【年頭所感】日本ロボット工業会/日本歯車工業会/日本工作機械輸入協会/日本建設機械工業会
「ロボットの利活用推進にあたって全力で取り組む」
●日本ロボット工業会 会長 小笠原 浩
新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げます。
本年の年明けは、例年と異なり昨年初頭より世界中に蔓延した新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威が、第2波、第3波と更に拡大方向にある中で静かに迎えることとなりました。なかなか終息の兆しが見えない状況ではあるものの、ワクチンの実用化が進み、既にその接種も始まりつつあることから、その効果による感染拡大抑止に大いに期待を寄せるところです。
このような中ではありましたが、昨年末、惑星探査機「はやぶさ2」が6年50憶キロもの旅を経て、小惑星リュウグウからの試料を収めたカプセルを見事に地球に帰還させた偉業は、日本国民に大きな感動と元気を与えるとともに科学技術への大いなる信頼と期待を抱かせる明るいニュースでした。
翻って、このコロナ禍下での2020年の世界経済を見ると、昨年10月の「IMF世界経済見通し」では対前年比▲4.4%と予測しており、我が国においても経済活動の抑制によって生産、雇用・所得、企業収益、そして個人消費の落ち込みといった厳しい年でした。その中にあって、中国ではCOVID-19のいち早い終息とその成長回復が著しく、主要国では唯一のプラス成長となりました。
明けて2021年の今年は、IMFによる世界経済見通しで対前年比5.2%のプラス成長とするほか、米国の次期政権ではコロナが完全に終息するまで金融緩和を継続することで、景気支援のさらなる強化が期待されるなど、世界経済は緩やかながら景気の回復が期待されています。
このような状況の下、2020年の我が国ロボット産業は、コロナ禍の影響等により年初よりマイナス傾向が続きましたが、中国からの外需増が年後半からの輸出市場を牽引し、全体としてプラス成長が見られました。これにより 2020年は、受注額で対前年比4.7%増の8,500億円、生産額では前年並みの7,790億円となると見込まれます。
そして、本年のロボット市場は、緩やかな景気回復とともに、従来からの底堅い自動化需要に加えて今回のコロナ禍による感染防止対策上での新たなロボットニーズも生まれており、受注額は対前年比4%増の8,840億円、そして生産額は5.6%増の8,220億円の見通しとしました。
政策面では、政府が2019年7月に取り纏められた「ロボットによる社会変革推進計画」において、ロボットの社会実装を加速することで社会変革を推進するとして、人材育成、エコシステム、R&D体制の構築やオープンイノベーションを重点に各種政策を強力に展開しています。そして、昨年7月に産学連携のロボット人財育成機関としてロボット革命・産業IoT イニシアティブ協議会内に「未来ロボティクスエンジニア育成協議会(CEHRSI)」が設立されたほか、同8月に社会実装を加速するオープンイノベーションの観点より「技術研究組合 産業用ロボット次世代基礎技術研究機構(ROBOCIP)」が設立されるなど、新たな活動がスタートしたところです。
当工業会としても、昨年はコロナ禍の影響により事業活動では様々な影響を受けましたが、「with コロナ」が常態化する中で、事業の取組方法に違いはありますがロボットの社会実装を加速し、ロボットの利活用推進にあたって全力で取り組む所存です。そして、当工業会の活動の柱となっている「市場拡大に向けた取組」、「イノベーションの加速化」、そして「国際標準化の推進、国際協調・協力の推進」の三つを主体的に行うこととしております。
特に、市場拡大に向けた取組としては、その担い手でもあるFA・ロボットシステムインテグレータ協会が、昨年度試行した「ロボットSI 検定3 級」を本年度より正式に実施運用することとしており、システムインテグレーションに対する専門性の高度化に向けた人材育成の活動をはじめ、業界ネットワークの構築やマッチング活動等の事業を更に積極的に展開することと致しております。
