日本機械工具工業会 耐摩耗工具専門委員会 新規JIS規格を制定
日本機械工具工業会(会長=石川則男 オーエスジー会長兼CEO)の技術委員会では、その下部組織に製品別で専門委員会を設け標準化活動を行っているが、このほど耐摩耗工具専門委員会(委員長=齋藤 実 冨士ダイス 技術開発本部本部長付参与)が新規JIS規格を制定したと発表した。
新たに発行されたのは、「JIS B 0178 」(耐摩耗工具用語)および「JIS B 4054」(耐摩耗工具用超硬合金の材種選択基準)。齋藤委員長は、「用語を定義し、工具別の材料選択基準を設けることで耐摩耗工具を効果的に応用することが可能になる。今回のJIS制定が将来の産業分野を進歩させることを信じてやまない。」と期待を込める。齋藤委員長に規格制定の経緯や、新たなJISのポイントなど、お話を伺った。
新たなJISの注目点
あらゆるところで広く活用されている耐摩耗工具。この工具に用いられる超硬合金は、炭化タングステン(WC)を結合するためのコバルト(Co)で焼結結合した合金だが、齋藤委員長は、「これらの含有量を変化させることで、それぞれの産業分野に適した超硬合金をつくることができる。」と話す。齋藤委員長によると、耐摩耗工具の適応範囲が1990年から急速に拡大したのは、「有用な特性を有した超硬合金をつくり分けられることが分かったからであり、コスト削減の観点からも耐摩耗工具は重要視されている。」という。
また、近年は新素材開発も進み、単に工具の寿命を延ばすだけではなく、高精度であることも求められている。金型の材料も今回の規格化で応用しやすくなった。齋藤委員長も「ぜひ、注目してください。」と広く呼びかけている。
「耐摩耗工具が多岐にわたる分野で応用されるようになった結果、様々な超硬合金があるが、それを正しく選択していく指標は必要。したがって、業界規格に止めないで日本産業規格まで上げたのです。さらに高みを目指すためには、広がった用途(用語)を知り、用途に合わせて設計した合金を提案できる基準が重要と考えます。」(齋藤委員長)
今回の新たなJISの注目点は以下の通り。
(1)JIS B 0178 耐摩耗工具用語
①耐摩耗工具に関する一般用語、②用途によって耐摩耗工具を区別する用語(表2の用語及び図1~図8)③耐摩耗工具ごとに用いる用語に分けて定義した。定義だけではわかりにくいと思われる用語には模式図を示し、可能なものは加工の様子も示し、さらに用語の参考文献も示すことで利便性を高めている。また、解説には、なぜ超硬合金が耐摩耗工具に応用され、幅広い産業分野で用いられるようになったかを詳しく記している。
(2)JIS B 4054 耐摩耗工具用超硬合金の材種選択基準
新しい用語として他炭化物、結合相、バインダーレス、疑バインダーレス、WC粒度および硬さを定義した。さらに、結合相3種類、WC粒度4種類、硬さ8種類で組み合わされる 38種類の材種分類記号を規定し、表面摩耗する工具、衝撃の作用する工具、熱間で使用される工具、非磁性および/または耐食性を必要とする工具の別に、主な工具例に対する材種分類記号を充てる表として、材種選択基準を示した。また、解説には、超硬合金製耐摩耗工具の歴史 および CIS019D以前の規格制定の経緯も詳述し、先哲の偉業を記すとともに、材種分類記号の理由も記した。
齋藤委員長は耐摩耗工具の将来性について、「環境対応を考慮するとリサイクル性も含め増加するだろう。」との見解を示している。理由を尋ねると、「コロナ下においても、半導体関係に用いる工具素材およびカメラなどに用いるレンズ金型も堅調です。」とのこと。「これらの耐摩耗工具に用いる超硬合金はリサイクル性が高い。」とも。「今回のJIS制定で、さらに新しい用途に対しても効果的に応用することができ将来の産業分野を進歩させることを信じています。」と結ばれた。
なお、冊子(JIS規格)は日本規格協会で販売されている。
↓下記サイトから購入できる↓
https://webdesk.jsa.or.jp/