不二越工具事業部 加工テストで新製品工具の実力を見せつける!
「もっと加工に革命を!」のスローガンを掲げている不二越工具事業部。1本の工具でなんでも加工できる汎用工具、用途に合わせてダントツの性能を誇る専用工具を有する『アクアREVO』ブランドの工具は、ユーザーからの評価も高く、豊富なラインナップを有しており、昨年10月に名古屋で開催された「メカトロテックジャパン」でも大きな注目を浴びた。
今回、同社が新しく市場投入した3商品。人気のアクアREVOドリルシリーズ第三弾として小径ドリルの『アクアREVOドリルマイクロ』、そして〝青いエンドミル〟と呼ばれて親しまれている『アクアREVOミル』からは深い立壁加工を実現する4Dタイプがラインナップ、加えてタップからは、切りくずを出さない〝盛上げタップ〟『ZTフォーミングタップ』――が登場した。工具事業部を訪ね、干場俊洋 技術部 部長にお話を伺うとともに、加工テストによる新製品工具の実力を取材した。
突然折れる、穴位置がズレる、切りくずがつまる――小径ドリル加工の悩みを克服した『アクアREVOドリルマイクロ』
アクアREVOドリルシリーズは、2018年11月に第一弾として『アクアREVOドリル』、その翌年8月には第二弾として『アクアREVOドリルオイルホール』を、そして今回、第三弾としてリリースされたのが『アクアREVOドリルマイクロ』だ。
小径ドリル加工を行っている現場の困りごとといえば、①突然折れる、②穴位置がズレる、③切りくずが詰まる――が代表的だが、干場部長は、「近年、切削加工条件も多様化し、超硬工具の需要も拡大していますが、当社は超硬素材を内製化しており、小径ドリルに求められる耐摩耗性と耐折損性にすぐれる小径ドリル専用素材開発をマテリアル事業部で開発しています。今回、アクアREVOブランドのコンセプトである材料、形状、コーティングを独自技術でチューニングし、商品化しました」と意気込みを示す。
『アクアREVOドリルマイクロ』の注目すべき点は、従来のアクアREVOドリルよりも折れにくさを約20%もアップしていること。
「小径ドリルの加工を想定してねじった時に、ポキッと折れるまでの〝ねじり破壊トルク〟を社内評価し調査したデータでは、他社品と新製品を同じ0.5㎜のドリルで比較すると20%ほどねじり破壊トルクが強くなっています。」と自信を見せる。
耐折損性を高めるための切れ刃設計にも注目したい。耐折損性を高めるには高い求心性が必要で、今回は高精度加工を実現するため、ドリル形状も開発したという。具体的には、先端形状で食いつき性、求心性を向上させている。この食いつき性抜群の先端形状と特殊な切れ刃エッジ処理の採用で高送りに対応しているためスピーディな高能率加工も実現する。このように切れ刃最適設計で切削抵抗を低減し、高速でも高性能を発揮する。
加工中に切りくずが詰まってしまうとこれもまた折損の原因となってしまうが、この問題を抑制するため、同社では、切りくず分断性を高め排出性を向上させている。しかも、15μm以内の穴位置精度を実現したとのことで、ダーツ盤の加工サンプルを拝見させてもらったが、芸術性すら感じさせるほど美しかった。ちなみにこの穴数は4225穴もあるという。
さて、工具のキモを握る要素のひとつにコーティングがあるが、同社では、〝REVO-Dコーティング〟を小径用に最適化し、耐摩耗性の高いAlTi系膜と耐酸化性の高いAlCr系膜をナノレベルで積層している。表面は〝超平滑化処理〟により、ツルツルだ。これらの技術により、高硬度(3300HV)と高耐酸化性(1100℃)が実現し、高能率加工、長寿命、安定加工が可能になった。炭素鋼S50Cによる工具寿命を比較しても、他社品が平均181穴に比べ、同社工具は5倍以上の平均1019穴もあけたというから、尋常ではない寿命長さだ。
〈加工テスト ~S50Cの超高能率加工で折れにくさを実感~〉
いざ加工テストへ! 今回は、同社のカタログ条件を遙かに凌ぐ加工テストを行った。S50Cを①(カタログ条件)0.2mm(0.4DC)、②(高速条件)0.5mm(1.0DC)、③(高速条件)ノンステップ――の3通りでステップ量を変更。切削条件は、直径:φ0.5-10D、送り量:0.03mm/rev(6%DC)、加工深さ:5mm 止り穴(10DC)、切削速度:40m/min、切削油剤:水溶性(外部給油)なお、カタログ条件はステップ量0.2~0.5DC。
1穴をあけるまでのステップ回数は、①0.2mmが25回、②0.5mmが10回、③ノンステップは0回。
まずは他社品から加工をしてみる――――①0.2mmは問題なくクリアしたものの、あうっ! ②0.5mmのものが5回のステップでピキッとお陀仏になってしまったではないか。ここで他社品のテストは終了し、続いて新商品『アクアREVOドリルマイクロ』が登場。③ノンステップでも問題なく加工することができて、立ち会った工具事業部の皆様も満面の笑顔を見せた。なお、この径におけるノンステップ加工はかなり負荷のかかる加工なので、同社では安全のため、カタログに記載された条件を推奨している。