2021年度(令和3年度)機械工業生産額 70兆5371億円(前年比8.9%増)の見通し 日機連

 日本機械工業連合会がこのほど2021年度(令和3年度)生産額見通しをまとめた。
 

 これによると、わが国の2021年度の機械工業生産は持ち直してきているものの、足元では回復の動きが弱まっている。新型コロナウイルス感染症の影響により、リーマンショック以来の低い水準だった2020年度から回復しつつある中で、供給面では世界的な半導体供給不足、サプライチェーンの混乱等による東南アジアを中心とした部品供給の遅れが下振れ要因となっている。下期は受注が積み上がっている品目も多いことから、部品の供給の遅れが解消されれば、生産額の増加が期待できる。他方で、新縣コロナウイルス感染症の状況に加えて、大口輸出先の中国経済の動向、原油等の資源価格の上昇等の要因が懸念材料である。

 こうした中、2021年度の機械工業生産額は全体では前年度比8.9%増の70兆5371億円となる見通しである。

2021年度(令和3年度)生産動向

■一般機械
 一般機械の生産額は前年度比(以下同様)10.9%増の15兆8169億円となる見通しである。機種別にみると以下のとおり。「ボイラー・原動機」は、ボイラー・タービンが国内は大型バイオマス発電向けが一巡するものの、国内、輸出友に維持・更新での需要を見込み、はん用内燃機関はガソリン機関が減少、ディーゼル機関、ガス機関は増加を見込み、ボイラー・原動機全体で7.7%増。「土木建設機械」は、主力機種の油圧ショベルを中心に、国内は公共投資の下支えがあり、輸出は主要な需要先である北米、欧州、アジア向けのいずれも増加を見込み、14.2%増。「化学機械」は、国内が食品、医療関連向けは堅調なものの、輸出は石油。ガス関連向けの減少を見込み、5.0%減。「合成樹脂加工機械」は、国内、輸出友に電子部品・デバイス、自動車関連向けで堅調を見込み、10.0%増。「印刷・製本・紙工機械」は、国内が厳しいものの、輸出は主要な北米、中国向けを中心として回復することから、印刷、製版、製本、紙工機械のいずれも伸びを見込み、8.2%増。「ポンプ・送風機・圧縮機」は、国内が官公庁向け、輸出は電子機械産業向けが需要を下支えし、5.0%増。「油空圧機器」は、油圧機器が土木建設機械向けは落ち込むモノの、輸出が回復、空気圧縮器は半導体製造装置分野でのメモリ関連向けの需要が継続すると見込み、全体で7.7%増。「運搬機械」は、輸出が自動車、電子部品・デバイス向けに加え、搬送設備の需要やクレーン更新需要も好調で、15.0%増。「ロボット」は、自動車向けが不透明なものの、中国向けや半導体向けが好調で、欧米や国内の需要も回復すると見込み、12.9%増。「動力伝導装置」は変速機は受注が持ち直しで増加、歯車は大幅増、スチールチェーンは伝動用、搬送用、自動車用等、いずれも大幅な増加を見込み、全体で20.7%増。「農業用機械器具」は、国内が消費税増税前の駆け込み需要の反動減からの回復と経営継続補助金の影響により増加、輸出は北米向けが好調、欧州向けは回復による増加を見込み、全体で25.0%増。「金属工作機械」は、上期が中国向けを中心として回復し、下期は旺盛な需要は続くものの半導体等の各種部品の供給逼迫により弱含む可能性もあると見込み、年度では18.0%増。「第二次金属加工機械」は、せん断機等が前年度の反動減により減少を見込むものの、機械プレス、液圧プレス等は回復により増加し、全体で18.4%増。「繊維機械」は、化学繊維機械が減少するモノの、紡績機械、準備機械、織機、編組機会等は回復による増加を見込み、全体で45.2%増。「食料品加工機械」は、乳製品加工、飲料加工、肉類加工業界向け等が微増、製パン・製菓、水産加工業界向け等で減少を見込み、全体で1.5%減。「包装機械・荷装機械」は、国内が引き続き厳しい者の、輸出は米国、アジア向けで回復を見込み、0.2%増。「木材加工機械」は、油種木材の減少による国産材使用の伸びによる増加に期待でき、15.0%増。「事務用機械」は、海外での現地生産の進展により国内生産は縮小傾向にあるものの、複写機の回復を見込み、2.9%増。「ミシン」は、家庭用ニシン、工業用ミシン共に前年の激しい落ち込みからの回復が期待でき、全体で70.8%増。「冷凍機・同応用装置」は、エアコンディショナ等の比較的高水準の生産が続いていた品目の減少や、半導体不足による生産鈍化を見込み、全体で4.5%減。「半導体製造装置及びFPD製造装置」は世界的な半導体不足によりレガシーへの投資意欲も強く、引き続きロジック、メモリ、ファンドリ向けのいずれも好調で、19.1%増加の見通しである。

