キタムラ機械とドコモ 5Gで遠隔から工作機械の自動運転に向け共同開発を開始
キタムラ機械とNTTドコモ北陸支社は、3月23日、キタムラ機械本社(富山県高岡市)にて、5Gを用いて遠隔から工作機械の自動運転を実現する『Auto-Part-Producer 5G』の共同開発を開始したと発表した。今後、共同での技術検証等を経て、2023年4月の商用化を目指す。
『Auto-Part-Producer 5G』は、5G通信に対応した次世代工作機械の制御機能。穴開け・削り・ねじ立てなど様々な加工を1台で行える工作機械にNTTドコモのデータ通信5Gを用いて製造する部品加工プログラムを伝送することで、遠隔から全自動での部品製造を実現する。
従来は熟練者が専門の加工プログラムを作成する必要があったが、キタムラ機械は2018年に『Auto-Part-Producer®』を開発し、3Dの設計データを読み込むだけでマシニングセンタの自動運転を可能にした。しかし、近年は部品の複雑化に伴い3Dデータも大容量化したことから、高性能なデータ処理機能を工作機械一台一台に搭載する必要があり、依然として作業者は機械側での操作が求められていた。
『Auto-Part-Producer 5G』では、データ処理をクラウド上で行いながら、そのデータを5Gでリアルタイムに工作機械に伝送する。そのため、遠隔からの操作や複数の工作機械の制御を1人で行えるようになり、工場内の人手不足の解消にもつながる。また、工作機械自体に高性能なデータ処理機能を搭載する必要がないため、従来よりも3割程度安価に同機能が導入可能となる見込み。
今回の共同開発にあたり、ドコモはキタムラ機械の高岡本社工場を5Gエリア化し、2021年3月23日に共同開発拠点『KITAMURA Innovation Factory』(以下KIF)として開設した。今後はKIFにて2022年8月にかけて5Gを用いたクラウド処理とリアルタイム加工の技術検証を行い、2023年4月に『Auto-Part-Producer 5G』を搭載した次世代工作機械をキタムラ機械より提供する予定。
誰もが簡単にものづくりができる世界へ
キタムラ機械の北村彰浩社長は会見の中で、「現在、製造業は少子高齢化に伴う労働人口の減少や技術者不足の問題を抱えている。また、昨年から世界中でコロナ禍による人の往来の制限が続き、社会全体が厳しい状態となっている。このような状態の中で企業は業種を問わず、大変な思いをしている。当社は〝Machining Challenges-Simplified〟というラクラク簡単操作のマシニングセンタを2003年からスローガンに掲げ、経験や知識を必要とせず、誰もが簡単に高精度複雑加工ができる工作機械の開発を進めており、スマホの感覚で簡単操作が行われる工作機械を目指している。」と述べた。同社では、2008年には製造業のDXにすぐに対応できる世界初のアイコン制御のCNC制御装置『「Arumatik-Mi」』を開発している。
また、同社では、2018年にDXのコンプライアンスなど法令遵守をしながら実践できる顔認証機能付き制御装置であるマシニングセンタ、またAIによる自動運転ができる『Auto-Part-Producer』を発売している、(特許取得済み)。
北村社長は、「本年2021年にはマシニングセンタでまるで写真をスキャンするように加工ができる『Arumatik-Surface-Scan』の販売を開始し、次々と新技術を開発してきた。そして今後も『Auto-Part-Producer 5G』をはじめとした新技術を開発し続けていく。工作機械にロボットや計測機器を組み合わせたシステムをいかに提案し、世界中のものづくりにお役にたてるかを、このKIFにおいて実践し、画期的な独自マシンを提供していく。今後、移動が制限されてもオンラインで生産できるシステムの構築や後継者及び人材不足で苦慮している世界中の加工業者の負担を軽減できる先端技術とさらなるイノベーションを提供し、これから先、夢のような近未来の実現のために先端技術をもって貢献しいく。」と意気込みを示した。
また、NTT NTTドコモの佐藤隆明 執行役員 北陸支社長は、「ドコモでは5Gの商用化サービス開始以来、5Gを活用した地域課題、社会課題の解決に取り組んでいる。今回の発表は、北陸を代表する製造業の集積地であるこの富山の製造の現場にて5Gの活用をいただくという案件ではあるが、5Gを利用できる場所はキタムラ機械の工場に留まらない。5Gを搭載した次世代工作機械の共同開発と製品化で、キタムラ機械のお客様の現場にて5Gで利用して頂くものになる。キタムラ機械は工作機械の分野で世界最高水準の技術とノウハウを持っており、5Gエリアを活用して遠隔支援ツールを利用した保守サポートを実現し、私たちが目指す次世代工作機械に注目していただきたい。」と話した。