また、イノベーションの加速化では、ロボット関係学会及び関連業界との連携を通じ、市場の獲得・拡大、更には我が国競争力の維持・向上を図ることとしています。そして、ロボットの国際標準化では、JIS Y 1001(サービスロボットを活用したロボットサービスの安全マネジメントシステムに関する要求事項)が2019 年5月に制定されたのに併せ、ISO/TC299へ新規作業項目の提案を行った結果、2020年7月に新たなWGとして採択・設置され、日本が議長国となってISO規格制定に向けた審議が開始されることとなりました。このように国際標準や国際交流についても引き続き積極的に推進することとしております。
展示会に関しては、コロナ禍で昨年中止となった「実装プロセステクノロジー展」を5月26日~28日に、また、延期となっていた「Japan Robot Week」を7月8日~11日に開催するとしております。いずれもCOVID-19の感染状況を見つつ、対策に万全を期して準備を進めてまいります。
その一方、本年12月に開催予定であった「国際ロボット展」については、東京オリンピック・パラリンピックの開催上、残念ながら年を越して2022年3月9日~12日での開催となりました。
そして、当会は2022年10月に創立50周年を迎えますが、その「50周年記念事業」企画について現在検討を行っております。それらの具体化と準備作業を2021年度より本格的に取り組むほか、市場調査、技術振興等の各事業についても意欲的に展開する所存です。
引き続き関係各位の一層のご支援とご協力をお願い申し上げますとともに、皆様のご活躍とご発展を祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。
「コロナを克服して新たに飛躍」
●日本歯車工業会 会長 植田昌克
新年あけましておめでとうございます。謹んで新春のお慶びを申し上げます。
旧年中は私ども日本歯車工業会の事業運営に格別のご支援、ご協力を賜り厚く御礼申し上げます。
中国武漢に端を発した新型コロナウィルス感染症が瞬く間に世界中に広がり、昨年はコロナ感染対応に終始し、経済的に大打撃を受けました。海外渡航が制限され、グローバル展開を進めていた多くの「ものづくり」が余儀なく停止することとなり、厳しい経営環境に追い込まれました。新しい年を迎え、コロナ感染が一日でも早く終息し、感染拡大前の活況に戻ることを心より願うところです。
さて、弊会は「国際競争力強化を視野に事業推進」「会員にとって魅力ある企画の実行」「次世代経営者・技術者育成事業」を柱として事業展開しております。“歯車”はこれまでも、そしてこれからも重要な機械要素の一つとして各種産業機械に使われ続けます。これにはグローバル化の推進、若きエンジニアの育成が必須で、弊会の各種事業を通して歯車業界を下支えしていく所存です。
昨年は、一年に渡り歯車の基礎並びに応用を学ぶ教育支援事業「ギヤカレッジ」を、コロナ感染予防から募集開始直前に中止と致しました。若き社員に歯車を基礎から学ばせようと応募を検討されていた事業者様には、大変申し訳ございませんでした。開校以来15年に渡り優秀な技術者を輩出してきたギヤカレッジ事業を継続するために、次年度の再開に向けて、オンラインによる講義を全面的に取り入れ、新しい生活様式に即したカリキュラムを検討しているところです。
同カレッジ修了後の方を対象とした「フォローアップ研修会」、次世代の若手経営者の育成及びネットワーク構築のための「若手経営者研究会」も、オンラインを活用した内容に大幅に変更しました。対面による実施と違い当初戸惑うことも多々ありましたが、回数を重ねるごとに相互に慣れ、オンラインならではの効果も出てきたところです。いずれも人材育成のための取り組みですが、コロナ禍にあっても地道に事業を継続することが、歯車業界を牽引する次なる人材を養成することになると確信しています。
経営研修会、歯車関連規格(ISO,JIS)の対応、材料評価プロジェクトなど他の事業においても、活動がオンラインへと移行し、新しい取り組みが求められています。難しい点もありますが、このタイミングを絶好の機会と捉え、業界全体の活性化に役立てるように邁進していく所存です。そして、引き続き経済産業省、各教育機関、諸団体の方々と密接に連携しながら、歯車産業ひいては日本の機械産業の発展を願い、皆様のお役に立てる工業会をめざし努めて参りたいと存じます。
今年が皆様にとって飛躍の年になりますよう祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
「国も企業も力を問われる年」
●日本工作機械輸入協会 会長 中川貴夫
2021年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
