「国際競争力にひいでた製品をつくり上げ、厳しいグローバル競争に打ち勝つ戦略を実践」 日機連

伊藤会長
伊藤会長
日本機械工業連合会(会長=伊藤源嗣氏)は、1月6日午前11時より都内のホテルオークラで新年賀詞交歓会を開催した。

冒頭、伊藤会長が参会者にお礼の言葉を述べたあと新年の挨拶をした。
挨拶の概要は次のとおり。

「昨年はわが国にとって忘れることのできない大変な年となりました。3月に未曾有の大災害となった東日本大震災が発生し、被災地はもちろん、わが国経済にも大変深刻な苦難をもたらしました。現在、被災地においては、関係各位の献身的なご努力により、復旧・復興に向けての歩みが着実なものとなってきておりますが、今後も国民全体で支え、後押しして、被災地の一日も早い復旧、さらには復興がなることを心より念願する次第であります。

東日本大震災では、わが国経済も大きな痛手を被りましたが、関係各位の懸命のご努力により、寸断されたサプライチェーンが早期に復旧して、生産の回復や輸出の増加をもたらし、復興需要も生じたため、昨年7-9月期の国内総生産は実質で1年ぶりにプラスとなりました。しかし、欧州の財政金融危機を契機とした世界経済の減速や歴史的な円高の継続などで、昨年は1980年以来31年ぶりの貿易赤字に転落する見込みであり、また、エネルギー不安やタイの洪水など懸念材料も多く存在しています。政府におかれましては景気が再び悪化せぬよう、円高対策や補正予算の早期執行など、確固たる対応を早急に講じて頂きたいと思います。

わが国の景気はやや持ち直しの兆しがありますが、われわれ企業を取り巻く環境は厳しさを増しております。国内では急速な少子・高齢化による人口減少が進む一方、国外では新興諸国も加えたグローバル競争が激化しています。加えて、わが国を取り巻く事業環境には円高、突出した法人税、労働面や環境面の規制、経済連携の遅れなど国内においてものづくりを続けて行くうえで大きな障害があります。これらが早急に改善されなければ、わが国からものづくりの基盤がなくなってしまう心配があります。特に急激な円高阻止に対しては強力かつ有効な施策を講じていただくことが必要と考えます。製造業の活力を取り戻し、併せて製造業の生産拠点の海外への流出を防ぎ、国内雇用が確保できるよう、国際水準の事業環境整備に早急に取り組んで頂きたいと存じます。

政府では、来年度を日本再生の元年と位置づけ、被災地復興はもとより、経済連携の強化や新産業の創出などにより、わが国経済の再出発を図ることとしています。一方、わが国の財政危機は社会保障支出増大のため瀬戸際にきており、財政再建や持続可能な社会保障制度を構築のため、現在検討されている「社会保障と税の一体改革」を確実に実行し、国民が安心できる社会システムを早期に構築することが重要と考えます。

また、われわれ企業にはわが国経済再生の担い手となることを期待されております。中でも機械工業はわが国産業の中核として、その責務は重大であります。その実現のため、われわれ企業はイノベーションによる新技術や新製品の開発、コストの削減、機械の安全性や省エネの徹底などにより、国際競争力にひいでた製品をつくり上げるとともに、厳しいグローバル競争に打ち勝つ戦略を構築し、実践していくことが重要であります。優秀な人材の育成も不可欠であります。

機械工業はこれまで幾多の苦難を乗り越えてまいりました。非常に厳しい道のりとなりますが、今回の困難もわれわれは必ず克服できると確信しております。幸いにもわが国はTPPの交渉に参加することとなり、有望なアジア太平洋地域の需要を取り組むことが可能となりました。また、先月のCOP17では温暖化への対応を世界全体で行う方針が確認されました。わが国は自主的削減努力を行うこととなりましたが、温暖化防止に対する取り組みは技術革新を海、経済の成長を促す面もあり、引き続き積極的に挑むことが産業界にとって重要と思います。一方、法律面では「製造業派遣の原則禁止」が見送りとなり、労働規制の足枷の一つが取り除かれました。いずれも機械工業にとって朗報と申せましょう。

皆様方におかれては大変厳しい事業環境が続く中、ご苦労が多いことと存じます。日本機械工業連合会は、昨年7月1日に一般社団法人に移行しましたが、新たな時代に求められるニーズに対応し、皆様方と産業界の利益のために、引き続き、誠心誠意努力を続けたいと存じます」

官民一体となって力をあわせ、奮い立つような新しい日本に

上田製造産業局長
上田製造産業局長
来賓を代表して上田隆之(「隆」は「生」の上に「一」が入る)経済産業省製造産業局長があいさつをした。その中で上田局長は、「去年は製造産業全体にとって大変な年でありました。円高、空洞化、地球環境問題、電力制約、原子力発電所の事故、さらにはタイの洪水等々苦難の年でありましたが、復興からの立ち上がりは製造業の皆さま方が大変力強いご努力をされ、予想よりも早い立ち上がりをしました。日本のものづくりの底力を見ることができ、ここに深く感謝する次第であります。復興の問題につきましては、まだまだ道中ではございますが、これから政府におきましても全力を尽くして復興に取り組んでまいります。さて、去年はこのような年でありましたので、今年は50年に一度、あるいは100年に一度の良い年になればいいなと多くの方が期待をされているようですが、世界情勢は大変不透明な状況でございます。ヨーロッパではEUという仕組みが、持つか持たないのかといった限界で戦おうとしております。アメリカもリーマンショック後の景気回復から本格的な回復軌道に立ちあがれるかという岐路でございますし、アジアも中国では成長をどうしていくのか、貧富の差をどうしていくのか等々、それぞれの国が多くの課題を抱えております。日本も例外ではございません。日本だけをみますと、なんとなく今は本当に大変なのでどうしていいのか・・・といった気がしますが、実は多くの国が、課題がそれぞれ違うにせよ、経験したことのない課題に立ち向かわなければならない状況にあります。その中において、日本という国は、皆様方の強い技術力と、人材のネットワーク、資金力もある。このようなポテンシャルを活用しながらこの新しい時代に官民揃って邁進していけば、日本の明るい未来が拓けて来るのではないかと思う次第です。政府も今年は経済産業でいえば、新しいTPPをはじめとする交易連携で一歩前に出て取り組んでまいりたいと思いますし、国内産業の問題につきましても、円高、空洞化の対策は簡単ではございませんが、ものづくりの基盤が維持できるような一歩前に出た政策展開を考える次第であります。また民間企業におかれましても不透明な状況下ではありますが、企業の利益はグローバル化の中にも存在するわけで、世界の内需をこの国に取り組んでいただくことに併せて、国内雇用の問題もございます。今年は辰年ということでありまして、この円高、空洞化で大変だ、腹が立つばかりだ、の“たつ”もございますが、別の“たつ”もあります。受けて“たつ”、しょって“たつ”、ふるい“たつ”等々。ここにいらっしゃる皆様方は日本の経営の達人でございます。皆様方が自由闊達に経営を行い、官民力を併せていけば必ずや奮い立つような新しい日本になると思っています」と述べた。
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