金型加工特集 「工作機械編」


 われわれの生活を豊かにする生活用品の数々――――。
高付加価値商品の自動車やデジタル家電などを生み出すための基礎には品質の高い金型製作が必要不可欠である。金型の善し悪しが商品の品質を左右するのだから金型メーカーが大きな使命を背負っていっても過言ではない。ところが、現在、労働時間の制限や作業者の不足といった悩ましい現実に直面しつつ、仕事量が増えても短納期やコストダウンの要求が厳しい現状がある。これらの課題を解決しつつ、経済効果を上げるための〝金〟を生む〝型〟の製作において利益向上の鍵を握るのは、ものをつくるモト―――すなわち、「工作機械」、「切削工具・周辺機器」などの設備である。今回は、金型加工をテーマに、前編を「工作機械」、後編を「切削工具・周辺機器」として、注目各社の最新動向を掲載する。

 (アマダ、OKK、岡本工作機械製作所、キタムラ機械、黒田精工、芝浦機械、ナガセインテグレックス、牧野フライス製作所、三井精機、安田工業、ヤマザキマザック、碌々産業)

1台で加工と測定が可能! 「GLSシリーズ」モバイル・ストッカーロボット仕様
●アマダマシナリー

「GLSシリーズ」モバイル・ストッカーロボット仕様
「GLSシリーズ」モバイル・ストッカーロボット仕様
 アマダマシナリーのオプティカルプロファイル研削盤「GLSシリーズ」モバイル・ストッカーロボット仕様を紹介する。「金型・工具・精密部品」加工を主とする光学式のプロファイル研削盤「GLSシリーズ」は、高精度の投影機を備え、1台で加工と測定が可能。既存機能を改良し、加工品質、段取り性、生産性のさらなる向上が提案可能な「GLS-150GL UP」へ進化。近年顕著になってきた少子化による作業者不足、労働時間の制限といった現場の課題に対応し、自動化機能を新たに提案する。

 本機の特長として、従来の汎用性を維持しつつ自動化を可能にする「モバイル・ストッカーロボット」を搭載。多関節の協働ロボットによるといし・ワークの自動交換(ATC/AWC機能)が可能となり、専用のスケジュールソフトウエアにより連続自動運転が可能。就労時間外に荒加工を自動で行うことにより、オペレーターは高精密な仕上げ加工に集中して従事できる。

工具先端の振動を減少! 「VB53α」で加工面品位もアップ!
●OKK

VB53α
VB53α
 アジア新興国を中心として人気のVB53をさらに進化させた「VB53α」は、金型加工で繰り返される加減速により発生する工具先端の振動を従来機より約20%改善し、加工時間も10%ほど短縮したマシンだ。さらに環境熱変位補正「ソフトスケールCube」を標準搭載し、環境温度の変化に対しても安定した加工精度を維持できる。注目すべき点はなんといってもY軸の加減速に対する振動抑制。振動を抑制するためにベッドおよびコラムのリブ形状や鋳物の厚みを見直したつくりとなっている。この結果、「VB53α」のY軸方向の振動は約50%減少を実現し、これに連動してZ軸の振動も改善されている。

 これらの技術が工具先端の振動を抑制し、加工面品位もさらに向上した。また、テーブル前後にコイルコンベヤ2基を標準装備し、Y軸シャッターの山折角度を大幅に改善、切屑排除の作業性もアップ。さらに、加工中に発生する切屑やクーラントの熱が直接ベッドに伝わらないよう防御用プロテクターを標準装備している。

大型金型の測定と研削の両立
●岡本工作機械製作所

UPG208CHLi
UPG208CHLi
 岡本工作機械製作所は、近年大型化する金型ワークの需要に対して測定を含めた研削盤の提案を行っている。通常、チャックサイズ2,000×800mmの研削盤で加工されるような大型ワークは通常は3次元測定器に搭載が難しい。そこで、機上測定装置を搭載した研削盤に専用計測ソフトウェア「OKAMOTO NCゲージ」を搭載、オペレータが直感的に機上測定を行う提案をする。


