「歴史的な円高が続く中、海外需要の取り込みがキーになる」 日工会

横山会長
横山会長
日本工作機械工業会(会長=横山元彦氏)は、1月11日午前4時からホテルニューオータニで新年賀詞交歓会を開催した。
冒頭、横山会長が参会者にお礼の言葉を述べたあと新年の挨拶をした。挨拶の概要は次のとおり。

「昨年は、日工会創立60周年という大きな節目の年でありました。今日の業界を気付き上げてこられました先人たちに感謝の意を申し上げるとともに、関係者一同がそれに劣らぬ努力を重ねることを近い合った年でもありました。一方で昨年は大変な年でありました。3月11日に発生した東日本大震災によって、わが国の社会は人的・物的に著しい被害を受けました。被災された皆様方、とくに津波に襲われた地域の方々、原発事故で今なお避難を余儀なくされている方々に心からお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。

さて、昨年の工作機械業界を振り返りますと、欧米の財政・金融問題に起因した世界的な景気の減速懸念をはじめ、中国の金融引き締めや長期化する超円高水準などの逆風もありましたが、皆様方のご尽力のお陰で、毎月の受注額は概ね1000億円を超すレベルを維持して総じて順調な回復基調を辿ったと思っています。これを内外需別に見てみますと、内需につきましては、一般機械や自動車を中心に緩やかではありますが、上向いております。ただ、歴史的円高に起因する国内需要産業の伸び悩みを背景に、その水準はピーク時の半分程度であります。一方、外需に関しますと、年間で過去最高額を更新したものと見込まれます。依然として外需が受注全体を牽引している状況であります。この要因としてはアジア向けの受注が過去最高を記録したことに加え、欧米市場の復調が挙げられると思います。中でも中国は外需の中で37%、これは11月までの数字ですが、受注全体でも25%と高いシェアとなっており、その規模は国内市場に次ぐ第二の市場として存在感を増しております。こうした結果、昨年の工作機械受注額は、7月の修正しました年間の受注総額は1兆3000億円前後と申し上げましたが、1兆3000億をやや上回るという形で最終締めができるのではないかな、と思っています。(注:翌日速報値が発表)。

今年はどうなるのか、ということですが、今年の世界経済は、欧米の財政・金融問題の影響から、一般的には景気の減速が懸念されます。高成長を誇っておる新興国が、世界景気全体の牽引役を果たしてくれるものと考えています。これは私自身期待を込めて思っておりますが、中でも金融引き締めの緩和が見込まれる中国や、新たな製造拠点として注目されているアセアン各国では、活発な工作機械の需要が期待されると思われますし、一方で米国経済はドル安を背景に製造業の回復が進むであろうと私は見ております。ただ、欧州は、各国の財政再建を通じた経済安定化への取り組みの成否が世界経済にどのような影響を与えるか極めて注目されるところです。

わが国経済については、長引く歴史的水準の超円高や、電力供給不足の懸念、海外経済の不透明感等々から、景気回復のシナリオははっきりとは描き難い状況であります。こうした国内外の諸情勢の中で、本年の工作機械受注をどう見通すかということでありますが、内需については予測データからいうと、あまり良いデータが出てこないのですが、ただ、日本国内におけるものづくり基盤が揺らぎつつあると、最近しきりに言われます。そういう中にあって、われわれとしては、果たすべき役割があると私自身思っておりまして、日本でのものづくり基盤を維持するんだ、われわれもその役割の一端を担うんだという強い意志をもって、今年は取り組まなければならないと思っています。そういうことで、お客様に喜ばれる提案をする、すなわち提案をするためには、いろいろ知恵を使わなければならない。われわれ自身が販売会社を含めて需要を創出するんだ、という努力が重要だと思っております。外需につきましては、歴史的な円高が続く中ではありますが、今後も伸びるだろうと期待されるアジア市場の需要をいかに取り込めるかがキーになる。アジア市場というのは欧米と比較しても日本にとっては近いところにあるわけでありますから、そこに大きなビジネスチャンスが潜んでいるわけで、なんとしてもこれを取りまなければならない。

