【工作機械編】「メカトロテックジャパン2021」でみた各社の動向

 去る10 月20 日(水)から10 月23日(土)までの4日間、ポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)で「メカトロテックジャパン2021(通称MECT) 」(主催=ニュースダイジェスト社)が開催された。業界としては、久しぶりの大型リアル展示会ともあって、大いに賑わいをみせた。工作機械は自動化・省力化による工程短縮による高能率化に貢献するものや環境に配慮したマシンも目立った。また、今回は来場者に訴求するための手法も従来とはひと味違う独自性も見られ、新たな〝 見(魅)せ方〟を見ることができた。

 前編は「工作機械編」、後編は「切削工具・周辺機器編」の2回に分けて掲載する。

211122工作機械編1 アマダグループ
BREVIS(ブレビス)-1212AJ

 アマダグループでは、アマダマシナリーからが業界初の独自の撮影技術を活用したデジタルプロジェクターを搭載したデジタルプロファイル研削盤「DPG-150」が展示され、EVや通信業界における部品の小型化に加え、要求精度の高度化も加速していることから注目を浴びていた。また、アマダからは、板金切断用オールラウンドファイバーレーザマシン「BREVIS(ブレビス)-1212AJ」が展示された。このNC装置には、スマートフォン感覚で簡単に操作できる「AMNC 3i」を搭載し、ラクラク操作がウリだ。注目したいのは、ファイバーレーザマシンでありながら、コンパクト設計だったこと。〝1工場に1台、道具のように使えるマシン〟の登場に来場者は足を止めていた。

211122工作機械編2 重切削&高剛性のイメージで来場者を魅了するOKKには人だかりができていた。今回、新機種「VM53RⅡ」が展示されていた。これは同社の看板機種であるVMシリーズのモデルチェンジ。機械構成要素として生産が可能となるよう設計レベルの見直しを進め、リードタイムを従来比約2/3に短縮している。特に強化したのは、日常点検機器を背面のメンテナンスパネルに集中配置したことで、保守作業をラクにして作業効率のアップを図ったこと。嬉しいことに正面扉上部の開口を拡張したことで、旧モデルでは天井部にあった扉開閉のレールもなくして、クレーンのワーク積み下ろしもスムーズにできるようになっていた。さらに進化を遂げたVMシリーズに要注目!

211122岡本工作機械製作所 岡本工作機械製作所は、汎用ハンドル作業とNC操作の両立をコンセプトにした一石二鳥のマシン、「HPG500NC(R/L)ハイスピードストローク仕様」が展示されていた。非常にコンパクトな設計に目を奪われる。このマシンは金型パンチのカキアゲ研削などに必要となるテーブル左右高速反転仕様になっており、反転速度&反転精度が向上した仕様だ。直感的に寸法測定が行える机上測定装置「Quick Touch」を新たにオプション化していたことも要注目! 専用プログラムは不要で、直感的にチャック上の被削材に計測器を当てるだけで画面上に数値が反映される仕組みだ。実際に触ってみると「すぐに使いやすさが分かります!」と担当者も自信満々。また、昨今の時流から、〝エコな研削盤〟を前面に押し出している。油圧レスにより、サステナブルな生産をサポートしてくれる。

211122工作機械編4 黒田精工 〝究極の操作性〟を前面に押し出した黒田精工は、「GS-45V」を展示。高い汎用性を備えつつも、全自動の加工も可能な研削盤だ。省エネ・省スペースをうたっているだけあって、非常にコンパクトな設計となっている。注目したいのは、〝単独常温潤滑給油〟により、長期間良い状態で使用できること。嬉しい仕組みに設備導入後の負担と環境負荷を同時に軽減する技術が搭載されていた。なんと消費電力が約60%もダウンするという。具体的には左右送りにACサーボモータを採用し、自社製の精密ボールねじダイレクトドライブ聞こうにより左右位置決め精度が向上している。また、温度影響も、油圧レス機構のため、機械本体の温度変化を大幅に抑制してくれる。

