不二越 工具事業部 「もっと加工に革命(Revolution)を!」 ~最新工具の強みとは~

 多彩な事業と技術で世界のものづくりに貢献している不二越の強みといえば、なんといっても“総合機械メーカー”だということだろう。1928年の創立より培われた生産ノウハウを有する強みのもと、世界中の製造現場に独自性の高い商品やシステムを提供し、生産ラインの高能率化に貢献している。

 「もっと加工に革命を!」のスローガンを掲げている同社工具事業部。切削加工条件の多様化から、超硬工具の需要が拡大する中で、2015年には超硬材料開発プロジェクトを立ち上げ、2018年に超硬素材を内製化した。材料開発、製造設計技術開発に注力し、現在、1本の工具でなんでも加工できる汎用工具、用途に合わせてダントツの性能を誇る専用工具を有する『アクアREVO』ブランド工具を次々と進化させてラインナップを拡充しており、その勢いは止まらない。工具の生産拠点である富山事業所(富山市不二越本町)にある工具事業部を訪ね、お話を伺うとともに、新商品群のデモ加工や優位性を取材した。

切削工具は材料や部品の変化がキモ

工具事業部 関口技術部 部長
工具事業部 関口技術部 部長
 ここ20年の間に製造業を取り巻く環境は大きく変化した。材料の難削化は進み、複雑形状のものが増えた。現在、切削工具を取り巻く環境といえば、裾野の広い自動車産業はEV化が加速し、航空機は米国・欧州ともに堅調な動きを示している。不二越の切削工具はこうした時流に対応すべく、どんどん進化を遂げていく。

 不二越の超硬ドリルは、1999年に初代『アクアドリル』、2008年に二代目『アクアドリルEX』、そして2018年に10年ぶりに三代目『アクアREVOドリル』が発売しました。材料・形状・コーティングを全て一新した、アクアREVOドリルの第二弾として昨年8月に登場した『アクアREVOドリルオイルホール』は、画期的なオイルホール形状により切屑排出性が向上したとして展示会でも注目を浴びた。一方、超硬エンドミルでは、2002年『GSミル』、2008年『GSXミル』に続き、昨年12月に市場投入した『アクアREVOミル』も評判は上々だ。このように超硬ドリル、超硬エンドミルともに着々とモデルチェンジを図りつつ、現在、「もっと加工に革命(Revolution)を!」をスローガンに工具事業部では、『アクアREVO』ブランドに注力し、製造現場にさらなる高精度と高能率をもたらす工具を開発している。

千場 技術部 副部長
千場 技術部 副部長
 関口 徹 工具事業部技術部 部長は、「現在、中国をはじめ世界的にEV化が加速しており、これに伴い電動化や軽量化の流れを受け、材料の変化や部品の需要変化を見据えた商品開発をしていかなければならない。そのため、従来の設計を見直し、工具の性能を一気に上げました。」と話す。従来の商品名である“アクア”に“REVO”が付いたのは、まさに革命(REVOlution)のごとく設計を見直し、飛躍的に性能を向上した工具で、加工現場にさらなる革命を起こす――という願いが込められていたのだ。ちなみに“アクア”は、“穴が開くあ”というシャレた意味も込められているという、思い入れのあるネーミングだということも加えておこう。

 同社では、アクアREVOシリーズの他にも現在タップにも注力している。中でも最も注力をしているのは、『Hyper Z(ハイパーゼット)タップシリーズ』。干場俊洋 同 副部長は、「被削材、加工機械を問わず、安定した加工で長寿命を実現する工具です。社内でもホブやブローチ、転造工具などを扱うメンバーとコミュニケーションをとって、新しい発想のもと、別技術を活用しながら新しい商品づくりをしています。」とのことで、不二越ならではの特長を生かしたタップの拡充を図るとしている。

岩本 ラウンドツール技術開発室 室長
岩本 ラウンドツール技術開発室 室長
 岩本謙治 同 ラウンドツール技術開発室 室長は、今後の商品開発について、「常に将来性を念頭に置いて開発をしています。お客様の加工における課題解決に向け、様々なシーンに提供できるような工具をつくるには、技術を一つ一つ積み上げていかなければなりません。マテリアル部門や製造部門、営業部門ともに連携を取り、お互いに共通認識を図りながら、商品開発に注力しています。」と意気込みを見せた。

 加工現場からの要望に挙げられる代表例といえば、①消耗品である切削工具の寿命を延ばしたい、②より早く加工したい(高能率化)、③様々なワークを同じ機械で加工するので、より幅広い材質でも使用ができる工具が欲しい、④精度向上――といったところだろう。圧倒的な工具性能を提供するために同社工具事業部が渾身の力を込めて開発した最新工具による加工実演を見学した。

