工作機械需給状況まとまる(2021年1月~12月実績) 日本工作機械工業会

 日本工作機械工業会がこのほどまとめた工作機械需給状況(2021年1月~12月実績)は以下のとおり。

受注額(日本工作機械工業会)

(1)概況
 2021年の工作機械受注額は、3年ぶりの増加で、前年比+70.9%の1兆5,414億円となった。新型コロナウイルスの影響からいち早く立ち直った中国が先行して回復し、年後半からは欧米や国内でも回復傾向が顕著になった結果、1兆5千億円を上回り、過去4番目の受注額を記録した。このうち、NC工作機械は、1兆5,149 億円(同+71.2%)となった。受注額全体に占めるNC工作機械の比率は98.3%(同+0.2pt)と、6年連続で98%を超え、過去最高比率を記録した。受注総額の内訳をみると、内需は5,103億円(同+57.3%)、外需は1兆311億円(同+78.6%)で、外需比率は同+2.9ptの66.9%となった。

(2)内需の動向
 2021 年の内需は、増加に転じ、前年比+57.3%の5,103 億円と3年ぶりの5千億円超えとなった。年前半は、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞から、受注も低調だったものの、年後半からは補助金採択案件による受注の押し上げと、ワクチン接種の進展も手伝って経済活動の再開から回復が進み、9月以降は500億円/月を超える水準が続いた。業種別にみると、全11業種全てで前年比増加となった。主要4業種では半導体関連や部品不足に伴う増産対応などから、「一般機械」同+50.6%(2,005億円)、「電気・精密」同+102.4%(694 億円)、等で回復が進んだ一方、EV化の流れ等を受けて設備投資が停滞した「自動車」同+38.0%(1,151億円)、コロナ禍で航空産業が低迷した「航空機・造船・輸送用機械」同+44.5%(160 億円)などは他業種に比べ回復が遅れた。また、「金属製品」同+71.4%(403億円)や「官公需・学校」同+147.0%(73億円)は、過去最高額を記録した。

(3)外需の動向
 2021年の外需は、大きく増加し、前年比+78.6%の1兆311億円と3年ぶりの1兆円超えとなり、過去2番目の受注額となった。年初はコロナ禍で6~700億円/月だったが、いち早く回復が進んだ中国において、テレワーク関連需要やEMSの大型受注が寄与し、3月から800億円台後半まで急増し、その後、中国で大型受注が落ち着きを見せる一方で、欧米地域で経済活動再開による需要の回復が進み、3月以降800億円/月を下回ることなく推移した。特に10月、11月には、機械価格の値上げの動きに伴う駆け込み需要や、自動車や半導体関連での大型受注が各地で重なり、950億円を超える受注額を記録した。

 地域別にみると、アジアは4年ぶりに増加し、前年比+77.4%の5,173 億円で、4年ぶりに5千億円を超え、過去2番目の受注額を記録した。このうち、東アジアは同+77.8%(4,258億円)で、国・地域別にみると、韓国(同+76.3%、327億円)、台湾(同92.0%、347億円)、中国(同+77.4%、3,580億円)など軒並み前年比7 割以上の増加を示し、台湾と中国は過去最高額を記録した。その他アジアは3 年ぶりに増加し、同+75.5%の915 億円と3年ぶりの900億円超えとなった。インド(同+103.6%、380億円)では、コロナの影響を受けながらも需要が底堅く、自動車関連を中心に堅調に推移した一方、ASEAN地域では、コロナ禍からの回復が進むもその速度は他地域に比べ鈍かった。

 欧州は、新型コロナ感染拡大の影響が年前半に続いたものの、後半からは経済活動再開の動きを受け、EUを中心に回復が進み、3年ぶりに前年比増加し、同+118.8%の2,107億円と3年ぶりの2千億円超えとなった。国別では、「東欧」を除く全ての国・地域で前年比増加し、特にイタリア(同+254.9%、417億円)では、設備投資優遇策や展示会も後押しし、11月に過去最高額を記録する等、高水準の受注が続き、2007年(422億円)に次ぐ過去2番目の受注を記録した。また、ドイツ(同+130.2%、452億円)、フランス(同+163.0%、203 億円)、EU「その他」(同+107.5%、364億円)、トルコ(同+126.1%、155億円)も前年から倍以上の増加を示し、2019年実績を上回る受注額を記録した。

