【工作機械編】JIMTOF2022で見た注目各社の技術まとめ

 「JIMTOF2022」でみた工作機械は、カーボンニュートラルへの対応を視野に入れ、環境に配慮したマシンが目立った。製造現場では労働人口の減少に加え、人材の多様化も進んでいるため、誰もが使いやすい工作機械がトレンドとなっているようだ。また機械の自動化・複合化はさらなる加速をみせ、工程プロセスの効率化を推進する技術が多く披露された。

 

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人材の多様化にも目を向けさらに自動化が加速していたアマダグループ

 アマダグループは環境負荷低減の貢献とデジタル技術を用いた加工のスキルスレス化を提案していた。新NCを搭載したファイバーレーザーマシン「VENTIS-3015Je」(6kW)で自動化ソリューションを披露。材料をストックする多段棚は従来と同じ設置床面積と高さだが、材料積載量を約1.5倍に高めている。新NC装置は「AMNC 4ie」はアイドリング時、チラーやコンプレッサを自動で調節し、Co2排出量を最大65%削減するうえ、作業者を顔認証し、言語表示を自動で行うなど、人材の多様化に対応した使いやすいマシンへと進化させていた。

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自動化による高能率と省力化を同時に実現するマシンを展示した岡本工作機械製作所

 研削盤合計8シリーズを展示していた岡本工作機械製作所。汎用操作から全自動研削まで幅広いラインナップは、「機上計測」、「超精密・鏡面加工」、「自動化・高能率・複合加工」、「脆性材加工」といった加工現場のニーズを捉えたもので、特に新シリーズとなったグライディングセンタ「UGM64GC」は脆性材料の外周・内周・コンタリング加工をターゲットとしており、注目を集めた。写真は協働ロボットによるといし&ワークの自動交換を実現した「UPZ52Li&ロボットGRIND-SELF」。自動化による高能率に加え省エネも実現するとして訴求していた。新開発の超小型ロータリードレッサーとリニアモータ駆動による高速・高精度位置決め研削が実現する。

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誰もが合理的で無駄のない加工ができるよう独自開発が加速するキタムラ機械

 マシンの高度化を加速させながら初期投資を最小限にした自動化の提案で大きな存在感を示したのはキタムラ機械だ。「MedCenter5AX」は同社独自のCNC装置「Arumatik-Mi」を搭載した5G通信による第5世代のマシニングセンタ。大容量工具交換装置を内蔵し、機械設置後でも多面APC、ATCを増設可能なうえ、長時間の自動化・無人化システムに対応する。特長的なのは標準設定にした「Anywhere-Remote」機能で、1台でIoTを完結できること。製造業もカーボンニュートラルへの対応が急務とされているが、人材や資金を投入できる余裕がない中小企業でも合理的で無駄のない加工ができるよう至る所に配慮がされているマシンに中小企業のミカタ的技術開発を見た。

 

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製造業のトレンドを網羅していた芝浦機械

 大型化するものづくりと微細加工へのニーズを捉えたマシン群を展示し、デジタル化で生産改善を実現する提案をしていた芝浦機械。南展示場では金属3D積層造形マシンも展示し、脱炭素・省エネ、省人化・生産性向上、IoT活用など製造現場のトレンドを全て網羅しているパワーを見せつけた。大型金型製作の自動化と生産性向上をうたった門形マシニングセンタ「MPC-Hシリーズ」は最大重量物が移動するX軸送り機構にツインドライブ方式を採用。テーブルのヨーイング排除による安定した送りが特長だ。自由曲面のワーク形状をより忠実に再現でき、高精度な加工プログラムに対応する。安全性を考慮したマシンカバーは切りくずや切削液の飛散を抑え、作業者に優しいデザイン。環境負荷の低減に貢献している。

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歯車加工の高能率化・高精度化ニーズに合致したマシンを展示した清和鉄工

 カーボンニュートラルの実現に向け、世界中で急速に電気自動車の製造・開発が進んでいることに伴い、歯車加工の高能率化・高精度化が加速している。清和鉄工はこうしたニーズに合致したマシン群を展示しており、内歯、外歯加工が可能なCNCパワースカイビング盤「Artis PS106」にロボットによる自動化(オプション)を来場者に訴求していた。機械寸法は3497×2000×2340(mm)と省スペースを実現しており、レイアウトも柔軟に対応できる。なお、NCシステムはファナック。

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24時間稼働の完全無人化工場を実現するノウハウが展開されていたDMG森精機

 東8ホールで①工程集約、②自動化、③DX・GX――の3つを追求した5軸加工機と複合加工機による生産性向上を全面に押し出したDMG森精機のパフォーマンスに来場者も大喜び。ブース内は人で溢れており撮影をするのも一苦労だった。搬送ロボットが工具の搬入・搬出を行う大容量工具マガジン「CTS」、工場全体のデジタル化を実現する自動走行型ロボット「WH-AMR」など24時間稼働の完全無人化工場が実現するノウハウがぎっちり詰まっていた。

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独自の機械設計がさらにパワーアップしていたナガセインテグレックス

 

 ナガセインテグレックスは7機種を展示していたが、なかでも目を引いたのは同時6軸制御ナノマシン「NIC-74」だ。同社でも〝異次元の微細形状加工〟を実現すると自負しているこのマシンは、光学部品や各種光学レンズ、高機能フィルム製造用金型などに求められる超高品位・超高精度加工が可能。この独特な球体構造は、振動振幅を大幅に低減するもので、刃先の位置が変化しない旋回工具軸も新開発(特許出願中)。オプションで楕円振動切削やエンドミルなどの工具を用いた加工にも対応している。

 

