「デジタルソリューションで高効率を目指す」サンドビック株式会社 山本社長に聞く
サンドビック・コロマント(www.sandvik.coromant.com)は、様々な工具や加工ノウハウを提供する世界的な大手メーカーだ。現在、働き方改革も推奨され、自動化・省人化で高効率へのニーズが高まっているが、IoTを意識した商品を提供するなど、独創的なイノベーションで加工現場の課題に応えている。
本年4月1日付けで、サンドビック株式会社の代表取締役社長に就任した山本雅広氏。日本市場でさらなるビジネスの成長を牽引し、顧客と強いつながりを意識しながら、生産性向上とより効率的な製造活動を目指してユーザーが直面する課題に真摯に向き合っている。現在、コロナ禍において働き方改革が加速しているが、すでに10年以上前から、場所や時間を有効に活用できる体制を取っていたという同社の強みと未来像について山本社長にお話を伺った。
営業一筋たたき上げでやってきた ~すでに10年前から時間や場所を有効活用~
―山本社長は1994年にサンドビック・マテリアル・テクノロジー(以下SMT)に入社し、長い間営業畑を歩まれてきたようですが、現在に至るまでの簡単な経歴を教えてください。
山本 わたしは神戸で生まれた関西人で、学生時代までは関西で過ごしました。サンドビックに入社し、今年で25年になります。入社してからというもの営業からのたたき上げでまいりました。以前はサンドビック・グループの材料部門であるSMTに長年勤めておりましたが、2019年1月よりコロマントに異動し、コロマントジャパンの西日本クラスターマネージャー、2019年10月以降はサンドビック・コロマントのセールスエリア・サウス・アンド・イースト・アジアのジェネラルマネージャー兼コロマントカンパニーのカンパニープレジデントならびにサンドビック株式会社の取締役副社長を務め、現在に至ります。
―担当地域は日本だけですか。
山本 日本、東南アジア全域、オセアニア、インドを担当しています。社歴は長いのですが、材料部門に長年おりましたので、切削工具業界に改めて足を踏み入れた、という経歴です。
―世界中がコロナ禍真っ只中ですが、社内で変えたことはありますか。
山本 お客様への訪問ができない中で、いかに当社の製品やサービスを提供していくかを検討した結果、6月から〝サンドビックソリューションウェビナー〟を立ち上げました。これは、サンドビック独自のソリューションの提案を中心に、アプリケーション、製品、サービスなど様々なテーマに沿ってオンラインでセミナーを行い、当社製品や様々な加工のノウハウを提供するものです。参加費は無料で、すでに10回ほど開催しております。また、当社では、従来からリモート業務を実行しておりましたので、コロナ禍でお客様のところへ訪問ができない中でも、いち早くWeb会議システムを活用しながらオンライン面談を取り入れ、お客様との対話をスピーディに実現しています。
―働き方改革がトレンドになる以前にリモートワークを活用されていたのですね。
山本 振り返ると、阪神大震災の際に当社は神戸で被災しています。東日本大震災では瀬峰工場に大きな被害はなかったものの、そのときに問題が起こった場合、いかに従業員がスムーズに仕事をこなせるか、を考えました。リモートでも業務ができるツールを活用することの重要性に気付き、すでに10年以上前から場所や時間を有効に活用できる体制を構築し、現在に至っております。コロナ禍で世の中が激変しましたが、こうした経緯もあり、時流に合致した動きをスムーズにできたのだと感じています。
―そういえばこの名古屋本部はとても静かです。
山本 現在、感染回避対策として、管理部門やサポート部門を含め、在宅を基本にしており、営業部隊は直行直帰を推進しながら業務を遂行しています。しかし、どうしても自宅でできない仕事や、事務所に来なければできない業務もありますので、本部では、最大2割までの従業員しか出社をしないようにしています。
スムーズに仕事ができる環境を構築
―コロナ禍により従業員の出社を制限したことで、気付かれたことはありますか。
山本 通勤に多くの時間を取られることがなくなりましたので、ご家庭を持たれ、お子様がいらっしゃる方、特に女性に関しては、より働きやすい環境になったと思います。私も神戸の自宅にいながら、アジアとのやりとりも社内のコミュニケーションも全てWeb会議システムで行っていますし、在宅ワークやリモートワークなど、メディアで大きく取り上げられる前から、当社ではこれらのインフラがすでに整っていました。この件についてはヨーロッパ企業ということもあって、少々先を進んでいた、というのがあるかもしれません。また、当社ではペーパーレス化を推進しており、図面管理もデジタル化をしていますので、こうした点も今となっては、コロナ禍で活動を制限されても慌てることなく、スムーズに業務ができた理由のひとつだと思っています。
―先行きに見通しが立たないといいながらも、最近は景気の底打ち感がなんとなく出てきたように感じますが、いかがでしょうか。
山本 自動車業界は思いのほか早くに回復しているように感じます。国内自動車メーカー各社においても来年の予想を発表していますが、2019年レベルに戻す、あるいは悪くても9掛けぐらいの話をされていますし、ドイツの自動車メーカーはじめ欧米のメーカーもスムーズに回復しているようです。ただ、残念ながら航空機産業が非常に厳しく、2023年まで回復が困難だともいわれています。
―このような時流の中で、貴社の取り組みを教えてください。
山本 われわれが推奨している〝デジタル加工ソリューション〟は、2016年からデジタル加工分野で開発を始め、JIMTOF2016で披露して大きな注目を浴びました。以降、この分野での研究開発に注力しています。われわれは製造設計などの初期段階から最終加工、そして検証までを一つのプロセスと考えており、それぞれのプロセスにソリューションの製品があります。