 北米は、同+58.0%の2,825億円と3年ぶりに2,500億円を上回る増加となった。欧州と同様、新型コロナ感染拡大からの回復が年後半から本格化し、特にアメリカ(同+61.3%、2,523億円)は、ジョブショップや自動車、航空機など幅広い業種で需要が回復し、過去2 番目の受注額となった。また、カナダ(同+73.3%、157 億円)も2年ぶりの150億円超で過去2番目の受注を記録した一方、メキシコ(同+9.0%、146億円)は、大口の自動車関連投資が少なく、3年連続の150億円割れとなった。

 各地域別の受注シェアは、アジアが50.2%(同▲0.3pt)、欧州が20.4%(同+3.7pt)、北米が27.4%(同▲3.6pt)となった。前年の欧州の落ち込みが大きかったこともあるが、欧州のシェアが大きく増大した。国別シェアでは、1位が中国で34.7%(同▲0.3pt、前年1位)、2位がアメリカの24.5%(同▲2.6pt、前年2位)、3位はドイツで4.4%(同+1.0pt、前年3位)、4位がイタリアで4.0%(同+2.0pt、前年10位)、5位がインドで3.7%(同+0.5pt、前年4位)、6位が台湾で3.4%(同+0.3pt、前年6位)、7位が韓国で3.2%(同±0.0pt、前年5位)とイタリアが大きく順位を上げた。

(4)機種別の動向
 受注額を機種別(含むNC機)でみると、全11機種すべてで前年比増加となった。主な機種別の受注額は、旋盤計が前年比+77.3%の5,101億円で、3年ぶりの5千億円を超える増加となった。旋盤の「うち横形(同+84.2%、4,848億円)」が大きく伸長した一方、大型機が多い「うち立て・倒立形(同+2.9%、252億円)」は僅かな増加にとどまった。また、旋盤計における「うち複合加工機(同+88.8%、2,094億円)」は旋盤計よりも大きい増加幅を示し、旋盤計に占める複合加工機の割合も41.1%と前年から2.5pt上昇し、統計開始(2015年)以来の過去最高比率を更新し、初の4割超となった。

 マシニングセンタは、同+70.4%の6,546億円と、3年ぶりに6千億円を上回った。「うち立て形(同+62.4%、3,771 億円)」、「うち横形(同+91.4%、2,300 億円)」、「うちその他(同+50.0%、475億円)」と軒並み5割以上の増加を示したが、大型機が多い「うちその他」が最も増加幅が小さかった。また、マシニングセンタ計における「うち5軸以上」は同+59.7%(1,310億円)で、全体の増加幅より小さくなった。その結果マシニングセンタに占めるうち5軸の割合は、4年連続で20%を超えたものの、2年連続で低下した。

 その他の機種では、中ぐり盤(同+100.3%、141億円)、歯車機械(同+94.0%、296億円)、研削盤の「うち平面研削盤」(同+80.5%、210億円)が8割以上の増加を示した。

(5)販売額
 販売額は前年比+24.2%の1兆2,835億円で、3年ぶりに増加し、1兆2千億円超えとなったのは2年ぶり、受注に比べ生産が部品不足等により伸び悩んだこともあり、販売額の増加幅は2割強にとどまった。うちNC 機は、同+24.9%の1兆2,617億円となった。

 機種別(含むNC機)にみると、全11機種中7機種で前年比増加となった。主な機種別販売額は、旋盤計が同+29.6%の4,265億円、マシニングセンタ計が同+32.1%の5,565億円となった。前年を下回った4 機種は、専用機(同▲18.4%、182億円)、フライス盤(同▲9.9%、31億円)、中ぐり盤(同▲9.4%、105億円)、研削盤(同▲8.5%、770億円)であった。

(6)受注残高
 2021年末の受注残高は、前年比+62.7%の7,010億円で、3年ぶりに増加し、7千億円を上回った。受注の回復に加え、部品不足等により生産の伸びが抑制されたこともあり、年初から受注残高は3千億円弱増加した。当該年末の受注残高を直近3カ月(21年10~12月期)の販売平均で除した「受注残持ち月数」は6.2カ月で前年末から0.7カ月上昇した。また、NC 工作機械の受注残高は同+64.1%の6,818億円となった。