大型ワークの例
大型ワークの例
 従来の機上測定では測定のマクロプログラムをワークが変わる毎に修正を行う必要があるが、本ソフトウェアは予め組まれたプログラムと直感的なティーチングとの連携で容易に機上測定を実現する。測定項目は点/平面/円の外径/内径/溝幅等、多彩なラインナップを標準装備している。ますます高まる生産性の向上や工程削減に大きく貢献をする新オプションだ。OKAMOTO NCゲージ導入のメリットは、①3次元測定できない大型ワークの測定を実現、②測定マクロプログラム作成不要、③平面/溝幅/穴径等の測定マクロプログラムも作成、④直感的にティーチングと測定可能。

何もかもが画期的! 僅かな投資で最新IoTテクノロジーが実現!
●キタムラ機械

Mytrunnion-4G
Mytrunnion-4G
 同社の機械に搭載している独自のコンピューター数値制御装置「Arumatik-Mi」のオプション機能「Auto-Part-Producer」は、人工知能(AI)でMCの自動運転を実現した画期的技術。通常のMCと異なり、CADデータをCNCに読み込ませるだけで、AIが自動で加工順序、工具指定、切削条件を決定し、干渉回避をしたうえで機械加工が可能になる。CAMプログラマーの負担を軽減させ、CAM操作の後継者育成にも役立つ点は魅力だ。「Arumatik-Mi」は、累計4000台以上の実績があり、IoTという言葉が一般的ではなかった2008年には販売を開始し、インターネット接続やスマートフォン感覚の簡単なタッチ操作で先進機能を先取りした。操作盤にCCDカメラやマイク、スピーカーを内蔵(特許取得済)し、CCDカメラには2次元コード読取装置も内蔵し、5Gに対応したQRコードの中の加工プログラムや大容量の設定データを瞬時に正確に認識して、作業者の手間を省き自動運転を可能にしている。

Mycenter-HX250iG
Mycenter-HX250iG
 また、ネットを介したビデオ通話で加工現場の状況把握やオペレーターの補助ができる「Anywhere-Remote機能」を2015年より標準装備しており、最新稼働状況をEメールで送信する「アクション・Eメール機能」、テレビモニター、スマートフォンに稼働状況を常時表示して遠隔でも確認できる「ファクトリー・テレビダッシュボード機能」(特許取得済)も備えている。わずかな投資で最新IoTテクノロジーを導入でき、テレワークに最適な機能を小規模製造業の方にも提供できるのは嬉しい。最近のインターネット、スマートフォンの普及により、より簡単操作の工作機械が求められているが、「Auto-Part-Producer」の機能を使用すれば初心者でも加工ができるため、同社では、「若者がモノづくりに関心を持ち、将来のモノづくりを担ってもらう後継者の育成の一助になればと思っている。」とコメントしている。

省スペース・省エネ・拡張性が優位性「GS-45V」
●黒田精工

「GS-45V」スマートタッチタイプ
「GS-45V」スマートタッチタイプ
 黒田精工の新製品である精密成形平面研削盤「GS-45V」(チャックサイズ450×150㎜)の特長は「省スペース・省エネ・拡張性」。環境対応性能と多様化する加工ニーズへの対応を両立する商品となる。左右送りにボールねじ・サーボモーター送り機構を採用することにより、同社従来機比で所要床面積を40%減、本体消費電力を約1/3に、油圧作動油の使用はゼロを達成した。同時に油圧に関わるメンテナンス不要、発生する熱量減により精度の安定性アップと周辺への熱影響も減る点は魅力的だ。

 従来機から高評価を博している操作性もさらに進化、手動研削から全自動加工までの作業が容易にできる。さまざまな形状加工が簡単操作でできる新開発の「GS-SmartTouchTM」が搭載可能となっている。これは平面加工だけでなく溝、L字、段などの加工ソフト、R、テーパー、幅決めなどの自動成形ドレスソフトが搭載されており、複雑で高精度化するワーク加工に対応する。

ダイカスト金型用ポケット加工の効率化に貢献「BM-1250Q」
●芝浦機械

 本年4月、東芝機械から芝浦機械に社名を変更した同社の強みは、金型加工から成形まで総合機械メーカーのノウハウを持っていること。今回は、ダイカスト金型の短納期生産要求に応えた「BM-1250Q」に注目したい。この製品は、横中ぐり盤の強さと横形マシニングセンタの速さを兼ね備えた強靱なマシニングセンタ。形状仕上げ加工の前工程で大幅な効率アップに貢献する。早送り速度40m/min、切削送り速度25,000mm/minで大物ワークの高能率加工を実現。生産性も向上し、経済効果も期待できる。