旧年中は当協会の事業活動にご支援ご協力を賜りまして、誠にありがとうございました。
私は、輸入工作機械は、今や工作機械製造大国たる日本の、市場ニーズのニッチな部分を埋める、しかしながら決して輝きを失うことのないものだと確信しております。当協会は、工作機械の輸入を通じて、「日本人のものづくり」を支えるため、一層の努力をしていく所存です。
昨年は新型コロナウイルスに振り回された一年でした。まずはこうして無事に新しい年を迎えることができることを感謝したいと思います。
今までに経験したことのない新たな生活様式、新たな仕事のしかたを模索し、密こそ良かれの時代から疎こそ良かれの時代に変わり、すべてはオンラインに急激に移行されました。
昨年の今頃、よもやオリンピック・パラリンピックが延期になり、JIMTOFがOnline開催となるなどと誰が予測したでしょう。
当協会の会員企業は、「鎖国」により海外パートナーとの往来が絶たれ、業績へも深刻な影響が出ました。
昨年の工作機械の輸入統計は、約680億円(予想)で、一昨年より約37%ダウンとなり、周辺機器を加えた総合計では、約8,100億円(予想)、同約19%ダウンとなります。
今年は昨年の試練をどう乗り越えるか、知恵を絞っていかに生き残るか、あるいは大きく飛躍するか、国も企業もその「力」を問われる年となります。
前を向いて、明るく元気を出して一歩ずつ進んで参る所存です。
皆様にとりまして、本年こそ良い年となりますよう祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。
「調和と発展による世界への貢献」
●日本建設機械工業会 会長 数見保暢
新春を迎え謹んでお慶びを申し上げます。
会員各社ならびに関係省庁、関係団体の皆様には平素より、日本建設機械工業会の活動に格別のご支援とご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
昨年は年明けから世界的に新型コロナウイルス感染症が拡大し、多くの方が亡くなられました。ここに亡くなられた方々に謹んでお悔みを申し上げるとともに、感染された皆様に折衷よりお見舞い申し上げます。
新型コロナウイルス感染症が収束せず、足元の世界経済は低迷し大変厳しい状況にあります。昨年8月に当工業会から2020年度、2021年度の建設機械需要予測を発表致しました。2020年度全体の通期需要予測では前年度比15%減少という、リーマンショック後では最大の減少幅になると予測されています。しかし、国内の需要予測では下期から徐々に回復し、通期では前年比5%減少と見込まれました。実際に月次金額ベースの出荷統計では、国内市場は10月から6か月振りに増加に転じています。前年同月が消費税増税で落ち込み幅が大きかったとは言え、回復傾向にあると言えます。
一方海外の需要予測は、今年度回復に至らず通期では前年比22%減少と見込まれました。この結果輸出比率は2007年度以降では、最低の54%に留まると想定されています。2021年度は、国内市場が前年比1%の減少予測、海外市場が上期から増加傾向と想定され、通期では前年比10%増加、全体では前年度比5%増加と予測し、輸出比率も57%まで回復の見通しです。
このように、2020年度は大変厳しい市況と見込まれますが、一部の市場では回復の兆しも見え、2021年度には機種による違いはあるものの、全体的には明るさが戻ると想定されます。新型コロナウイルス感染症の抑え込みと、経済活動の持続を求める動きはしばらく続くものと思われます。
このような環境下、当工業会では、引き続き新型コロナウイルス感染防止対策を継続しながら、社会基盤の整備に資する建設機械本体や部品、サービスを安定して提供することで社会に貢献して参ります。さらに益々要請の強まる脱炭素社会の実現に向けて、製品面では環境負荷の低い建設機械や安全性の高い製品開発、施工プロセスでは労働力不足や熟練労働者の減少による生産性の維持をはかるための、IoT/ICTを活用した情報化施工の普及を進めて参ります。
このような時こそ、工業会の設立理念である「調和と発展による世界への貢献」ならびに「共生と競争」の基本に立ち返り、新しい工業会の活動内容を考え、変革して参りたいと思います。
最後になりますが、新型コロナウイルスの感染症が早期に収束し、安心して生活できる社会を回復すること、そして皆様にとって良い一年となりますように祈念いたしまして年頭のご挨拶とさせて頂きます。