トレンドはロボットを活用した自動化! ~ キタガワグローバルハンドカンパニー 自動化システムチームの力強さとは ~
北川鉄工所(会長兼社長=北川祐治氏、本社:広島県府中市)は、2018年に創業100周年を迎えたことを機に、事業のさらなる成長と専門組織として対応力の強化を狙い、各事業分野のカンパニー制を導入した。これにより一層グローバルな事業基盤確立し、積極的に新たな展開を見せている。その中でも、目覚ましい飛躍を遂げているのが、キタガワグローバルハンドカンパニーだ。
現在、製造業における自動化の進展に伴い、産業用ロボットの需要が伸びている。ここで必需品となるのが〝産業用ロボットハンド〟だが、チャックで培った〝モノを掴む技術〟を存分に活かして工作機器分野にイノベーションをもたらした商品製品の数々を市場投入しているのは、発足して丸1年が経過した同社の〝自動化システムチーム〟である。製造現場の自動化や省人化を推進し、現場の効率化に貢献する専門部隊だ。妥協のない品質と性能でkitagawaブランドを牽引している。
自動化にさらなる安心をもたらしてくれるNPGTシリーズにチャックの技術アリ!
現在、製造現場ではIoTやAIの活用によりデジタル化が一層進み、品質とともに生産効率の向上が重要視されている。そこで鍵を握るのがロボットを活用した自動化である。 経済産業省によると、世界の産業用ロボットの販売台数は、2013年から2017年の5年間で2倍に増加した。国際ロボット連盟も2020年から2022年までの年間平均成長率は12%と予想している。注目したいのは、世界におけるロボットの6割弱が日本のメーカー製だということ。日本は世界一のロボット生産国なのだ。
昨年秋に開催された「メカトロテックジャパン2019」では、同社の薄型2爪平行ハンドの〝NPGTシリーズ〟が、把持だけでなく、ワーク把持部の寸法測定ができるものに進化を遂げた”NPGT_Sシリーズ”を発表し、自動化による高能率を求めている来場者の注目を集めた。
チームリーダーの中本幸之介さんは、この時の様子を、「かなり反響があり、使ってみたいというお客様も多かった。皆様、非常に興味を持たれており、自動化が加速している印象を受けた。」と振り返る。
ワークを持った瞬間、100分の1以下の精度で測れることを示した商品のデモンストレーションには、多くの人だかりができており、工程短縮に貢献するものとして、業界内でも話題となったほどだ。中本さんは、「ラインで流れている製品に関しては抜き取り検査があり、従来は数十個に1個ほど、人が付いて検査をしますが、kitagawaのスケールを内蔵した〝NPGT_Sシリーズ〟を搬送に活用すれば、検査する人や装置を置く場所も不要になり、検査装置そのものの費用が削減できます。省人化にも一役買うので、経済効果も高い。」と自信を見せる。「ロボットハンドに物を測るスケールを埋め込むことによって、爪の位置そのものを見るので非常に精度が良いのが特長です。スケールを内蔵している点については、特許も取得しています。」とのことで、グリッパの経年摩耗検知による予備保全もできるという。こうした細かい商品への気配りが、生産ラインにおける不良品を削減し、ひいては信頼と安心をもたらせてくれるのだろう。
風通しのよい社風がフットワークを軽くする
さて、こうした画期的な商品を生み出している自動化システムチームだが、現在、技術2名、営業4名で成り立っている。こぢんまりとした印象を受けるが、その分フットワークが軽い。社員のフットワークの良さの土台となっているのは、kitagawaならではの社風もあるようだ。東洋経済で2018年に発表した「年間の離職者が少ない大企業」トップ100社の中で北川鉄工所は、全国ランキング1位を獲得。ベテランも多く、様々な課題に直面しても部署の垣根を越えて知恵を拝借できるという、社内の風通しが非常に良いのだ。
製造現場の自動化に貢献するための画期的な商品を作るにあたり、係長の池内裕幸さんは、「ロボットハンドについては後発だったので、他社と同じものを作っていたのでは不毛な価格競争に巻き込まれてしまう。kitagawaの付加価値を付けて販売していくためにも、本社のすぐ横にある工場で現場を見ながらやりとりをしています。工場で蓄積された技術力とノウハウが〝NPGTシリーズ〟に詰まっています。」と笑顔を見せた。
自動化に対しての優位性については、「ベテランであれば同じ内容の仕事をこなせますが、新人に代わってしまうと、人に教えるための時間もポカミスも発生する。ロボットは同じ業務を長時間行えるうえ、バラツキもないので安定品質が実現します。正確なものづくりは企業の信頼性を高めてくれる。」と強調した。
メカニカルエンジニア主任の西浦陽司さんは、kitagawaハンドの強みについて、「剛性面と精度には自信があります。これがなぜ言えるかというと、弊社がチャックメーカーという点にあります。チャックの技術を取り入れて作ったロボットハンドは、ハンドが物を運ぶだけではなく、置いて使う治具的な役目も果たせる点に強みがあるのです。位置決め精度も非常に良いものです。」と優位性を示した。チャックの技術も100年企業のkitagawaの強み。例えば、3爪チャックで丸いものを掴んで離してを何度も繰り返していくと芯がズレてくるものだが、同社のチャックは初期の把握精度を維持できる。精度がここまで維持できるのは世界的に見ても珍しいのだ。また、5,000回転以上のもの凄いスピードで回るスピンドルに対し、その把持力を維持する技術もkitagawaならでは。耐久性も高く、工作機械メーカーからも多くの支持を集めている。
同社のチャックで培われた技術を惜しみなく投入したロボットハンドの〝NPGTシリーズ〟は、現在、好調な自動化の波を受け、通常の2爪のほか、3爪、、開発を進めて徐々に拡張していく予定とのこと。
kitagawaブランドを強化!
『promano(プロマノ)』のブランド名で親しまれていた同社のロボットハンドは、現在、『kitagawa hand(キタガワハンド)』の名で新たな一歩を踏み出した。この背景にあるのは、同社のブランド力強化だ。kitagawaをイメージさせる澄んだ青色はそのままに、さらなる浸透を目指すとのこと。メカニカルエンジニアの大久保孝昭さんは、設計の楽しさについて、「お客様の要望が10あったとしたら、それをひとつひとつクリアしていかなくてはならないプレッシャーもありますが、やりがいもあります。お客さまの意見を取り入れながら、広い分野に売り込んでいきたい。」とのこと。
『kitagawa hand』のさらなる浸透を目指して、営業にも工夫を凝らしている。昨年から商品をユニットにして顧客に持参できるようになったのだ。以前は、単体でしか持参できなかったが、今では、アタッシュケースに商品をセットアップし、ロボットの近くで実際にレイアウトも考えられるようになったので、より検討しやすくなった。顧客は商品に直接触れながら、レイアウトができるので、導入時のイメージがつきやすい。現在、自動化の波は避けられない。従来は、自動車産業がロボットの最大の納入先だったが、近年は電気・エレクトロニクス産業でも伸びを示している。kitagawaの自動化システムチームは生まれてまだ1年目だが、この期待値は大きく、「世界のものづくりを掴みに行く!」という心意気がある。
同社では、チャックで培った〝ものを掴む技術〟を活かし、新たにFA領域にも踏み出した。今後はこのロボットハンドなどのFA関連機器を、kitagawaの工作機器分野における重点商品と位置づけて事業展開をしていく方針だ。