写真左:なだらか機能OFF 右:なだらか機能ON
写真左:なだらか機能OFF 右:なだらか機能ON
 同社は、自社開発のNC装置を持っているのも優位性のひとつ。形状認識予見制御の「CNC SHAPEⅡ」は、CAMの加工データの乱れを先読みし、バラツキや指令点を平滑化し、仕上げ面質をよりなめらかにしてくれるスムージング機能、なだらか機能を有する。また、ボールエンドミルで自由曲面を削るときも、変化する接触点に合わせ切削速度が一定になるよう主軸回転速度を制御し、それに併せて毎回転当たりの送りを制御する「SF機能(特許取得)」など、金型加工の効率化、高精度化を力強くサポートしてくれる。

新たなる大型金型加工のスタンダード「SGD」シリーズ
●ナガセインテグレックス

SGD-3010
SGD-3010
 超精密かつ高剛性でありながらコンパクトな設置スペースと適正な価格を実現する門型平面研削盤「SGDシリーズ」。奥行き800mm・1000mmの広範囲な研削加工が可能。モータコア金型など奥行きのある大型金型加工に最適だ。独自の多面拘束非接触油静圧案内と新規開発の高出力リニアモータ駆動の組合せにより大面積の圧倒的な平面精度を実現している。トポロジー最適化設計手法により、機械本体は、荷重及び加工反力が適切に主要ポイントに集中的に伝わる理想的な門型・ベッド形状とし、軽量化と高剛性化の両立を実現、さらに移動質量の軽量化により、高い真直性能を持った送り動作が可能となっている。

加工画像
加工画像
 省スペースにも徹底的にこだわり、従来の同等サイズのコラム型研削盤と比較し、設置面積を5割削減、機械高さを3割削減した。コンパクト化により本体を分解せずに輸送することが可能である。1μm/1m以下の真直度の加工が可能で、機上計測装置と組み合わせればサブミクロンオーダで自在に形状が創成できる。薄板の打抜き金型や高機能板鍛造金型の製作・修正加工に威力を発揮。金型の高寿命化を実現。さらに、クラウニング(OP)や機上測定(OP)、マルチパーツ研削(OP)に対応。チャック上で専用治具なしで歪み取りを行う画期的なシステム「スマートアンジュレーションアップ」(OP)の搭載など多彩な機能にも対応している。

金型加工の高速5軸加工に「D200Z」
●牧野フライス製作所

D200Z
D200Z
 金型業界に広く親しまれている同社の5軸制御立形マシニングセンタ「D200Z」は、複雑な3次元形状の工作物をなめらかな加工面に仕上げるための高度な技術が盛り込まれている。注目すべきは、低振動な30000回転主軸、高い応答性の送り機構により、迅速かつ正確な同時5軸加工が実現する点だ。これは素早い動きでも追随できる同社独自の〝スーパーGI.5制御〟との相乗効果がなせる技。これにより磨き作業を最小限に抑えつつ、極めて高い面品位を実現してくれる。高速回転時の熱膨張や振動を抑制する軸心・ジャケット冷却システムの採用で、工具の寿命も延長してくれる。

 コンパクトなサイズでありながら、工具収納本数は標準仕様で21本。特別付属品の40本をチョイスしてもスペースは変わらない。大容量工具マガジンやワークチェンジャ、ロボットシステムなど、時代に対応したフレキシブルな自動化機能により、稼働率もアップ! 期待に応えた投資効果を発揮するマシンだ。なお、同社ではオンラインセミナーを実施しており、好評を博している。

信頼性の高い「Vertex55X Ⅲ」は自動化への対応も充実
●三井精機工業

Vertex55X Ⅲ
Vertex55X Ⅲ
 三井精機工業の5軸立形マシニングセンタ「Vertex55X Ⅲ」は、高性能になった主軸熱変位補正機能を搭載し、Z軸方向変位量を従来比1/3に改善した。また、ベッド・コラム剛性も向上し、微小線分送りによる3次元形状加工時の面品位が向上している。

