2020年(暦年)工作機械受注実績まとまる 日本工作機械工業会
日本工作機械工業会がこのほどまとめた「2020年(暦年)工作機械受注実績の概要は次のとおり。
受注額
〈概況〉
2020年の工作機械受注額は、2年連続の減少で、前年比▲26.7%の9,018億円となった。米中貿易摩擦や中国経済の低迷により工作機械需要が減少していたところに、新型コロナウイルス感染拡大による需要低迷の影響が加わり、国内外ともに減速し、10年ぶりの1兆円割れとなった。このうち、NC工作機械は、8,848億円(同▲26.7%)で、総額同様、2年連続の減少となった。受注額全体に占めるNC工作機械の比率は98.1%(同±0.0pt)と、前年と同率で5年連続の98%超えとなった。受注総額の内訳をみると、内需は3,245億円(同▲34.2%)、外需は5,774億円(同▲21.6%)で、外需比率は同+4.1ptの64.0%となった。
〈内需の動向〉
2020年の内需は、2年連続で減少し、前年比▲34.2%の3,245億円と8年ぶりの4千億円割れとなった。自動車等の低迷や米中貿易摩擦の影響で、300億円/月前後で推移していた年初から、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が出された4月、5月には全ての業種で受注が停滞し、5月には182億円まで落ち込んだ。宣言解除後の6月以降も、先行き不透明感から投資の慎重姿勢が続き、需要回復は緩やかで、自動車関連投資や半導体関連で受注の戻りが見られたものの、年終盤300億円/月前後と、年初の水準を回復するにとどまった。
業種別にみると、全11業種中、「官公需・学校」を除く10業種で前年割れとなり、主要4業種では「一般機械」同▲34.2%(1,331億円)、「自動車」同▲40.3%(834億円)、「電気・精密」同▲20.2%(343億円)、「航空機・造船・輸送用機械」同▲54.6%(111億円)となり、国内外で航空機需要が低迷した「航空機・造船・輸送用機械」の減少幅が最も大きくなった。
〈外需の動向〉
2020年の外需は、2年連続で減少し、前年比▲21.6%の5,774億円と11年ぶりの6千億円割れとなった。主要3極とも米中貿易摩擦等の影響などもあって、500億円/月前後で推移していた2019年後半から、国内同様新型コロナウイルスの影響により2020年初から更なる減少が続き、5月には330億円まで落ち込んだ。その後も感染拡大の収束が見られない欧州、北米では需要の回復ペースが緩やかなものとなったが、早期に感染拡大が収束した中国では、政府の支援策に加え、コロナ禍で拡大したテレワーク需要を取り込み、5月から前年同月を上回る回復を見せ、その後も年末まで拡大基調が続いた。その結果、外需総額でも年後半は、600億円/月を超える水準まで回復した。
地域別にみると、アジアは3年連続の減少となる前年比▲1.4%の2,916億円で、2年連続で3千億円を下回った。このうち、東アジアは同+13.0%(2,395億円)で、国・地域別にみると、韓国(同▲27.6%、185億円)や台湾(同▲20.0%、180億円)も年後半にかけて回復傾向がうかがえたものの、幅広い業種で拡大が続いた中国が同+23.5%の2,019億円と回復を牽引した。その他アジアは、2年連続減少となる同▲37.7%の521億円で、2年連続で前年比3割以上の減少となり、11年ぶりに600億円を下回った。電気・精密でスポット受注があったマレーシア(同+30.2%、69億円)を除き、域内すべての国・地域で前年割れとなった。しかし、インド(同▲39.8%、187億円)は、9月以降は前年同月比増加が続き、回復が進んだ。
欧州は、新型コロナ感染拡大の影響で主要国を中心にロックダウン等が実施された為、中国回復の恩恵を受けることも難しく、年間を通して回復速度が主要3極で最も遅く、同▲45.6%の963億円と2年連続で減少し、11年ぶりの1千億円割れとなった。国別では、2年連続ですべての国・地域が前年割れとなり、特にドイツ(同▲50.2%、196億円)、フランス(同▲55.1%、77億円)では、前年比半減以上の減少となった。
