三井精機工業 ユーザー向けの工場見学会を開催
三井精機工業(社長=加藤欣一氏)が、3月17日(水)~19日(金)までの3日間、工作機械ユーザー向けの工場見学会を本社工場内精機棟Eラインで開催した。今回は、来場者会場内・出入り口付近に消毒液を設置したうえ、来場者全員に体温検査を実施するなど万全なコロナウイルス感染対策を実施した中での開催となった。加藤社長にお話を伺うとともに、工場見学会をレポートする。
カーボン・ニュートラルの普及による新技術開発に期待
コロナ禍の影響で、約1年ぶりにリアル展示会となった今回の工場見学会は、従来のプライベート展示会とは違い、開会式、セミナー、コンプレッサ工場の見学、協賛メーカーの展示、軽食の提供などの実施はなく、来場者も密を避けるために人数を制限したうえでの開催となったが、その分、じっくりとマシンを見学することができた。
今回展示されていたのは、プレシジョン・プロファイル・センタ『PJ812』、ジグ研削盤『J350G』、横形マシニングセンタ『HU80EX』、5軸立形マシニングセンタ『Vertex55XⅢ』、『Vertex100X』、5軸横形マシニングセンタ『HU80A-5X』、『HU100-TS』、ねじ研削盤『GSH200A』など。そして注目の新製品は、プレシジョンセンタ『PJ303X』と大型ジグ研削盤『J750G』の2機種。
加藤社長は、「昨年は行動が制限されましたが、機械を実際に見て頂きたかった。」と話す。1人の営業担当者がこの見学会で対応するのは1日に2組ほどとのこと。本気で同社のマシンに惚れ込んでいる来場者が見学している様子を感じた。
航空機産業にも貢献している同社では、コロナ禍による影響は大きかったようだが、加藤社長は、「今後はワクチンが行き届いてくれるので、人の往来が出てくるはずです。米国では新型コロナワクチン接種を加速させると発表し、5月末までに成人分のワクチンを確保するとしています。欧州もワクチンの生産を拡大する方針なので、ヨーロッパとアメリカが自由に行き来できれば、航空機産業の需要は出てくるでしょう。現在、航空機産業の回復の遅れが懸念されていますが、実際にはもう少し回復が早いだろうという印象です。」と率直な感想を述べてくれた。さらに明るい材料としては、「現在、カーボン・ニュートラルの普及に向け、様々な取り組みがなされています。航空機はエンジン開発が加速すると思うので試作に動きが出ると見ています。なぜならエアラインは損益の中で燃料費の存在が大きいこともあり、省エネの飛行機は今後の需要が期待されます。企業の根本的な利益創出の面にも貢献できると見込んでいます。」との認識を示した。
注目機種は2機種! プレシジョンセンタ『PJ303X』と大型ジグ研削盤『J750G』
目玉のひとつであるプレシジョンセンター『PJ303X』の主な特長は最新の主軸熱変位補正機能を標準装備していること。特殊熱変位キャンセル機構による主軸・ヘッドの熱変位の大幅な抑制もでき、左右対称門型コラム構造で熱変形対策をしている。回転式2段扉で正面操作扉の開口幅が広くなり、操作性もさらに良くなっている。
一方の大型ジグ研削盤『J750G』を見学。『J750G』の特長は、なんといってもX軸1530mm、Y軸1020mmで、同社調べによると、カタログにある世界の主要なジグ研削盤の中でも最大のストロークをもっていることだろう。U軸ストロークは-3~+50mm。さらにATCで砥石を交換することで、1本の砥石で異なる穴径の連続自動加工が可能なのだ。また、(オプション)主軸自動計測装置、研削プログラム作成支援画面(G-MAPS)、15インチタッチパネル式の操作盤により、作業性、操作性が向上しジグ研削加工の自動化を実現している。
また、同社では〝きさげ〟による徹底的な作り込みでも有名だが、同社のジグ研削盤は、同社でも〝きさげ〟が一番細かいという。その細かな〝きさげ〟により、X軸はV-Flatきさげ修道面に精密ニードルローラを入れ、微細送りに正確に追従している。また、自動化も実現しており、自動加工で穴径誤差は1μm以内を達成しているというから驚きだ。
さて、工場見学会だけあって、工場内には普段は見ることのできないマシンも展示されているが、X軸ストローク2.5mの大型機にもかかわらず、ミクロン台の加工精度を実現した次世代大型ジグボーラー『J1625』が展示されていた。大きなマシンなのに、扉の開け閉めは至ってスムーズ。力が弱い方でも安心して作業ができる嬉しい点を発見した。
人気の5軸制御立形マシニングセンタ『Vertex100X』も展示されていた。このマシンは、最小の設置スペースで最大の加工エリアを実現しており、温度センサーの増設・補正アルゴリズムの改善により、Z軸方向の熱変位が従来機の1/3に減少している。
さらに、ここでは自動的に切削工具の先端にクーラントノズルが追随する画期的な仕組みを拝見(オプション)。切削工具が長ければ切削油も当然、掛ける位置が変わらなければならないが、プログラムによってノズルの向きを自動で調整することを実現し、吐出方向を手動で調整する手間を省ける。しかも、クーラントのみならずエアの吐出にも利用可能であるというから嬉しい。
↓ノズルが動く様子はコチラの動画へ↓
ジグボーラーの高精度位置決め加工とマシニングセンタの高精度輪郭形状加工の2つを兼ね備えたPrecision Profile Center『PJ812』が展示されていた。同社が〝究極のマザーマシン〟と自負しているだけあって、加工サンプルからもマシンの魅力が伝わってくる。
ボーリングの仕上げは通常、径がバラついてしまうので最後はオペレータが寸法を測って、ボーリングをセットし直して加工をするという手間がかかるイメージがあるのだが、 このマシンは、高いコンタリング精度がエンドミルでの真円切削による高精度穴加工の自動化を実現している。これにより、エンドミル加工で代替が可能になったのだ。工具長自動測定装置や主軸タッチプローブとの組み合わせで穴径寸法の管理が可能になり、高精度な穴加工の自動化を実現している。また大型プレートの穴ピッチ精度は±2.5ミクロン以内というから頼もしい。
なお、同社では、4月14日(水)~17日(土)の4日間、東京ビッグサイト青海展示棟にて開催される「INTERMOLD2021」に、今回見学した新機種プレシジョンセンタ『PJ303X』と、ジグ研削盤『J350G』の2台に加え、トップランナー規制対応モータを採用しインバータ制御で省エネ・高効率のオイル式コンプレッサ『ZV22AX-R』を展示する。