今回、ヒューマンインターフェースHMI機能を搭載した15″カラーLCD付操作盤をオプションで用意している。5軸加工機において角度の割り出し精度が重要になるが、自社内で割出テーブルと主軸の組付け調整を行っており、非常に高い割出精度を持っている。つまり、信頼性がとても高いマシンなのだ。温度センサーを追加したことにより、スピンドルの伸びとヘッドケーシングの変位を捉えて温度変化を検知・補正を行う。これによって高速回転域でのZ軸方向変位が安定するまで時間を短縮! 熱変位量は、従来比1/3に抑えている。ニーズの多いAPCや自動割出クーラント吐出ノズルなど自動化への対応も充実しており、今の時代に合致したマシンだ。

数マイクロメートルの加工精度を実現「YBM 1218V Ver.Ⅱ」
●安田工業

YBM 1218V Ver.Ⅱ
YBM 1218V Ver.Ⅱ
 EVやハイブリッド車に使用され、精度要求が高まるモーターコア。その金型のダイセットプレート加工分野において、数マイクロメートルの加工精度を実現する高精度加工機として国内外より高い評価を博しているマシンが「YBM 1218V」だ。

 このマシンの特長は、高剛性を実現する一体型ブリッジ構造、幅広い加工領域をカバーするプリロード自己調整型スピンドル、さらに工場の室温変化によって起きる機体の熱変形を防ぐ機体温度制御システムを搭載していること。また自動パレット交換装置をオプションで用意し自動化ニーズにも対応している。三次元大型金型から精密加工まで、様々な加工に対応し、様々な産業分野に貢献する。さらに、直感操作、簡単キャリブレーション、解析を分かりやすいかたちで提供する「OpeNe Version 2.0」を搭載し、よりスマートな高精度加工を可能にしたマシンである。

高速・高応答性・超精密のハイエンド5軸加工機「UD-400/5X」
●ヤマザキマザック

UD-400/5X
UD-400/5X
 金型加工や精密加工に特化した「UD-400/5X」は同社モデルで最も高い精度と加工面品位を実現したハイエンド5軸加工機だ。このマシンの特長は、完全左右対称の門形構造で、温度変化による機体のねじれを低減し、ベースやコラムに使用したミネラルキャストは減衰性が高く、高速動作時の振動を抑えること。同社モデル最速の45000 min⁻¹主軸には軸心冷却とモータ外筒冷却を施している。Z軸方向の伸びが安定することで、従来以上の高品位な加工面を実現する。さらに、長時間の連続加工においても高精度を維持するため、ボールねじ軸心冷却、熱変位制御機能「サーマルシールド」、高分解能スケールフィードバックを搭載した。あわせて、金型加工で求められる自由曲面の高速加工に着目した制御技術やソフトウェアにより、精度だけでなく生産性の向上も実現する。
加工画像
加工画像


 【主な仕様】
主軸最大回転速度 45000min⁻¹
ツールシャンク形式 HSK-E40
最大積載ワーク寸法 Φ400 mm × 300mm
テーブルの最大積載質量(等分布) 120 kg



「Vision」は〝汎用性のある超高精度高速微細加工機〟がコンセプト
●碌々産業

Vision
Vision
 今回は超高精度高速微細加工機「Vision」のコンセプトと碌々産業が提唱する「四位一体」(微細加工機、切削工具、CAD/CAM、設置環境)の考え方による鏡面加工サンプル画像に注目したい。このマシンは「汎用性のある超高精度高速微細加工機」をコンセプトに開発されたもので、重切削加工から鏡面仕上げ加工まで、1台で可能な機械の要望が多くなってきたことを受け、機械間の「わたり加工」を無くし、ワンチャッキングで荒・中・仕上げ加工を実現し、さらには加工精度の向上を目指して開発を行ったという渾身のマシンなのだ。また、本機の開発に伴い、今までR3.0までのラインナップであった同社オリジナルの鏡面加工用の超硬ボールエンドミル「Luminous-E」をR6.0まで拡張し、広範囲の鏡面仕上げ加工の実現を目指している。

「Luminous-E」を使用した製品部への鏡面加工 面粗度14.374nm!
「Luminous-E」を使用した製品部への鏡面加工 面粗度14.374nm!
 写真にあるのは、「Luminous-E R5.0」を使用し、本機にて作成したサンプルだ。仕上げ加工時間が約50時間の加工においても、仕上げ面の面粗度Ra15nmを達成した事例である。「Vision」の誕生により、汎用性のある微細加工機という新たな領域が同社の製品ラインナップに追加された。

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