「INTERMOLD2021」をレポート!
日本金型工業会、日本金属プレス工業協会が2021年4月14日(水)~17日(土)の4日間、東京ビッグサイト・青海展示棟にて金型・金属プレス加工の専門見本市「INTERMOLD2021/金型展2021/金属プレス加工技術展2021」(運営=インターモールド振興会)が開催された。出展した注目メーカーの趣向を凝らした展示内容と新技術をレポートする。
(あいうえお順:イワタツール、キタムラ機械、芝浦機械、大昭和精機、ダイジェット工業、日進工具、牧野フライス製作所、三井精機工業、MOLDINO、安田工業、碌々産業)
お客様は加工速度を求めている! 日本初披露のisd工具も展示
●イワタツール
人気のトグロンシリーズを展示していたイワタツール。同社の岩田社長によると、「最近のお客様は加工速度を求めています。その理由のひとつには働き方改革があり、加工を早く終わらせなければならない流れを感じています。」とのこと。中でも精密・高速面取りの「トグロン®マルチチャンファー」は面取り速度を2~3倍アップできることから人気が高い。同社では機能をひとつに特化しているマニアックな製品で、加工現場のコストダウンに応えるための工具を提供するとしている。
もうひとつ、同社で目を引く展示があった。イワタツールの中国工場〈岩田精工(大連)有限公司〉で生産している「THE NEXT-GENERATION TOOLS」だ。日本でも売りたいと初披露していた。ただし、これは日本のイワタツール製品ラインナップとは違うタイプのものなので、岩田精工(大連)有限公司の製造・販売(通称:isd)で営業展開するという。岩田社長は、「日本のイワタツールは特殊な用途に活用する工具が多いが、これらは一般的な用途に使うものが多い。材料は中国製だが品質管理については日本の品質管理と全く同じ方法で実行している。」と説明してくれた。今回の展示は日本においてリサーチ目的で展示したとのこと。日本におけるisdの活動に期待したい。
この1台で集約加工が実現!
●キタムラ機械
製造現場のニーズは高付加価値製品を低コストかつ短納期で生産し、経済効果を高めることだが、今回同社が展示していた「MTSENTER® SUPER MICRON®」は材質や工程ごとによる加工機の使い分けを無くすことを実現するマシンだ。快削材から難削材までワーク材質にかかわらず、荒加工から仕上げ加工までこの1台で集約加工が可能になる。しかも設置面積2,040mm×2,065mmと省スペース設計であることもポイント。さらに細かな点に気付く同社らしい設計はこれだけではとどまらず、工具段取りスペースと定期メンテナンス箇所を本体側面に集中配置することで作業者の負担を軽減している。
最も注目したいのは、低速から高速行きまで幅広い回転レンジで高精度加工が可能な40,000回転主軸(HSK-E32)搭載であること。この40,000回転の高速主軸には転がり軸受けを採用したことにより主軸剛性の向上を実現している。温度調節された冷却油を常に主軸の内部・外部に循環させる同社独自の〝主軸冷却システム〟による主軸の振れや伸びを最小限に抑える技術が搭載され、精密金型など長時間加工においても抜群の安定性を確保する。
新開発の「FormEye(フォームアイ)」に大注目!
●芝浦機械
超精密マシニングセンタ「UVMシリーズ」が展示されていた。このマシンは自社製の高精度空気静圧軸受け主軸に特長がある。標準主軸は「ABC-40M」だが、新しくオプションで高剛性・高トルク主軸「ABC-50M」が登場。重切削条件はメーカー推奨値の3倍! さらに今回、最新のソフトウェア技術も新登場していた。特に加工ターゲットに合わせた機上測定機能に注目したい。これは工具の形状を正確に測る技術である。
今回新開発された撮像式工具形状測定器「FormEye」について、同社の工作機械技術部に所属する室伏主任は、「工具の形状を測定するだけではなく、測った形状データをどう生かすかが重要です。形状誤差が出てくるものですが、実加工のときに補正する開発し、摩耗した工具でもどれだけ摩耗したかを測り直すことによってそれに合わせて加工が進むようになっています。」と説明をしてくれた。これは製造現場のトレンドである自動化を睨んだものであり、ボタン一つで実行できる簡単操作も魅力のひとつ。これにより工具切れ刃の輪郭誤差に起因する形状不良は寸法不要を回避! 面倒臭いNCデータ再作成作業を回避してくれるありがたいシステムだった。
BIGの心遣いを感じる製品群が目白押し
●大昭和精機
ファンの多いBIGらしく豊富な製品群で来場者を魅了していた同社。好調な小型旋盤を意識してかスイス型自動旋盤用「ハイドロチャック レースタイプ」が展示されていた。この製品は小型NC旋盤用のコンパクト設計で、省スペースでも簡単に工具交換ができることが特長。狭い箇所でもホルダ外径が小さく、隣接する工具との干渉を抑えられる仕組み。レンチ1本で簡単着脱できることが嬉しい。ホルダを外さず、男性の大きな手でも狭い機内において工具交換ができるという、BIGならではの心配り溢れる製品であり、重宝するだろう。
同社の広いブースで目立っていたのはツールプリセッタ。「STPマジス」は、非接触式の高精度カメラ画像処理方式でありながら、正確・確実な工具の測定が出来る製品で、操作性に優れているのも優位性のひとつ。非接触なので小径工具やダイヤモンド工具の測定も刃先を痛めず、自動認識のため、素早く測定できる(最小測定工具径φ1mm)。ツールの機外測定により、マシニングセンタの稼働率を向上させることを狙いとした商品だ。このほかにも、微細加工機用ツーリング用の中に、焼きばめチャック「SRMタイプ」と焼きばめ装置「スマートヒート」が展示されており、こちらも見逃せない!
