することで、経済成長と環境保全の両立に貢献するべく努力を継続してまいります。
政府におかれましては、歴史的な超円高の是正、TPPやASEAN+6など経済連携の戦略的推進、エネルギーの安定確保、大震災の影響を踏まえた新しい成長戦略の構築など、わが国の産業に前進していく力が備わるよう、強力に支援していただくことをお願いしたいと思います。
なお、皆様ご承知の通り、公益法人新法の施行に伴い、平成25年11月末までに、新たな法人への移行を完了しなければなりません。私ども産機工は、昨年9月の臨時総会において「一般社団法人」への移行を決議し、本年4月から新法人としてスタートすることとなりますが、社会から求められる使命と役割を積極的に果たしていきたいと考えております。
年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
「飛竜乗雲」のごとく大きく飛躍する年に
●日本工作機械工業会 会長 横山元彦
平成24年の新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年は、日工会創立60周年という大きな節目の年に当たり、関係者一同万感の思いで過ごした一年でありました。
また昨年は、内外で予想だにしなかった事態が相次ぎました。取り分け、3月11日に発生した東日本大震災によって、わが国社会は、人的・物的に著しい被害を受けました。被災された皆様方、特に津波に襲われた地域の方々、原発事故で今なお避難を余儀無くされている方々に、心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。
さて、昨年の工作機械業界を振り返りますと、毎月の受注額は、概ね1千億円を超すレベルを維持して順調な回復基調を辿り、直近11月までの受注額累計は、前年比37%増の1兆2,100億円となっております。
このうち、内需につきましては、一般機械や自動車を中心に緩やかに上向いているものの、歴史的円高に起因する国内需要産業の伸び悩みを背景に、その水準はピーク時の半分程度にとどまっております。他方、外需に関しては、好調なアジア市場に牽引されて、年間で過去最高額を更新する見込みとなっております。中でも、中国はわが国工作機械産業にとって、国内市場に次ぐ第二の市場として、一段と存在感を増しております。
このような中、本年の工作機械受注は、引き続きアジア市場を中心として、外需主導で底堅く推移するものと見込んでおりますが、欧米の財政危機などの懸念材料も多く、全体的に先行き不透明であります。この中で、受注環境の変化に機敏に対応しつつ、あらゆる受注機会を捉えるよう業界を挙げて頑張っていきたいと思います。
併せて、当工業会と致しましては、わが国工作機械産業が、技術やサービス等の質的側面においても世界をリードし、日本はもとより、あまねく世界の産業界に貢献することを第一義として、諸事業を展開していく所存であります。
このためには、まずは有為な人材が不可欠であることは言うまでもありません。当工業会では、次代を担う人材の確保・育成に向けて、産学の人材交流を積極的に推進するとともに、工作機械に関する社会的認知度の向上を図るべく、諸活動に注力して参ります。
わが国工作機械産業の持続的成長の実現に向けて、当工業会では、特に今後の拡大が期待される新興国市場について、製品の開発・供給から、アフターサービスに至る全ての面において、競合国との差別化を図り、総合的な戦略の構築に取り組みたいと存じます。
翻って、中長期的な観点では、今後、業界各社が採るべき方策の一助とするため、産学官の英知を結集して、わが国工作機械産業が克服すべき課題と目指すべき方向を明らかにし、本年5月を目途に、「工作機械産業ビジョン2020」として、とりまとめることとしております。
さらに、今年はJIMTOFの開催年に当たります。主催者として従来にも増して盛大かつ国際色豊かな展示会を目指し、その成功に向けて、会員各位とともに万全を期したいと考えます。
このほか、工作機械の標準化活動の強化、次世代技術開発の促進など、幅広い事業を展開するとともに、本年4月からの一般社団法人への円滑な移行に向けて鋭意準備を進めて参ります。
関係各位には、更なるご指導とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
本年は辰年です。わが国工作機械産業が「飛竜乗雲」のごとく大きく飛躍することを祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。
本格的なアジアメーカーとの競合時代に突入
日本工作機器工業会 会長 寺町彰博
あけましておめでとうございます。
年頭に際し、所見を述べさせていただきます。
昨年の世界経済は、前半においては、新興国の成長が世界経済を牽引する中、先進国でも経済は緩やかな回復基調となっていました。しかしながら3月11日に東日本大震災が発生し、日本経済は非常に大きな被害を受けました。特に製造業においては、直接的な被害に加えサプライチェーンの寸断により、多くの企業が操業停止や減産を余儀なくされました。
後半においては、新興国では経済成長が鈍化、米国では財政関連の混乱が発生、そして欧州各国ではギリシャに端を発する債務問題が深刻化するなど、世界経済には不安定な要素が増加いたしました。加えてタイでは大規模な洪水が発生し、製造業はまたもサプライチェーンの混乱に見舞われました。
日本の製造業を取り巻く環境といたしましては、リーマンショックを契機として、新興国が世界経済の牽引役、すなわち重要な消費国となっていました。そのような中、サプライチェーンの見直しの必要性や、東日本大震災を契機とした電力コストの上昇、加えて為替の円高は、日本の製造業の海外シフトを加速させています。さらに他の先進国においても同様のシフトが見られる中、新興国は生産国としてもその存在感を増しつつあり、日本の部品製造業にとっても、いよいよ本格的なアジアメーカーとの競合時代に突入したと言えます。
私たちは、今後このような厳しい競争環境下でビジネスを遂行していかねばなりません。しかしながら、震災後に日本の人々が見せた復旧・復興に向けた強い信念と団結力をもってすれば、日本の部品製造業は引き続き世界の製造業の発展を牽引していくことができると信じて疑っておりません。従いまして、当工業会といたしましても、会員の皆様とともに強い信念を共有し、新たな顧客にとって価値ある製品を開発し日本の製造業の発展に寄与できますよう、積極的な活動を展開してまいる所存です。
なお、当社団法人日本工作機器工業会は、本年4月より一般社団法人として新たなスタートを切る予定です。事業環境が激しく変化する中、既成概念にとらわれず、公益法人としての目的を達成すべく活動を進めてまいる所存ですので、今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
最後になりましたが、会員企業様の益々のご発展と皆様のご健勝とご多幸を心より祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。