【年頭所感】日本機械工業連合会/日本産業機械工業会/日本工作機械工業会
「日本にとって大きな節目となる明るい年に」
●日本機械工業連合会 会長 大宮英明
皆様、新年明けましておめでとうございます。
年頭に当たり、平素より日本機械工業連合会にお寄せ頂いております皆様方の温かいご支援とご協力に対し、改めて深く御礼申し上げます。
本年は、延期となりましたオリンピック・パラリンピックが開催されますが、日本にとって大きな節目となる明るい年となることを祈念したいと思います。
昨年は、新年早々、新型コロナウィルス感染問題が発生、拡大し、世界経済において波乱の年でありました。我が国機械産業も多大な影響を受けており、今年が回復と成長の年となることを切望しております。
日機連としては、このような状況下、会員の皆様にコロナ対応を含め、必要な情報を発信し、会員の皆様を支援できるよう、事業を行ってまいりました。会合実開催が困難な状況のなか、WEBを活用しつつ、事業運営してまいりましたが、これまで、時間、距離などの制約により、参加が難しかった会員の皆様に、より多く事業に参加いただけたことは、一つのメリットではなかったかと思っております。
今後、コロナ感染症の展開は予断を許しませんが、「ニューノーマル」の実態に柔軟に対応し、WEBをとり入れた活動もあわせ、より広く会員の皆様へ最新の情報を提供し、サービスの向上に努めていく考えです。
機械産業の現況ですが、2020年12月末に日機連は、機械工業生産額見通し調査(改訂版)を発表いたしました。新型コロナウィルス感染拡大により、特に需要面で大きな影響が出ており、リーマンショック以来の厳しい状況になっております。2020年度上期は、特に、自動車を中心に輸送機械の生産が大きく減少するとともに、全業種の生産が減少した結果、全体の生産額は前年度比20.0%減となりました。一方、下期は依然として厳しいものの、自動車等の生産は回復が見込まれ、機械工業として持ち直しの動きが見られることから、前年度比6.1%減まで回復するものと見込まれます。従って、2020年度全体としての機械工業生産額は、7月に行った当初の調査の見通し(65兆3704億円)を下回り、前年度比13.1%減の63兆2441億円となる見通しであります。この生産額は、リーマンショック翌年(2009年)の生産額(約61兆円)を上回るものの、東日本大震災翌年(2012年)の生産額(約65兆円)を下回ります。このように機械工業を取り巻く環境は依然として厳しく、今後も新型コロナウィルス感染の影響が続くと予想されます。
最近の日機連活動に関しましてご紹介いたします。昨年は新型コロナウィルス感染拡大のなか、委員会活動や講演会の実開催が困難となっておりましたが、WEBシステムの構築により多くの活動を実施できました。講演会に関しましては昨年合計19回開催いたしました。製造業へのコロナ対策、最新のエネルギー政策、デジタルトランスフォーメーション(以下DX)などに関し、政府関係者、有識者等各方面の専門家に講演をいただき、会員の皆様への情報提供を強化してまいりました。各委員会では、WEBを活用しつつ、通年では例年と同程度の開催をいたしました。また、ロボット表彰、CO2排出削減の視点も踏まえて再開した省エネルギー表彰事業についても表彰実施にむけて審査を進めております。
次に税制改正についての取り組みについてご紹介いたします。税制に関しては、機械業界
の要望内容の策定とその実現に向けた要望を中心に活動を行っております。令和3年度の税制改正については、「ウィズコロナ、ポストコロナの経済・社会基盤を再構築するための重要税制」として、研究開発税制の拡充、設備投資の促進に向けた税制の創設・整備、欠損金の扱いの改善等の重点要望をとりまとめ、要望いたしました。また、製造業関連8団体連名にて「危機克服・イノベーション加速に向けた令和3年度税制改正共同要望」を、電子情報技術産業協会、日本製薬工業協会等と8団体連名にて「令和3年度研究開発税制共同要望」をそれぞれ策定し、要望項目の実現に向けて、共同で陳情活動を展開しました。その結果として、総額型の税額控除限度額引上げやクラウドによるサービス提供の対象化等の研究開発税制の見直し、企業のDX及びカーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設、繰越欠損金の控除上限の特例等、数多くの成果を実現することができました。今後の機械産業の発展のため、是非その活用をお願いしたいと思います。
ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会事務局(以下RRI)の活動支援も日機連の重要な業務です。成長戦略の一環として政府が策定した「ロボット新戦略」に基づき、「ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)」が2015年に発足しましたが、その後順調に活動を展開しており、現在、会員数は約548となり、発足時の226から約2.5倍となっております。RRIの2020年度の主な活動状況をご紹介いたします。
RRIのロボット分野の事業(ロボットフレンドリーな環境構築に関する取り組み)に関連し、当会は、2020年度「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に係る補助事業者に選定され、RRIと連携しながら「施設管理」、「小売」、「食品」の3分野での事業推進に着手しております。
また、人材育成については、ロボットメーカー7社の産業界、教育機関(高等専門学校、工業高等学校)、職業能力開発施設が連携して、2020年6月、「未来ロボティクスエンジニア育成協議会(CHERSI(チェルシー))」を設立し、RRIの下に事務局を設置しました。今後、CHERSI は、教員向けインターンシップや企業エンジニアの学校への派遣など、「教育機関から産業界へのニーズ」と「産業界の有するシーズ」とをマッチングさせて、オールジャパンでの人材育成を推進してまいります。
RRIのもう一つの柱であるIoT分野では、ドイツPlattform Industrie4.0、ドイツ工学アカデミー (Acatech) と、アフターコロナの世界に向けたものづくりの課題と方針についての日独有識者会合を2020年5月にWeb形式で開き、共同声明「アフターコロナの世界におけるものづくり」をまとめ、発表しました。
2020年10月には、経済産業省との共催で、『グローバルトップが語る「製造ビジネスとパラダイムシフト」』と題する「ロボット革命・産業IoT国際シンポジウム 2020」を開催し、コロナ禍対応及び危機後のものづくりのデジタル化・IoT化をどのように進めていくべきか、日・米・独の研究・産業リーダーによる講演・ディスカッションを行いました。
シンポジウムには、ドイツアカテック理事会議長カガーマン博士、米 クレムゾン大学ジョンソン教授他の著名な有識者に登壇いただきました。調査研究・情報共有活動では、2020年2月の米国出張調査内容を踏まえ、「米国のAdvanced Manufacturingの取り組みに関する調査報告書」を6月に発表しました。
引き続き日機連は、ロボットの社会実装、IoTの普及と我が国機械産業の競争力向上に向け、RRIを支援していく考えです。
日機連の最近の事業の一部を紹介いたしましたが、日機連は、引き続きRRIと一体となり、DXや環境エネルギー課題への対応、強靭なサプライチェーンの構築等、我が国経済の持続的な成長に向けて、日本の機械産業に貢献し、また更なる発展を実現できるよう努めていく所存でございます。本年も日機連、RRI共々、我が国機械産業発展のため、誠心誠意努力を続けて参りたく、引き続きの御指導、御鞭撻をお願い申し上げます。最後になりましたが、皆様の一層のご健勝とご活躍を心から祈念申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。
「脱炭素化は業界にとって大きなビジネスチャンス」
●日本産業機械工業会 会長 斎藤 保
2021年を迎えるに当たり、新年のご挨拶を申し上げます。
皆様には、気分も新たに新年を迎えられたことと思います。昨年を振り返りますと、新型コロナウイルスのパンデミックにより国際社会は未曾有の危機に直面し、わが国においても、感染拡大を防止するために、史上初めてとなる緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出自粛や休業要請の他、遠隔・非対面・非接触による業務など、日常を巡る風景が大きく変わりました。
経済面では、12月に発表した日銀短観によりますと、大企業製造業の業況判断指数は、コロナの影響を強く受けた2020年4~6月期を底として改善傾向となったものの、依然としてマイナス圏を抜け出しておりません。また、感染の再拡大もあり、設備投資計画がマイナスとなるなど、多くの企業が先行きを厳しく見ていると思われます。
一方、海外では、他国に先駆けて経済活動を再開した中国の景気回復が見られたものの、新型コロナの感染者数が再び増加する欧米では景気の2番底が懸念されるなど、世界経済の腰折れリスクが高まっているのかと思われます。
私ども日本産業機械工業会としては、政府や自治体の要請・指示を受け、会員各社の協力により、感染防止策の徹底や医療関連物資の提供などに取り組むとともに、事業活動の維持・継続に努めました。