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機械高さを抑え、複合加工が可能なマシンを展示した不二越

 総合機械メーカーの不二越。トレンドであるEV、減速機、電子、医療関連分野などの小型部品をターゲットに高精度歯車加工と多軸制御加工をコンパクトに集約したスカイビングギヤシェープセンタ「GMS100」を展示。スカイビング、ホブ、旋削、穴あけなど歯車加工工程を1台に集約したマシンだ。スカイビング工法は不完全ギヤ部を縮小できるため、製品の扁平化、小型化、軽量化に貢献する優位性がある。機械高さを抑えたコンパクト設計も特長的で、バーフィーダー仕様なので素材連続供給による旋削+歯切の複合加工が可能。

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設備資産の有効活用を提案した牧野技術サービス

 

 機械が止まれば機会損失が発生する。予防するためにも機械の点検はとても重要な要素だが、牧野フライス製作所の子会社である牧野技術サービスは設備資産の有効活用を提案する「マキノ マシンケアパッケージ」を紹介。予期せぬ突発障害を起こさない〝止まらない機械〟を実現するサービスである。機械のメンテナンスの目的は機械を安定して稼働することなので、同社では顧客毎にメンテ内容をカスタマイズすることにより、最適化されたプランを用意する。なお、予防保全に必要な定期交換部品の購入や保守情報を観覧できるWeb会員専用サイトも立ち上がっている。

 

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とにかく画像認識が速い! 高精度連続加工を実現した牧野フライス精機

 あっと驚く画像認識による革新的自動化システムを提案したのは牧野フライス精機。高精密CNC工具研削盤「AGE30FX」に搭載していた「monocam」は、同社の工具研削盤に搭載可能な内蔵型非接触測定システム。ドリルのオイルホール位相など様々な箇所を機内でチャッキングしたまま自動測定でき、測定結果をもとに次の加工ワークに対して自動補正を行って高精度連続加工を実現する。タッチセンサーと比較して優位性はとにかく速いこと。今回は3分の100mm感覚でセンシングをしているデモを行い、点で探るタッチセンサーよりも画像認識でより速く正確な刃先の検出をアピール。研削液対策もばっちりで検索中は測定カメラにカバーをしているうえ測定前にエアブローを施し、ワークに付着した研削液なども除去する。

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経済性と環境負荷低減を両立させつつ生産性を高めた牧野フライス製作所

 牧野フライス製作所は、半導体および電子機器産業は好調が続いている一方で生産工程は複雑化し、部品の難易度が高まっていることを受け、5軸制御横形マシニングセンタ「a900Z」を展示していた。目を惹いたのは丸みを帯びた美しいデザイン。同社の〝aZシリーズ〟で取り組んでいた「生産性の追求」と「経済性/環境への配慮」を大型ワークにも展開する。このマシンの特長は重心を計車軸に近づけることで軸動作に伴うイナーシャを徹底的に低減し高速動作を実現したこと。切りくずは溜まることなく落下し、クーラントやエアなどの削減が可能となったことで経済性と環境への配慮を実現した。

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機械のキモを握るV-Vキサゲガイドをむき出しにして展示した三井精機工業

 

 

 三井精機工業は訴求内容が非常に分かりやすかった。高精度横型マシニングセンタ「H6E」のカバーを取り外し、X・Y・Z軸〝V-Vキサゲガイド〟を惜しげもなく来場者にも見せつけていた。これを見学しただけでも、ジグボーラの精度とマシニングセンタの生産性を統合していることが理解できる。世界トップレベルの高い立体精度と高生産性はV-Vキサゲガイドのなせる技! 〝超高精度を安定して加工できる〟という安心感を来場者に植え付けた。

 

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産業のトレンドを押さえたマシンを展示した安田工業

 安田工業は、EVや次世代航空機、半導体製造装置分野などのトレンドを抑えた新鋭機「YBM Vi50」を展示。5軸加工のベストセラーとなった「YBMVi40」のDNAを受け継ぎ、新たに設計された機械構造で大型ワークも高精度・高面品位加工で高い位置決めを可能にするマシンだ。注目したいのは同社独自のダイレクトドライブ&プリロード自己調整型スピンドルを採用していること。低回転での高効率重切削加工と高回転での高面品位加工を両立させている。もちろん自動化にも対応しており、オプションのオートチャックに対応し、AWC装置を設置することで自動化に対応する。

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EVに向けた最先端技術を披露したヤマザキマザック

 ヤマザキマザックはデジタルソリューションでカーボンニュートラルに向けた環境対応と生産効率向上を同時に実現するという先端技術を華やかに披露。時代に合致した生産方式の変化は同社のCNC装置「マザトロール」をコアとしたマシン群がそれを示していた。また、EVに向けた高速摩擦攪拌接合専用機「FSW-460V」は、摩擦熱で軟化させた材料を攪拌して接合する技術だが、従来の溶接と比較して歪みが少ないうえ、接合強度が高いのが特長。付加価値を創造する同社の先端技術が詰まっていた。

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 ひときわ目立つラグジュアリー感。機械というより宝飾の展示会をイメージさせ来場者を驚かせた碌々産業は画期的な展示方法で微細加工を訴求。拡大鏡でしか形状が分からないほど規格外の小さなネジや腕時計の部品などの加工サンプルで来場者を存分に楽しませた。注目の新マシンはマットなブラックをまとった高精度高速小径微細加工機「Mega Ⅶ consept」。このマシンの実態は研削・切削・ヘール加工といった微細加工の複合化へ挑戦した最新マシンだ。進化した穴あけ機能でさらなる高速化も狙え、同社オリジナルの穴数管理による工具寿命管理も開発している。
 

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