北米は、同▲27.4%の1,788億円と2年連続の減少で、10年ぶりに2千億円を下回った。他国・地域同様、新型コロナ感染拡大の影響により、5月を底に落ち込み、その後緩やかな回復が続いた。アメリカ(同▲27.5%、1,564億円)は、9年ぶりの2千億円割れ、カナダ(同▲42.2%、90億円)は10年ぶりの100億円割れとなった。メキシコ(同▲9.5%、133億円)は、自動車関連投資が見られ、一桁の減少にとどまった。
各地域別の受注シェアは、アジアが50.5%(同+10.4pt)、欧州が16.7%(同▲7.4pt)、北米が31.0%(同▲2.4pt)となった。早期に回復に転じた中国の影響で、アジアのシェアが大幅増加し、50%を超えた。国別シェアでは、1位が中国で35.0%(同+12.8pt、前年2 位)、2位がアメリカの27.1%(同▲2.2pt、前年1位)、3位はドイツで3.4%(同▲2.0pt、前年3位)、4位がインドで3.2%(同▲1.0pt 前年4位)、5 位が韓国で3.2%(同▲0.3pt、前年5位)と1位と2位の順位が入れ替わったものの、以降の順位に変動はなかった。
〈機種別の動向〉
受注額を機種別(含むNC機)でみると、全11機種すべてで前年比減少となった。主な機種別の受注額は、旋盤計が前年比▲31.1%の2,877億円で、2年連続で減少し、10年ぶりに3千億円を下回った。旋盤の「うち横形(同▲32.5%、2,632億円)」、「うち立て・倒立形(同▲10.3%、245億円)」はそれぞれ減少したが、立て・倒立形の減少幅は小さかった。また、旋盤計における「うち複合加工機(同▲25.1%、1,109億円)」は旋盤計よりも減少幅が小さく、旋盤計に占める複合加工機の割合も38.6%と前年から3.1pt上昇し、統計開始(2015年)以来の過去最高比率を更新した。
マシニングセンタは、「うち立て形(同▲9.6%、2,322億円)」、「うち横形(同▲31.2%、1,202億円)」、「うちその他(同▲17.3%、317億円)」と横形が最も減少幅が大きくなった。その結果、マシニングセンタ計は同▲18.3%の3,841億円と、2009年以来11年ぶりに4千億円を下回った。また、マシニングセンタ計における「うち5軸以上」は同▲32.7%(820億円)で、全体の減少幅より大きくなった。その結果マシニングセンタに占めるうち5軸の割合は、3年連続で20%を超えたものの、3年ぶりに低下した。
その他の機種では、FMS(同▲49.4%、167億円)、中ぐり盤(同▲48.0%、70億円)、研削盤(同▲39.5%、567億円)、専用機(同▲34.6%、148億円)が3割以上の減少となった。
販売額
販売額は前年比▲31.2%の1 兆336億円で、2年連続で減少し、7年ぶりの1兆1千億円割れとなったが、昨年までの受注残もあり、1兆円を維持した。うちNC 機は、同▲31.5%の1兆106億円となった。
機種別(含むNC機)にみると、全11機種全てで前年比減少となった。主な機種別販売額は、旋盤計が同▲34.4%の3,292億円、マシニングセンタ計は同▲28.5%の4,213億円となった。内訳を含めると、旋盤の立形・倒立形の「うち複合加工機(同+25.0%、118億円)」のみ前年を上回った。
受注残高
2020年末の受注残高は、前年比▲23.2%の4,308億円となり、2年連続で減少し、11年ぶりに5千億円を下回った。1月から減少を続け9月に4,194億円まで低下したが、10月、11月に微増した。当該年末の受注残高を直近3カ月(20年10~12月期)の販売平均で除した「受注残持ち月数」は5.0カ月で前年末から横ばいとなった。また、NC工作機械の受注残高は同▲23.4%の4,156億円となった。