牧野フライス製作所 田島軽金属などと共同で新素材「ATHIUM(アシウム)」を開発 ~従来のねずみ鋳鉄より60%の軽量化を実現~

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写真右から牧野フライス製作所 井上社長、田島軽金属 田島社長、ヒノデホールディングス木塚常務、日之出水道機器 浅井社長

 牧野フライス製作所が12月24日、田島軽金属、ヒノデホールディングス、日之出水道機器と共同で従来のねずみ鋳鉄より60%の軽量化を実現した新素材「ATHIUM(アシウム)」を開発したと発表した。

 持続可能な社会への貢献を目指すにためには素材からイノベーションを起こすことが重要であると考え、今回の共同開発がスタート。ヒノデホールディングスと日之出水道機器は、金属組織の制御手法を研究し、化学成分を最適化することで従来にない高剛性アルミ鋳造合金を、田島軽金属は鋳造法案の最適化を図った方案技術、クリーンな溶湯・注油管理を行う鋳造技術、バラツキを押さえる高度なプロセス管理、牧野フライス製作所は工作機械に活用した具現化技術など、それぞれの強みを融合させたことにより、ATHIUMの実現化に成功した。

共同開発に至った背景

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ATHIUMの名は4社の頭文字から命名(商標を4社共同で出願中)

 

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各種材料(材料提供:ヒノデホールディング、日之出水道機器)

 世界の工作機械市場変化について説明があった。それによると、市場規模約7兆円、国別生産高、国別消費高に関しては中国が世界1位となっている。日本の工作機械生産額は1982年~2008年まで27年間連続世界第1位を誇っていたが、2008年後半からの景気減速の影響を大きく受け、2009年に中国、ドイツに続く第3位にとどまった。その後、中国を中心とした新興国の旺盛な設備投資に支えられ、2010年にはドイツを抜き第2位に回復をしている。

 牧野フライス製作所は、「国の産業別での国際競争力を示す指数の貿易特化係数では、日本の工作機械産業は世界をリードできる国の基幹産業となっているが、工作機械業界は中国の台頭に加え、最大の需要家である自動車産業において100年に1度といわれる大変革期にあるなど大変厳しい競争にもさらされており、日本の重要な輸出産業としてさらに競争力を向上させていく必要があると認識している。加えてSDGsに向け製造業に関わるものとして工作機械の性能と効率を高め、地球環境への負荷を低減することも求められている。こうした中で工作機械の競争力の維持拡大、さらには持続可能な社会への貢献を目指すには、日本の技術を結集させて取り組む必要があるとの視野に立ち、素材から変革を起こそうという志を持って4社の共同開発がスタートした。」と今回の開発背景を述べた。

工作機械の競争力強化と持続可能な社会への貢献に向け日本の技術を結集

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説明をする牧野フライス製作所 土屋技術本部長

 従来、工作機械には〝ねずみ鋳鉄〟が使用されていたが、工作機械は高速で動きながら切削力を受けるため、強い剛性が必要とされている。また短い距離で往復運動をするという特長もあるが、例えばトランスミッションケースだと穴の数が非常に多く、この穴を俊敏に加工するためには加減速を繰り返さなければならず、止まるときのショックが大きい。工作機械にはカバーなど、様々なものがついており、そのため、急減速急加速を繰り返すと機械の信頼性が落ちてしまうという課題があった。

 工作機械にはボールネジがあるが、機械を軽くすることでこれを細くすることができ、そうすればイナーシャ(慣性の力)も小さくなり動かしにくさが軽減される。ところが、軽いと機械がゆられやすくなるため、従来は機械がゆられにくいよう大きなモータを使うことで剛性を確保していた。このように、製造現場で生産性を高めるためには、大きなモータで電力をどんどん使ってきた背景があるが、どうしても機械本体が大きくなるうえ、環境負荷も高くなってしまうが、牧野フライス製作所では〝特別な〟モーションコントロール技術を利用して、この揺られにくさを軽減する技術を有している。今回、4社で共同開発に成功した新素材ATHIUMの登場で、省エネも機械剛性も確保し、イナーシャをトータルで約50%も削減することができた。

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ねずみ鋳鉄とATHIUMの重量比較(材料提供:田島軽金属)

 これは機械の高速性を実現するとともに、社会課題でもある環境負荷低減にも大きく貢献することを意味している。ATHIUMの開発成功で、軽量化、高速性に加え、ピークの電流も45%削減し、環境負荷低減、省エネが実現するとともに、生産性は85%も向上した。

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田島軽金属 サンプル「スポーツカー用クラッチケース」

 

 このようにATHIUMの最大のポイントは、生産性と環境負荷の低減を両立していること。今後、牧野フライス製作所では、持続可能な社会への貢献として、生産性、環境負荷の低減を高度なレベルで組み合わせていくとしており、「グリーンのエコのジーとイノベーションと組み合わせて〝グリーノベーション〟として旗印を掲げ、差別化に取り組んでいきたい。」と意気込みを示した。

 

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意気込みを示す牧野フライス製作所 井上社長

 牧野フライス製作所の井上社長は、「これだけの軽量でねずみ鋳鉄とほぼ同じヤング率(ヤング率=フックの法則が成立する弾性範囲における同軸方向のひずみと応力の比例定数)を実現する夢の技術がついに出来た。弊社の役目はこの技術が工作機械ビジネスを通して世の中に実用化できることを証明していくことだが、この材料は単に工作機械のためだけに開発されたものではない。」と、ATHIUMが持つ潜在能力の高さを滲ませ、「ATHIUMはあらゆる高速移動体に適用できる特別な材料。これから日本がものづくり大国としてもう一度復活をかけ、打って出るための重要な技術要素なる。私たちはこの材料を活用し、工作機械に適用して、日本発のこの技術が非常に付加価値の高いものであり、高速移動体にも適応できるということを証明していく。ビジネスを成功に導くインフレーションの役目を私たちは担っている。これが私たち4社の日本のものづくりを元気のするわれわれからの発信です。」と、ATHIUMの発展性に意気込みを示した。


 

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