最新工具によるデモ加工をレポート

アクアREVOドリルシリーズ
アクアREVOドリルシリーズ
 まず拝見したのは『アクアREVOドリル』だ。硬さと靭性を高く保ったまま耐摩耗性と耐チッピング性を重視した超硬母材を新開発した商品である。コーティング技術にも注目したい。耐酸化性(AlCr系)と耐摩耗性(AlTi系)に優れたナノ積層膜と超平滑化処理により、摩擦係数を低減し、亀裂進展を抑制した新開発“REVO-Dコート”のなせる技。この効果が工具を今までにないほどツルツルにしたのには驚いた。なお、この表面のツルツルさは、“タッチREVO”といって、今後も出展する展示会で直接触れることができるようなので、機会があったらぜひ触れて欲しい。

 切削工具の重要要素といえば、材料、コーティング、そして形状だが、このアクアREVOドリルは、“直線刃形”を採用。切削時の応力を分散し、あらゆる加工条件で切りくず形状が安定している。

なぜ直線刃形なのか――というと、「直線刃形を採用することで、フック刃形では集中しやすいコーナーの応力を分散している。」とのことだった。

 さぁ、実際の加工を見てみよう!

「アクアREVOシリーズ」、「Hyper Zロースパイラルタップ」のここに注目!

アクアREVOドリルを使用した切りくず。クルンと丸まったコンパクトな形状だ。
アクアREVOドリルを使用した切りくず。クルンと丸まったコンパクトな形状だ。
 加工現場のニーズのひとつ、高能率加工。ここで注目したいのは、“送り限界”。つまり、切削してドリルをどれだけ速く入れるか――。使用する工具はアクアREVOドリル レギュラのφ6.0㎜。比較対象は他社品の汎用ドリル。被削材はS50Cを使用。切削速度は100m/min、送り量が0.19㎜/revからどんどん送りのスピードをあげていく加工を行った。

 写真でもお分かりのとおり、アクアREVOドリルを使用した切りくずは、クルンとこぢんまりとしたカール状のものだった。

他社品。切くずに髭のようなものが! 色も黒く一部焦げているものも!
他社品。切くずに髭のようなものが! 色も黒く一部焦げているものも!
 一方の他社品を使用した切りくずは、ビョーンとヒゲのようなものが伸びている。切りくずの分断性が悪いと、精度や面品位が損なわれるうえ、折損の原因になるなど、良いことがない。また、今回、どんどん送りのスピードを上げていくテストを行ったが、他社品は切りくずの色が黒く変化したもののアクアREVOドリルのほうは色の変化がなかった。回転数や送りをあげても高性能で安定している。アクアREVOドリルの切りくずがコンパクトなのは、超平面化処理と直線刃形により、切りくずの排出性と分断性に寄与したことが理解できる。穴あけ加工に求められる全ての機能が飛躍的に向上したことを見せつけてくれた。

勢いよくクーラントが注がれる!
勢いよくクーラントが注がれる!
 次に拝見したのは、『アクアREVOドリルオイルホール』。独自開発したオイルホール形状“REVO Power Cooler”は、流体解析の活用により、冷却性、潤滑性、切りくず排出性が向上し、吐出量は従来比で2倍を誇る。

 その2倍がどんなものなのかを実際に知るため、従来品とクーラント吐出量の比較を行った。使用工具はアクアREVOドリルオイルホール5D φ8.0、回転数は4800min⁻¹、内部給油圧力は1.5MPa。REVO Power Coolerは、ペットボトル1本分のクーラントを吐出するのに何秒かかるか、そして従来のオイルホール形状で同じ秒数ではどれだけ吐出できるのか―――。

 ペットボトルにクーラントが勢いよく注がれた。そして出た結果が写真の通り、REVO Power Coolerはペットボトルが満タンになるまで11秒で1.0ℓ。一方、従来品は0.5ℓだった。

結果はこれだ!
結果はこれだ!
 切削油剤は、加工中に発生する摩擦熱や被削材を冷却し、潤滑性を高めて摩擦を減少させるうえ、切りくずの排出性を高める効果がある。これらの効果を高めるためには、単純に工具のオイルホールから切削油が出れば済む、といった単純なものではない。オイルホールは加工精度と工具寿命を左右する重要な役目があるのだ。

 アクアREVOドリルオイルホールの注目点は、圧倒的な流量を確保しているとともに、切れ刃に近い位置から吐出させて切削点に供給できること。流体解析で最適なオイルホール形状を導き出した結果、熱を持ちやすいコーナーとシンニングすくい面をクーラントで狙い撃ちしている。これにより、刃先の冷却性、潤滑性、切りくず排出性も向上したのだ。

