日之出ホールディングス 山形精密鋳造と共同で新しい耐熱鋳鋼2種を開発
ヒノデホールディングスは傘下の山形精密鋳造と共同で、長年両社で培ってきた鋳物の材料開発技術を活かし、このほど、耐熱変形性・き裂性、耐酸化性といった性能面とともに経済性にもすぐれた新しい耐熱鋳鋼2種を開発した。
開発したのは、オーステナイト系の1,050℃対応材と、フェライト系の900℃対応材の2種類。高温環境下にさらされる自動車排気系のタービンハウスやフランジなどの部品のコスト削減のほか、精密鋳造法による厚さ1.5mmの薄肉化技術とあわせて部品の軽量化にもつながる。
新開発耐熱鋳鋼(1,050℃対応オーステナイト系)
耐熱鋳鋼の代表的な規格材には、耐熱温度1,050℃の「DIN 11.4849(19Cr-38Ni)」と、1,020℃の「DIN 1.4848[JIS規格のSCH22鋼に相当](25Cr-20Ni)」などがある。「DIN 1.4849」は1,050℃の耐熱温度を有した優れた材料だが、「DIN 1.4848」と比べて、クロム(Cr)が比較的少ないため耐酸化性に若干劣ることと、ニッケル(Ni)の添加量が多いためコストが若干高いことに課題があった。今回新たに開発した耐熱鋳鋼は、耐酸化性やコストなどに優れるも耐熱性に劣る「DIN 1.4848[SCH22]」をベースに、添加する合金元素とその制御を最適化することにより、1,050℃の耐熱性を持ちながらも、高温耐力、耐酸化性、熱膨張係数、コスト面で「DIN 1.4849」を超える性能を持つ(PCT国際特許出願済)。
新開発耐熱鋳鋼(900℃対応フェライト系)
排ガス規制対応として各種の浄化装置がエンジン近くの狭小スペースに配置される傾向にあり、浄化装置とマニホールドの接続部品は複雑形状となっている。加えて、900℃程度の高温環境に耐え、周囲部品との熱膨張差が小さいことが必要となることから、複雑形状の一体成形が可能なフェライト系耐熱鋳鋼(ステンレス鋳鋼)が求められている。しかし、フェライト系鋳鋼は規格すらないことに見られるように一般的ではない。フェライト系耐熱鋳鋼で製造されている部品もあるが、常温での延性(伸び)が低いため、製造や組み立ての過程で割れが発生するなどの懸念があった。同社が今回開発したフェライト系耐熱鋳鋼は、フェライト系ステンレス鋼材SUS430 J1Lをベースに、合金組成の最適化と鋳造プロセス・熱処理プロセスを工夫し、フェライト系耐熱鋳鋼では画期的となる優れた伸び特性を安定的に確保した(PCT国際特許出願予定)。