私ども日工会会員企業が知恵を出し、努力をしてあらゆる受注機会を成果に結び付けるように頑張っていきたいと思います。内需についても外需についても努力をしながら、1兆2000億程度は確保したいと思っています。月当たり1000億以上は確保したいと申し上げたいと思います。日本の工作機械メーカーのキーは海外市場ですから、自由かつ公平な競争ができるよう政府におかれましてもTPPの推進、あるいは行き過ぎた円高の是正など積極的な推進をお願いいたしたいと思います。

日工会としての重点事業について簡単に触れておきたいと思います。日工会といたしましても、量的な側面にも増して、技術面やサービス等の質的側面において、世界をリードし、日本はもとより、世界のものづくりに貢献することを第一義としなければならないという心づもりで諸事業を進めてまいりたいと思っております。具体的には人材の問題、次の世代を担う若い世代の育成に向けて引き続き力を入れて取り組んでいただきたいと思います。代表的な行事である「工作機械トップセミナー」は、産学の人材交流を積極的に推進しながら工作機械の社会的認知度の向上を図るべく、活動に注力します。

また、技術面では、、次世代自動車や、航空機、医療関係など、ますます成長していく分野においては産学連携して調査研究の推進を図っていきたい。あと、中長期的な観点では、今、「工作機械産業ビジョン2020」を検討しています。これも5月くらいを目途にとりまとめたい。

今年はJIMTOFの開催年に当たります。できるだけたくさんのメーカーさんに出品をしていただいて、国際色豊かな展示会にしたいと思っています。それ以外も国際交流の促進、環境問題の積極的な取り組みも引き続きやっていきたいと思っています」

アジア諸国との関係を維持強化したい

上田製造産業局長
上田製造産業局長
続いて来賓を代表して上田隆之経済産業省製造産業局長が、「昨年、製造業を取り巻く環境は苦しかったと存じます。日本経済の立ち直りに大きな貢献をいただいたのは、この工作機械業界でありました。日本の競争力の源泉が部品・素材であるわけですが、さらにその部品・素材の力の源泉が工作機械であったと知らしめることができた年でもありました。特に秋口のタイの洪水の場合は、タイに対しても大変な工作機械の輸出等々をご配慮いただきました。私どもも当初はタイの洪水に伴う国内の経済に与える影響が相当大きなものになると予想しておりましたが、皆様方のご努力のお陰で迅速に回復いたしました。工作機械に代表される日本のものづくりの強さは引き続き維持をしていかなければならないと私どもは考えます。円高や空洞化の懸念がございますが、現在、企業の利益と国家の利益は少しずつ乖離をはじめています。様々な政策を打ちながら日本のものづくりの基盤が強化されるように努力をしてもらいたいと思っております。政府の大きな役割はアジアの諸国との関係を維持強化し、皆様のビジネス環境を整備することだと思っています。TPPに関しましても、参加に関する協議が本格化するわけでございます。一方で、この議論をすればするほど中国がノッてまいりまして、「日中韓を早くやろうよ」という動きがあります。こういった分野をどこまで進められるか今年の課題です。世界経済については、アメリカに関して皆様、力強いイメージをお持ちです。アメリカ経済は回復に向かうのではないかということを仰る方が多い。中国に関しては見方が分かれていて、やや弱気な見方とかなりの成長を考えている方が両方おられるようです。EUに関しましては、残念ながらあまり期待されていないようです。一方、国内に関してですが、今年は復興需要があります。政府予算18兆円が東北地方を中心に注がれます。ぜひ、復興需要を一回限りのものにしないで、長期的に継続する形のものに成長に変えて行くことが重要です。日本工作機械工業会におかれましては、1兆2000億円という大変力強い見通しをいただきましたので、これがぜひ実現することを念願させていただきたいと思います。また、2020年に向けた工作機械のビジョンをお作りになられるとのことですが、このビジョンを私どもも非常に重視しております。政府といたしましても、これらのことを十分参考にさせて今後の政策展開をしてまいります」とあいさつした。

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