インパクト大!
インパクト大!
 工具試験エリアには、“青の衝撃”と書かれたインパクト大のポスターが貼られていた。続いては嫌なビビリ振動を抑制するという青いエンドミル『アクアREVOミル』の加工を拝見。基準ねじれ角30°の不等分割・不等リードを採用しており、新開発の超硬素材とエンドミル専用の“REVO-Mコート”を施したことにより、耐摩耗性や耐熱性だけでなく、熱衝撃にも強く、ウェット加工でも優れた性能を発揮するという。高硬度材からステンレス鋼まで幅広い被削材に対応するのだから、「エンドミル加工に求められる機能が飛躍的に向上した。」と工具事業部も自信の一品だ。

青い衝撃! アクアREVOミルシリーズ
青い衝撃! アクアREVOミルシリーズ
 この加工テストは、ビビリやすいSUS304で行った。まずは他社品工具を使用。高送り条件は、切削速度80m/min、送り量0.15mm/t。

 ゴゴゴゴ音と甲高いキィィイイイイイ音がする。機械の前に立っていると加工振動が足にも伝わってくる。おそらく加工現場で働いている方が、このような音を聞いたら不安になるだろう。

 次にアクアREVOミルで加工。足に感じた振動もなく、音も静かだ。出来上がった面品位の比較は写真の通り、一目瞭然だ。

面品位は一目瞭然! 右がアクアREVOミルで加工したもの。
面品位は一目瞭然! 右がアクアREVOミルで加工したもの。
 美しい面品位に貢献しているのは設計のほか、新開発の “REVO-Mコート”この特長は、①耐摩耗性(3300HV)と高い耐熱性(1100℃)で高速・高送り加工が可能、②耐熱衝撃に強いAlCrXN膜の採用で過酷なヒートサイクルにさらされる水溶性加工にも最適、③膜表面の超平滑化処理にて被削材の耐凝着性を改善し、切りくずの噛みこみによる損傷を抑制している――こと。ドライ加工、水溶性加工の両方に最適な新コーティングなのだ。

 続いて、『Hyper Zロースパイラルタップ』の加工を拝見。ここでは切りくず形態を他社品と比較した。炭素鋼(26HRC)、ねじ深さは12㎜、水溶性切削油(Wet)、横形M/C(BT40)。切削速度は5m/min、回転速度265min⁻¹、送り速度265㎜/min。

 他社品はモジャモジャした切りくずが発生! 重力による切りくずの重みの影響も心配だ。

切りくず比較。写真左がHyper Zロースパイラルタップ。
切りくず比較。写真左がHyper Zロースパイラルタップ。
 一方の『Hyper Zロースパイラルタップ』は、分断型の切りくず形状により、切りくず詰まりや絡みつきを抑制しているというメリットがある。トラブルが発生しやすい横形M/Cでも抜群の切りくず排出性により、加工機械を問わず、安定加工を実現してくれるのだ。なお、このHyper Zシリーズには嬉しいことにチタン合金用も誕生している。

先端設備で工具を生産! そして工具を魅せるアイディアも豊富!

FA展示場では自動化生産ラインの事例を多数展示。
FA展示場では自動化生産ラインの事例を多数展示。
 これらの工具を生産するラインだが、同社独自のロボットシステムによる自動化ラインを導入し、品質の安定化、大幅な生産性向上を実現している。同社のロボットFA展示場でも自動化生産ラインの事例を多数展示しており、最先端の生産ラインについて見学することができた。

 そして―――。

 不二越独自のノウハウがびっしり詰まった工具が市場に披露される時、忘れてはならないのが、ここで活躍する同 工具企画部 営業企画室の存在だ。

営業企画室の柿島さんはNACHIファンを増やすための努力を惜しまない!
営業企画室の柿島さんはNACHIファンを増やすための努力を惜しまない!
 “NACHIファン”を増やすために、日頃から知恵を絞っている柿島夏紀さん。柿島さんは、展示会でアクアREVOシリーズのツルツル感を来場者に知って欲しいとの思いから、“タッチREVO”を企画した。

 「このツルツル感を知ってもらいたいのですが、工具そのものを触るとケガのおそれがありますので、棒状のままにして、安全で安心して触れるサンプルを企画しました。」と柿島さん。

 また、以前開催された展示会ではなにを訴えたいか、一目で訴求できる筆文字を利用したブース展開が話題を呼んだが、この筆文字も柿島さんが描いたものだ。こうしたブース内の装飾を社内で展開しているとは思わなかったので驚いた。自動化、IoTなど製造業界の最新トレンドの中にあって、人が描く筆文字の力強さから工具の“剛性”をイメージさせるという手法に思わず唸ってしまう。さすがだ!

 最先端をゆく一方で、社内の人間がひとつひとつ丁寧に製品づくりと向き合っている印象を受ける不二越。今後も「ものづくりの世界に革命を起こす。」として、アクアREVOシリーズの拡充をしていく方針。

PRに使用されている筆文字は柿島さんが描いている。