「1兆6,500億円の見通し」日本工作機械工業会が賀詞交歓会を開く

 日本工作機械工業会(会長=稲葉善治 ファナック会長)が、1月7日、都内のホテルニューオータニでコロナウイルス感染予防のため飲食を伴わない賀詞交歓会を開き、今年の抱負を述べた。

各種産業機械の需要が引き続き活発に推移

220204日工会稲葉会長
新年のあいさつをする稲葉会長

 あいさつに立った稲葉会長は、「昨年5月に発足した新体制のもと、皆様には日本工作機械工業会に多大なご支援ご協力を賜り、委員会を始めとする諸活動を順調に展開することができた。」とお礼の言葉を述べたあと、昨年を振り返り、「米中が対立を深める中、新型コロナウイルスの感染拡大が続いたものの、先進国を中心にワクチン接種の進展により経済活動を取り戻し、世界経済は緩やかな回復傾向に転じた。設備投資は回復の足取りを強め、工作機械受注は半導体関連装置が顕著に推移したほかコロナ禍にあって抑制されていたペンとアップ事業が世界の各地で顕在化した。」と述べた。

 2022年の工作機械市場の展望については、「内需では半導体製造装置をはじめ、各種産業機械の需要が引き続き活発に推移するとみられるほか、自動車の環境対応投資も次第に顕在化してくるものと見込まれる。外需についても、中国やインド、欧米の各市場で、風力発電等のエネルギー、半導体、自動車の電動化、5G等通信インフラ、航空機など、多様な分野での設備投資が、高水準で継続すると見込まれる。脱炭素社会に向けカーボンニュートラルを実現するため、環境負荷を軽減する生産システムの構築やIoT、AI、DXの進化による生産現場の変革を推進する動きも明るい材料であり、各国政府による政策措置も投資を促すものと思われる。」との見解を示した。その一方、懸念材料としては、「電装品をはじめとする部品不足や価格の高騰、海運の混乱、経済や安全保障に関する米中対立、新型コロナウイルス感染症等、多くの懸念材料も昨年より持ち越されている。」と述べ、「それらの動向を絶えず注視する必要はあるが、世界経済は回復基調で推移していく勢いが感じられる。」と明るさを滲ませ、「以上の傾向を総合的に判断し、2022年の工作機械受注額は、総額で1兆6,500億円になる見通しである」と述べた。

 工作機械業界を取り巻く環境については、「〝2021年版ものづくり白書〟で、製造業のニューノーマルはサプライチェーンを強靭化するレジリエンス、カーボンニュートラルに対応していくグリーン、デジタルトランスフォーメーションの取組を進化していくデジタル化などを軸に展開されると指摘されている。これらは、工作機械業界にとっても対処が必要な重要テーマであり、一方でビジネスチャンスにつながる新しい潮流ともいえる。世界情勢は不安定・不確実な状況にあっても、製造業は技術革新を続け日々刻々と進化の過程を歩み続けている。工作機械業界は、ロボット技術との融合による自動化・省人化技術やAdditive Manufacturing技術との融合、世界各地域のユーザーニーズに沿ったエンジニアリング提案力の強化、これらを進めていくことにより、付加価値の高い製品・サービスを提供して、世界の製造業の発展に貢献していく。」と力強さを滲ませた。

また、本年の同工業会の活動について、「今回で60周年を迎える我が国工作機械業界の最大のイベントであるJIMTOF 2022を成功に導くため、万全を期して準備を進める。」としており、本年11月に東京ビッグサイトにて、東・西展示棟に加え、南展示棟を新たに使用して、「過去最大規模の展示を行う。」とした。また、展示会以外の活動としては、グリーン、デジタル、レジリエンス、これらのテーマについて、各委員会が中心となり、「この分野でも世界をリードするべく研鑽を積んでいく。」と力強さを滲ませた。

ものづくりの基盤をしっかり守っていく年に

220204日工会藤木局長
経済産業省 藤木製造産業局長

 来賓を代表して、経済産業省 藤木俊光 製造産業局長があいさつをした。この中で藤木局長は、「コロナから話を始めなければならないのは大変残念だが、政府としてもこのコロナ対策は万全を期して、同時に経済や社会活動をしっかり動かしていかなければならないと思っている。この関連では残念ながら、ここ2年間海外との行き来が制限されている状況であり、現在もオミクロン株により皆さま方には不自由をお掛けしている状況にあるのではないかと思う。その一方で日本国経済にとって海外とのやり取り、海外との交流、これは欠かせないものであり、これをどう円滑なものに戻していくのか、ぜひ工作機械業界の皆様とも知恵を出し合いながら、様々な工夫を考えていくことを試みていきたい。」と述べた。

 コロナがもたらした問題として、「中長期的にもサプライチェーンをどう強靱化して、少々のショックでは負けないサプライチェーンをどう築いていくのか。米中対立や経済安全保障、あるいはサプライチェーンなどで人権の確保といった新しいシーンも出てきている。こういったような問題にどう対応していくのか。もちろんこれは個社ではとても対応し切れない問題なので、業界一丸となって協力しあいながら日本のものづくりの基盤をしっかり守っていく年にしたい。」とした。

 また、ものづくり白書にも触れ、「デジタルで新しい価値を生み、デジタルで新しい市場を生む活動につなげていけるきっかけづくりの年にできればと思う。皆様のビジネスの中でアイデア、あるいは困り事から様々な発想が出てくると思っている。そういった発想、アイデアを応援させていただきたい。」と声援を送った。
 

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