■電気機械
 電気機械の生産額は、前年度比(以下同様)4.9%増の7兆6275億円となる見通しである。機種別にみると以下のとおり。「回転電気機械・静止電気機械器具・開閉制御装置」は、回転電気機械のうち交流電動機、小形電動機は減少するものの、サーボモータが国内、輸出共に電子部品、半導体産業向け等が増加、静止電気機械器具のうち変圧器は国内電力向けが減少、電力変換装置は国内の太陽光発電用パワーコンディショナが回復、サーボアンプも増加、開閉制御のウチ検視制御装置は国内が回復、低圧開閉器・制御機器は中国を中心とするアジア向けの回復により増加。閉鎖形配電装置は首都圏再開発による需要の一段落により減少を見込み、全体で0.9%減。「民生用電気機械」は、消費者の健康・清潔に対する意識の高まりや巣ごもり需要により、大容量、高機能、高付加価値製品を主体に比較的堅調なものの、近年は高水準な生産が続いてきたことから、今年度は減少を見込み、3.7%減。電球は、中国向けの輸出に期待できるものの、引き続き生産拠点の海外シフトや光源一体型LED照明器具の普及に影響を受け6.0%減。電気計測器は、電気測定器が半導体製造装置向けで大幅増、電気計器、工業用計測制御機器、環境計測器は微増を見込み、全体で17.3%増加の見通しである。

■情報通信機械
 情報通信機械の生産額は、前年度比(以下同様)0.7%減の2兆6308億円となる見通しである。機種別にみると以下のとおり。「民生用電子機器」は、薄型テレビが減少するものの、デジタルカメラ、カーナビゲーションシステムは増加を見込み、全体では12.3%増。「通信機器」は、有線通信機器のうち有線端末機器が在宅需要等による購買意欲の高まりにより電話応用装置が増加、有線ネットワーク関連機器の交換機、搬送装置は5Gに対応した基地局構築への投資シフトにより減少、有線通信機器部品は多機能携帯電話向けの輸出が増加、ネットワーク接続機器は設備投資や更新需要の回復を見込み、一方、無線通信機器は多機能携帯電話、基地局の増加が見込まれるものの、無線応用装置は減少が見込まれ、通信機器全体では1.4%減。「電子計算機及び関連装置」は、モニタが微増、記憶装置、プリンタは増加、パソコンはテレワーク等のリモート化によるモバイルノート型の需要があるものの、法人需要の一段落により減少を見込み、全体で4.8%減少の見通しである。

■電子部品・デバイス
 電子部品・デバイスの生産額は、前年比(以下同様)12.6%増の7兆1646億円となる見通しである。世界的なデータ通信量の急増によるデータセンターの拡張や増強へのニーズの高まり、ネットワーク環境の高度化、5Gやローカル5G対応の進展による新たな需要、自動車の電装化やEV化等による、小型・薄型・省エネルギーに貢献する高信頼性電子部品や半導体に対するニーズの高まりにより、「電子部品」は14.4%増加、「電子デバイス」は11.2%増加の見通しである。

■輸送機械
 輸送機械の生産額は、前年度比(以下同様)8.9%増の30兆5512億円となる見通しである。機種別にみると以下のとおり。「自動車」は東南アジアでのロックダウンによる部品供給の遅れや半導体不足による減産・生産調整があるものの、受注は堅調であり、上期は厳しく、下期は回復を見込み、自動車全体では7.0%増。「自動車部品」は、自動車生産台数の回復により部品も増加を見込み、17.1%増。「産業車両」は、国内が旺盛なeコマース需要等による物流施設の新設や効率化による需要増、輸出も回復を見込み、全体では14.5%増。「鋼船」は、受注が回復しているモノの、創業の回復は先を見込み、2.1%減。「航空機」は、長距離路線を中心に航空輸送需要減が続いており、官需が多く占める機体、発動機は増加するものの、民需が多くを占める発動機部品は厳しかった前年度から微増、機体部品及び装備品のうちの民需が大幅に減少し、全体では5.9%減少の見通しである。

■精密機械
 精密機械の生産額は、前年度比(以下同様)6.9%増の1兆3174億円となる見通しである。機種別にみると以下のとおり。「計測機器」は、計量機器が国内、輸出共に回復を見込み9.6%増、化学・精密測定器は半導体向けを中心に受注が堅調に回復しており22.7%増、分析機器は医用検査機器の輸出が減少すると見込み2.3%減、計量機器はインフラ整備の関連工事向けの需要が堅調で16.1%増、計測機器全体で3.2%増。「光学機械」は、写真機が19.7%増、望遠鏡・顕微鏡は生物顕微鏡、半導体関連市場向けが堅調な工業用顕微鏡のいずれも回復が見込まれ8.7%増、全体では18.7%増加の見通しである。

■金属製品
 金属製品の生産額は、前年度比(以下同様)6.4%増の2兆8697億円となる見通しである。機種別にみると以下のとおり。「ばね」は、前年度後半からの回復が続くと見込み、15.9%増。「機械工具」は、特殊鋼・超硬工具が主要な需要先の自動車、工作機械向けが堅調で、輸出も回復を見込み27.1%増、ダイヤモンド/CBN工具はグラインディングホイール、CBN工具等全ての品目で回復を見込み25.2%増、機械工具全体で26.8%増。「バルブ・コック・鉄管継手」は、電力、建設設備向けが減少、半導体関連向け、非接触操作型水洗は増加を見込み、全体で5.8%増。鋸刃・機械刃物は、機械刃物、丸のこ、帯のこのいずれも回復を見込み14.6%増加の見通しである。

■鋳鍛造品
 鋳鍛造品の生産額は、前年度比(以下同様)12.8%増の2兆5589億円となる見通しである。機種別にみると以下のとおり。「粉末冶金製品」は、6.5%増。「鍛工品」は、自動車、産業機械向け等のいずれも増加を見込み、9.2%増。「可鍛鋳鉄・精密鋳造品」は、14.0%増。「非鉄金属鋳物」は、19.9%増。「ダイカスト」はm12.5%増加の見通しである。
 

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