牧野フライス製作所 レーザ加工機ビジネスに参入! ~技術は「微細精密加工」の地平をカルチャー(耕す)する~
■ニューフロンティアへ一石を投じる
牧野フライス製作所(社長=井上真一氏)が11月9日(月)、オンライン会見を開き、レーザ加工機のビジネスに参入すると発表した。同社は、1937年の創業以来、フライス盤、マシニングセンタ、放電加工機などを手がけ、特に高精度ミーリング加工が求められる航空機や携帯電話ビジネス、チタン加工、微細精密加工部門において、先進の技術力をもって、お客様の〝できない〟を、〝できる〟に変えてきた企業だ。
近年、顧客の要望は回転工具では到達できない微細加工レベルに達している。数十ミクロンの造形世界にとどまらず、より細かなサブミクロンオーダーの微細加工分野で、回転工具に代わる加工法が求められている。スマートフォン、自動車、医療、宇宙開発などの分野ではハイレベルの付加価値を実現するための微細精密加工技術が必要となる。
多くのシンクタンクが予測するとおり、レーザ加工産業の成長率は大きく、期待度も高い。今回のレーザ加工機の販売を機に、同社は微細穴加工や機能表面加工の分野で培ってきた機械精度とモーションコントロール技術を複合させ、新たなステップに進む。
■レーザ加工機 「LUMINIZER」
今回同社が発売するレーザ加工機は、LUMINIZER(ルミナイザー) LB300と LB500 の2機種。10年程前からスイスの工作機械メーカー(シノヴァ社)のOEMとして提供し、実績を重ねてきたオリジナルブランドである。
LUMINIZERは水と空気の境界面で起こる光の全反射現象を利用し、レーザビームを材料に照射する仕組み。熱影響を抑え、水ジェットによる高効率な加工屑除去が可能であることに加え、既存の機械加工では難しい炭化ケイ素、窒化ガリウム、ジルコニア、アルミナ、ダイヤモンド焼結体などの脆性材も容易に加工できるメリットを持つ。狙うのは、半導体や航空機、医療、工具等の市場への進出だ。
特長は次の5点。①航空機エンジンの軽量化のため採用されたCMCs材の切断が可能 ②PCDおよびCBN工具を高速・高品質で切断ができ、レーザ加工のため放電痕が発生しない ③通電性のTBCを施した材料に対して直接ディフューザと冷却穴が加工 ④難削材SiCに高速・高品質で穴加工ができる ⑤医療用途にも用いられるステント加工。
牧野ブランド力を発揮
10年程前からタッグを組んできたシノヴァ社との協業を離れ、ビジネスそのものの局面においてリーダーシップをとっていくことは、自分たちのビジネスとレーザ加工の技術が融合することを意味し、航空機ビジネスとレーザ加工、医療のビジネスとレーザ加工、半導体のビジネスとレーザ加工といったようにリンクしていく。精度、安定性、信頼性、マシンそのもののデザイン力が牧野ブランドの強み。今後も世界の牧野にふさわしいレーザ加工技術を提供していきたい。
出荷開始時期は LB300が今年11月、LB500が今年12月とし、販売計画は当面それぞれ年間10台を見込んでいる。
ただし、これはあくまで第1ステップだと話す井上社長。
「LBシリーズをさらに改良して世に問い、最終的に顧客の要望であるサブミクロンオーダーの領域に達したい。素材カット、さらに微細な穴加工、機能表面加工など用途はさまざま。顧客の要望を満たすまで、私たちの挑戦は続きます。」と意欲を見せた。