自動化に貢献! 加工の段取りまで提案していた!
●ダイジェット工業
高剛性〝6コーナ〟仕様の高能率肩削りカッタ〝エクストリームシリーズ〟より新製品「ショルダー6」が展示されていた。軸方向切り込み量最大10mm可能の高能率さが特長で、平面削り・溝削り・プランジ加工など幅広い用途で使用できる工具だ。高能率・高精度な立壁加工の鍵を握る仕組みは、外周切れ刃奇跡を円弧状にすることで大きな軸方向切込み量でもカスプハイトが小さく押さえられる設計によるもの。独自の3次元インサート形状により、本体アキシャルレーキがポジの角度を有するため、切削抵抗の低減を実現している。
もうひとつ興味深かったものは、同社のブースにて機械段取りを革新的にするTMWの「FCS System」が展示されていたこと。これは、ワークを固定するためのクランプ治具で段取り工程のシステム化を推奨するもので、1回の段取りで5面加工が可能であり、段取り回数の削減が実現するという。専用ソフトウェアを活用することで、簡単に段取りを設計でき、干渉チェックもできるので、製造現場のトレンドでもあるスマートファクトリーを構築し、工場のオートメーション化に貢献する。
6月発売予定の5軸MC加工用3枚刃ボールエンドミルが新登場!
●日進工具
多くのファンを獲得している同社が展示していたのは、今年6月発売予定の5軸マシニングセンタ加工用3枚刃ボールエンドミル「MSBSH330-5X」。3枚刃・高剛性形状により5軸加工機の特長を活かした高精度・高能率加工に貢献する製品だ。60HRC以上の高硬度鋼にも適応できる。(全8サイズR0.1からR1)。この工具は不等分割のため、5軸加工でも嫌なびびりを防止している。また、5軸マシンに最適な工具なので、5軸加工のメリットを最大限に活かすことができるよう、切削速度ゼロを回避した剛性の高い刃形状になっている。
また、同社の工具が入っているケースにQRコードがついているが、これを読み取れば、加工事例が分かる「NSコネクティッドサービス」を展開している。工具の特長や規格表、加工切削条件、加工動画を見ることができ、便利なサービスとなっている。
美しいブースの中で金型加工のDX化を推進
●牧野フライス製作所
今回は金型加工のDX化をパッケージにして提案しており、時代にマッチした展開をしていた。デジタルマーケティング部の長友部長は、「リアル展示会はお客様からご意見をいただくチャンスです。」とリサーチに目を光らせつつ、「今回は皆様から認知されているVシリーズに、現在持っている技術を全てつぎ込んで追求しました。」と話してくれた。機械構造を見直し、高精度な位置決めやクオリティの高い加工面などはもちろん、時代に合致した3軸機のニーズに応えて開発されたコンセプト機だ。
最も注目したいのは新しいソフトウェアを追求した点だ。初心者でも操作できるインターフェース「ATHENA(アテナ)」は、音声でマシンを制御できるシステム。ざっくりいうとiPhoneなどにある「Siri」と同じ感覚で話しかけると対話ができるので、経験の浅い方がマシンの操作方法を忘れた時でも、ATHENAに話しかければ教えてくれる。また、マシニングプロセッサの活用で、CADデータを入れるだけで加工ができる機能もあった。自動で工具のパスを出して、干渉の有無もシミュレーションができ、すぐにプログラムができるという。長友部長は、「お客様はオリジナルのノウハウや熟練の神業を持つ技能をお持ちですが、現在、こうした最高の財産をどうやってデジタル化していくかが問われています。加工ノウハウをクラウド上のデータベースに蓄積できればそのノウハウを継承したパスを出すこともでき、経験の少ないオペレータの方でも熟練の方と同じような品質を出せる可能性を秘めているのです。」と説明してくれた。熟練者が減少している今、加工の道筋をつけてくれるシステムは心強い!