211122工作機械編5 芝浦機械 これは便利! という技術をみせてくれた芝浦機械。今回注目したのは、高速・高精度に磨きをかけたUVMシリーズの上位機種である「UVM-450D(H)」。今回は「お客様にラクをしてもらおう!」という加工ノウハウを提案していた。工具は設計値に対してズレていることもあり同じ製品の工具で加工していても結果が変わるという課題があった。そこで同社ではこれら顧客の悩みを払拭すべく、自社製の工具形状測定器「フォーム・アイ」搭載している。これは、スピンドル回転に同期した画像取り込みと独自の検出アルゴリズムで工具輪郭形状を高精度に検出。工程、工数を増加させず高精度加工を実現する誤差補正技術が盛り込まれている。工具形状測定結果によりNCデータの座標数値を加工機コントローラ側で補正しながら加工する仕組みだ。

211122工作機械編6ジェイテクト ジェイテクトのブースでは、立形マシニングセンタ「FV7000Z」に来場者が興味を示していた。〝5軸で驚きの加工領域〟というだけあって、最大加工物寸法、φ650mm×45mm、振り(A軸中心に対する振り)がφ900mmというダイナミックでありながら、コンパクト設計。熱変位も50%低減しているというが、この仕組みは、熱源対策及び熱容量を均等化した低熱変位設計のなせるわざ。長時間の自動化運転でも加工精度が安定し、さらに温度センサー測定と独自の解析ロジックにより熱変位を補正するという、徹底した熱対策が施されていた。

211122工作機械編7DMG森精機 今回は来場者も驚きを隠せなかったDMG森精機のブース。なんと工作機械が1台も展示していないではないか! 加工ワークの搬送や着脱など工場内の物流搬送を自動化し、工場全体のデジタル化を実現するために自社開発された自動走行ロボットシステム「AH-AGV 5」が展示されているのみ。広々としたブースには産業別に加工サンプルが展示され、デジタルを活用したプレゼン内容とともに、加工における悩みの解決法をひとつの物語を読むような流れをとりながら訴求するという斬新な手法で、来場者のマシンへの興味を刺激する展示内容となっていた。本気で設備の導入を考えている来場者はゆっくり同社のマシンを見学しに行くのだろう。デジタルの活用で新たな展示会の見せ方を示してくれた。

211122工作機械編8中村留 中村留精密工業は、「24時間無人運転」「作業自動化」を追求した展示を行っていた。注目したのは、「WY-150」に搭載されていたワークの搬送から爪交換までを自動化する「Flex Arm(フレックスアーム)」だ。従来のコンパクトローダーの素材のローディング・完成品のアンローディングに加え、チャック爪交換機能が追加したもので、ワークの径や形状が変わると人間の手で交換しなければならなかったが、このシステムがあれば機械を止めることなく、数種類のワークでも24時間無人自動運転で実現するという。

211122工作機械編9ナガセインテグレックス ナガセインテグレックスは画期的な新製品「GRID EYE(グライドアイ)」を展示していた。従来は砥石の表面を見るとなると手間がかかったが、この製品を使うと、機械の上にカメラを置いて、砥石を付けた状態で砥石の表面を見ることができるという。わざわざ砥石を持って研究室に行かなくても済むようになるのはありがたい! なにより画期的なのは、このシステムを活用すれば、ざっくり言うと砥石の表面を見て「たたき目が何パーセントの確立で出ますよ」という、いわば天気予報の加工版のような役割ができるようになるという点だ。今後の展開がものすごく気になる製品であった。

211122工作機械10 牧野フライス精機 人気の高精密CNC工具研削盤「AGE30」がさらに進化を遂げ「AGE30FX」として登場していた牧野フライス精機。従来機の重研削性能と加工の安定を踏襲しつつ、より優れた生産性を実現するマシンとして来場者の心を掴んでいた。注目すべき点は徹底した熱変位対策。連続加工時の加工安定性を長時間維持する左右非対称構造の機械本体。そして、Z軸にエアバランサを装備することでZ軸サーボモータの発熱を低減している。また、ベッド上に温度管理された研削液を常時流し続けるベッドクーラント機能を搭載し、非研削時でも研削液が循環するため、機械本体の温度を均一に保ってくれる。高精度工具を安定して生産できるマシンだった。

211122工作機械11牧野フライス製作所 来場者が食い入るように見つめていたのは、牧野フライス製作所のホカホカの新製品である「DA300」(自動化パッケージ)。連続運転を実現する機能を搭載し、加工現場で働く〝人間〟の負担を解消してくれるマシンだ。機械本体と一体化したATCとワークス特化40棚は圧巻! スケジュール管理ソフトも標準搭載で、マシンの前で作業を終わらせることができる。新技術の搭載として注目したいのは、新たに採用した「ポリゴンテーパ方式」パレット。3D方向での位置誤差を最小化し、シンプルでコンパクトな形状でワーク干渉も把握できプログラム作成時の負担も軽減する。また、切りくずも自重で落下する仕組みなので、オペレータの清掃作業を解消してくれるというからありがたい!