なお、2020年度上半期の産業機械受注については、国内では官公需が下支えしたものの、外需が減少したことから、受注額が2兆1,157億円、前年同期比97.9%と2年連続で前年同期を下回る結果となりました。
さて、2021年は、新型コロナウイルスの抑え込みに向けた、大変重要な一年になると思われます。救世主として期待されるワクチンや治療薬の開発が進展しており、わが国でもワクチン接種の準備が始動しております。ただ、多くの人々への接種を実現するためには、今暫く時間がかかるとみられており、それまでは制約の多い環境が続くと思われますが、引き続き国民一人ひとりが危機感を共有し、一丸となって感染防止策に取り組む必要があります。
こうした中、我々産業機械業界としては、感染拡大防止に細心の注意を払いながら、事業の継続と雇用の維持を最優先に努力を続けていくとともに、先が読めない時代だからこそ、短期的な回復のみならず、コロナ後を見据えた中長期的な成長力を高める取り組みを継続していく必要があると考えます。
特に、世界の新潮流である脱炭素化については、産業機械業界にとっても大きなビジネスチャンスであり、「グリーン成長」に貢献する革新的イノベーションの創出に取り組んでいくことが益々重要になっております。
また、我々が長年にわたって蓄積してきた技術や経験を生かし、リモート、非接触、自動化、省力化などの社会や企業が直面している課題を解決し、付加価値の増大につなげていくなど、わが国産業の生産性向上や競争力強化に貢献していく必要があると考えます。
政府におかれましては、新型コロナの感染「第三波」への対策の拡充を軸に、経済運営に万全を期していただきたいと思います。さらに、コロナ後を見据えた経済構造の転換と好循環の実現に向けて、脱炭素社会の実現やデジタル改革、企業の生産性向上といった重要課題に対して、スピード感をもって取り組んでいただくことを期待しております。
年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
「世界の製造業発展に貢献」
●日本工作機械工業会 会長 飯村幸生
2021年の新春を迎え、謹んで年頭の御祝詞を申し上げます。
さて、昨年を振り返りますと、米中対立の激化や世界的な新型コロナウイルスの感染拡大によって、国際情勢は、政治・経済両面にわたり極めて厳しくかつ不確実な様相を呈した一年となりました。世界各国の経済活動は4-6月期を底に徐々に回復に向かいましたが、その中で中国ではインフラ投資や半導体関連の他、自動車などの設備投資が比較的早期に立ち上がりました。一方、欧米・日本の設備投資は緩やかな持ち直しの動きが続き、年初の想定を大きく下回る水準で推移しました。この結果、2020年の受注総額は、2010年以来10年ぶりに1兆円を下回る見通しです。
このような状況の中、当会では昨年11月にJIMTOF2020 Onlineを開催致しました。JIMTOFのWEB開催は初の試みとなりましたが、世界9カ国・地域から約400社に出展頂き、日本が誇る世界最先端の工作機械技術・製品を世界に向けて発信致しました。学生諸君に工作機械産業の魅力を伝える工作機械トップセミナーをオンラインで開催したほか、時流に沿った講演も併催し、参加された多くの方からご好評を得ました。
本年についても、新型コロナウイルス感染症の終息や米中対立の行方など、先行きの不透明感を抱えた状況は暫く続いていくと思われます。
そのような最中にあっても、AIの進化、5Gの普及に伴う高速・大容量通信によるDX活用やロボット技術との融合による省人化技術により、生産技術革新が加速して参ります。また、自動車産業ではCASE、MaaSへのシフトが進展しております。加えまして全世界的に、地球環境に関する規制が強化されており、製造業にはライフ・サイクル・アセスメントやカーボンフットプリントへの対応が求められております。コロナ禍で産業構造の転換が促され、自動化・見える化・リモート化のニーズ実現を可能にするデジタル変革(DX)により、非対面・非接触型のビジネスモデルの構築が進展していくと見込まれます。日本の工作機械産業はこれらの変化に柔軟に対処し、あらゆる技術を進化・発展させて世界の製造業の発展に貢献して参ります。
当会は、本年12月1日に創立70周年を迎えます。70周年に向けて、業界一丸となって「工作機械産業ビジョン2030(仮称)」の策定、「70周年誌」の編纂作業を進めて参ります。
関係各位には当工業会の事業に対する一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。
本年が皆様にとって更なる飛躍の年となることを祈念致しまして、年頭のご挨拶とさせて頂きます。