世界最大の砥石自動切り込みストロークを実現!
●三井精機工業
真っ直ぐ動く、直角に交わる、平面が出ている―――-同社では工作機械の基本精度をしっかりつくり込むことを重要と考え、主要部品はきさげによる徹底的な作り込みをしている。今回は新製品のプレシジョンセンター「PJ303X」に注目が集まっていた。このマシンは徹底的に熱変位対策をしている点に注目したい。最新の主軸熱変位補正機能を標準装備し、特殊熱変位キヤンセル機構による主軸・ヘッドの熱変位の大幅抑制、さらに左右対称門形コラム構造は、熱変形を考慮した設計である。また、主軸ヘッドを極力重心位置に近づけ、確認作業の視認性が良いというメリットを生み出している。
他にも、世界最大の砥石自動切り込みストローク(U軸)-3~+50を実現したジグ研削盤「J350G」を展示。1本の砥石で異形穴を連続自動加工することが可能なマシンだ。また、研削プログラム作成支援「G-MAP」は同社独自開発のもの。必要なデータを入力するだけで加工プログラムを自動生成してくれるうえ、最新のHMIを搭載した15インチのタッチパネルの採用で操作性も抜群である。
面倒だったねじ切り加工もNC自動化に!
●MOLDINO
新商品は、人気の超硬ねじ切りカッターシリーズに長いタイプ「ET/EDT」が登場! 同社の事業戦略本部の三枝氏は今回のラインアップ追加について、「この製品は、隅のねじ加工の時に干渉することなく綺麗にねじ穴が加工できるものです。また、面取り工具「DN2HC」と、ねじ切り工具「ET/EDT」を使うと、従来、手作業で行っていたねじ切り加工もNC自動化を実現することができます。」と教えてくれた。
そして今回、目をひいたのは参考出品で展示されていたL/D50のロングドリル、超硬ノンステップボーラーシリーズ「50WHNSB」だ。三枝氏によると、「ダイカスト金型の冷却穴用のニーズがありますが、冷却穴はクロスをしているなどの形状から加工が難しい。折損や不具合も多いと聞いており、お客様の悩みに対応するための製品として展示しています。ものすごく綺麗に加工ができます。」とのことで、市場投入が待ち遠しい一品だった。
フラッグシップ機がさらなる進化を遂げてた!
●安田工業
今回は立形5軸マシンのフラッグシップモデルである「YBM Vi40」が「YBMVi40 Ver.Ⅲ」としてバージョンアップ! BC軸にDDモータ駆動と高回転精度軸受けを採用し、B軸連続運転時の熱変位を1/3に軽減していた。また、ワーク積載時の変化量を従来機の1/2に削減している。細かいところをみると、機械後部のステップを廃止したことにより設置面積を20%削減することに成功(標準タンクの場合)し、ワーク下部の制限廃止を実施したことでφ500ワークの搭載も可能になっている。正面や右側面からのアプローチが可能になったことで接近性がアップ。より作業がしやすくなり、ユーザーフレンドリーなマシンとなっていた。
さらにより使いやすくなったインターフェイスにも注目したい。FANUC iHMIを採用し、操作性の向上と高機能化を実現している。高精度加工機能FAS-4には荒加工モード・仕上げ加工モードなど基本になる5つのモードを準備し、加工時間の短縮や、加工精度を向上させることができる。また、嬉しい加工支援画面では、5つの基本加工モードを選択することや加工条件に合わせてモード毎の加工パラメータを微調整することができる。これらにより、面品位と加工精度向上、演算速度が速くなる点から、より高速高精度加工が可能になった。
実加工精度±1μm以下の追求
●碌々産業
展示していた「AndroidⅡ」は、ユーザーからの要望に応えて進化した次世代マシン。熱変位量を極限まで抑えてさらなる高精度加工を達成するために改良した製品だ。具体的には、主軸と各軸(X,Y,Z軸)リニアモータまわりの換気効率を強化することでY軸方向熱変位を低減し、発熱の元であるガイド部の冷却により長時間の高精度維持を実現。これにより、熱変位対策を徹底強化していた。さらに完全自動化連続運転を可能にする独自の切屑処理対策も構築しており、時代に合致したマシンとなっている。なお、「AndroidⅡ」に、最上級の加工面品位を追求した特殊主軸搭載機〝Type-s〟もラインナップしている。このタイプは、金型の鏡面加工を切削加工のみで実現し、飛躍的な面粗度の向上とともに工程短縮に貢献するもの。
また、同社では微細加工機専用に開発されたIoTプラットフォーム「RCMS(ROKU-ROKU Cloud Monitoring System)」に接続し、監視・管理・予防保全などを行う「AI Machine Dr.」も提案していた。「RCMS」につなげることでネット経由にて機械の状態が遠隔地からでも確認できる。