生産高(経済産業省:生産動態統計調査)

 2021年の工作機械生産高は8,954億円で、1兆円割れは2年連続となった。前年比は+23.7%と3年ぶりに増加したが、受注額が過去4番目の高水準を記録したにも関わらず生産が伸びなかったのは、部品・部材の不足等が要因と考えられる。

 機種別に見ると、生産額が最も多い「マシニングセンタ」は、生産台数は同+71.9%の33,612台、生産金額が同+40.6%の3,586億円で、3年ぶりに3万台を超え、2年ぶりに3,000億円を上回った。内訳をみると、「立て形」は台数が同+75.5%と2年連続の増加、金額は同+48.0%で4 年ぶりに増加した。「横形」、「その他」は台数、金額とも3年ぶりの増加となった。その他、「NC 放電加工機」が同+47.8%の354億円、「その他のNC工作機械」が同+41.4%の1,049億円と前年から4割を超える増加を示したほか、「旋盤」(同+21.4%、2,257億円)などが増加を示した一方、「NC ボール盤」(同▲17.3%、15億円)、「NC 中ぐり盤」(同▲13.4%、75億円)、「専用機」(同▲9.9%、537 億円)、「研削盤」(同▲8.7%、836億円)は前年比減少が続いた。

輸出高(財務省:貿易統計)

 2021年の輸出高は、前年比+34.6%の7,128億円、うちNC工作機械は同+36.8%の6,867億円と、ともに3年ぶりに増加した。

 地域別に見ると、アジアは前年比+34.5%の4,210億円で、3年ぶりに4,000億円を上回った。東南アジア・その他アジアでは、前年から一桁の増加にとどまったものの、東アジアで同+44.0%の3,281億円と回復が続いた。欧州は同+34.8%の1,152億円と3年ぶりに増加し、2年ぶりの1,000億円超え、北米は同+34.9%の1,620億円で、2年ぶりの1,500億円超えとなったものの、ともに過去10年では3番目の低さとなった。

 地域別の比重は、アジアが59.1%(同±0.0Pt)、北米が22.7%(同±0.0Pt)、欧州が16.2%(同+0.1Pt)とほぼ前年から変化は見られなかった。国別では中国(同+41.8%、2,356億円)が33.1%と2年連続で首位となり、米国(同+33.5%、1,399億円)が19.6%と2位であった。この他、台湾(6.2%)、韓国(5.7%)、インド(4.0%)、タイ(3.2%)、ドイツ(3.1%)と続き、東アジアの国・地域が前年から比重を高め、上位7カ国中5カ国をアジアが占めた。また、上位7カ国で輸出総額の74.9%を占めた。

 機種別に見ると、「マシニングセンタ(同+48.3%、3,147億円)」、「旋盤(同+24.3%、1,540億円)」、「レーザー加工機(同+56.5%、1,192億円)」の3機種のみ1,000億円を超え、この3機種で総輸出額の82.5%と全体の8割強を占めている。

輸入高(財務省:貿易統計)

 2021年は、36の国・地域から輸入があり、輸入高は前年比+9.5%の608億円、うちNC 工作機械も同+13.4%の525億円とそれぞれ3年ぶりに増加した。

 国・地域別では、中国(構成比27.8%)が前年比+52.0%の169億円で、3年ぶりにドイツを抜き首位となった。以下、ドイツ(構成比20.1%、前年1位)、タイ(15.6%、前年3 位)、スイス(7.2%、前年4位)、台湾(6.4%、前年5位)、韓国(6.4%、前年7位)、アメリカ(5.7%、前年6位)と続いた。この上位7カ国・地域で総輸入額の89.2%(前年比+3.7pt)を占めた。

 機種別に見ると、上位4機種では、「旋盤(同+68.4%、211億円)」、「レーザー加工機(同+3.9%、114億円)」、「研削盤及び仕上げ加工機(同▲12.5%、86億円)」、「マシニングセンタ(同▲26.9%、64億円)」と順位に変動はなかったものの、機種によって異なる動きが見られた。


 

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