211122工作機械編12三井精機工業 微細精密加工分野に参入した三井精機工業。来場者の目線の先は、シングルナノを目指した加工精度を誇るプレシジョンセンター「PJ303X」が展示されていた。レンズ金型加工や半導体・工学系部品をターゲットにしたこのマシンは、3軸で小型レンズの金型加工が可能な5軸機である。微細精密加工の敵は熱変位だが、「PJ303X」には、最新の熱変位補正機能を標準搭載し、特殊熱変位キャンセル機構による主軸、ヘッドの熱変位を大幅に抑制している。従来の主軸ギャプセンサーと新規開発・新発想の熱膨張キャンセル機構も搭載(特許出願中)。視認性の良い15インチタッチパネルも標準採用しているうえ、セレクタースイッチやオーバーライドスイッチなどのアナログ感も重視し、これが操作性の向上に繋がっていた。

211122工作機械編13三菱電機 三菱電機が展示していたのは、CFRP用レーザ加工機「CVシリーズ」。このマシンの画期的な点は、切削性の悪いCFRPをウォータジェット切断ではなく、レーザで加工を実行する点である。レーザ加工機でCFRPを加工できれば、高精度・高速化を実現するのだが、従来、技術的に困難と言われていた理由に、炭素繊維の融点が2500℃~3000℃である一方、樹脂は250℃ほどで、CFRPに含まれる材料の溶け方が違う点にあった。今回、この難題をクリアしたCFRP加工用レーザマシンの展示とあって、多くの来場者が注目をしていた。仕組みは、レーザ発振を常時出すのではなく、ドカンとパルス状に出すことで一瞬にしてプロセスを終了させることにより、CFRP加工時の悪影響を出さないようにする仕組みにあった。

211122工作機械編14 安田工業は、同社最新機種の最大Φ1000mm、最大積載量300kgを搭載可能な5軸加工機「H40i-100」を展示していた。このマシンは、航空機部品や半導体製造装置部品など、複雑形状ワークの高能率加工に威力を発揮するもので、加工時間も約30%短縮するという強みがある。この強みは、スピンドルヘッドの軽量化や直径320mmの大径カービックカップリングを採用したパレットチャッキング機構に加え、軽量化されたコラムにある。高能率削り出し加工と高精度な反転ボーリング加工を1台のマシンで成立し、工程集約と高速高精度加工、そしてコストパフォーマンスも向上させたマシンだ。また、熱変位を最小限に抑えるため、スピンドルは冷却効果の高いオイル&エア潤滑を採用している。

211122211122工作機械編15ヤマザキマザック 今回、製造トレンドをいち早く取り入れた印象が強いヤマザキマザックは、脱炭素社会の実現に向け、省電力、〝レーザガス不要〟の画期的なファイバーレーザ加工機「STX-2412」を展示していた。ファイバーレーザ加工機の魅力は端陰気と外部光路をファイバーケーブルで接続することから光学部品が不要となるため、光学部品代やメンテ時間の大幅な削減に繋がることが魅力である。加工サンプルには、Co2排出量が提示しており、環境意識の高さを示していた。省エネでありながら、軟鋼薄板、ステンレス、アルミニウムの生産性が大幅に改善。銅や真鍮などの高反射材も安定した切断が可能である。

211122工作機械編16碌々産業 碌々産業は、「実加工精度±1μm以下の追求」をコンセプトに開発された「Android」に、さらなる高精度加工を達成した次世代「AndroidⅡ」を展示していた。IoTやAIを活用したデジタルな製造現場を実現すべく、より高次元加工を可能にした「M-kit」で操作性を向上させ、マシン動向の〝見える化〟をより進化させている。ASC機能により暖機運転時間を削減し、非加工時間を短縮させてくれるのもありがたい。このマシンはデモ加工を行っても、驚くほど〝静寂〟なことから、より高精度加工を実現しているのが理解できる。
(切削工具・周辺機器編は次回に続く)

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