【切削工具・周辺機器編】JIMTOF2022で見た注目各社の技術まとめ

 「JIMTOF2022」でみた切削工具・周辺機器は、工作機械同様、CO2削減のためのグリーンテクノロジーとともに工程プロセスの効率化を推進するものが多く見られた。世界のトレンドとなっているEVや半導体産業向けのニーズに沿った製品が豊富に展示され、環境負荷低減のために加工時間を短縮するための取り組みを機械メーカーとコラボをしながらソリューションとして提案していた企業も目立っていた。

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エネルギーの無駄を省き高能率を追求したスペシャル工具を展示していたイスカルジャパン

 EV車の普及を意識したイスカルジャパンの豊富な製品群の中で、「ロジックFグリップ」(LOGIQ F GRIP)とミヤノ機械専用設計のコラボ製品が注目されていた。加工現場では省力化ニーズが高まっており、素早い加工を実行することで省力化を実現する動きがある。突っ切り・溝入れ加工時にブレードにかかる負荷を分散させることでびびりを抑制し、極めて高い剛性での加工ができる製品だ。このコラボにより工具剛性は28倍、送り3倍速が実現した。あっという間に突っ切れるのでエネルギーの無駄を省ける。

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通常のエンドミルの5倍から10倍のスピードで加工できる「ドリミル」を展示したイワタツール

 

 イワタツールはブース内に〝秘密の小部屋〟が設置され、名刺を渡せば開発中の製品が見学できる仕組みに来場者も興味津々。加工スピードの速さに特化したデモに加え、目玉となった製品は、スラストほぼゼロの低切削抵抗を誇っている穴加工用ヘリカルエンドミル「ドリミル」で開発中の製品だ。ヘリカル加工は大きな穴加工も対応でき柔軟に対応できるが、気になるのはスピードが遅いこと。同社はこの点を克服し、「通常のエンドミルの5倍から10倍のスピードで加工ができるので量産にも十分対応できる。」と頼もしい。

 

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画期的な新加工を実現するための工具を展示していたオーエスジー

 小型モジュールの高精度ギヤ加工のニーズが高まっているなか、オーエスジーはシチズンマシナリーとコラボした〝自動盤による高精度歯切り技術〟を展開。新工法である「ラックカッターによるギヤ加工」を推奨していた。この加工は、C軸とX軸を同期させ、上下の折り返し点でZ軸に切り進む歯切り工法で、シチズンマシナリーの特許技術である。このための工具「歯車加工用ラックカッター」を参考出品として展示していた。加工に合わせた最適なコーティングも提案してくれるとのこと。今後も要注目!

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優れたチャックで経済効果が高くなることを示した北川鉄工所

 合理的で無駄のない機械加工を実行するにあたり、重要な鍵を握るもののひとつにチャックがある。北川鉄工所のブースで注目を浴びたのは、省力化に応える高精度チャック「BRシリーズ」だ。ジョー成形直後の把握精度は0.01mm T.I.R.以下。ジョーの浮き上がりも小さく安定した加工品質を実現する。オプションの〝Tuut-Plus〟を使用することでジョー脱着後でも0.01mm T.I.R.以下で、ジョーの再成形は必要ない。段取時間が大幅に短縮されることにより年間約450時間、金額にすると約135万も節約できるという。加工をトータルでみた場合、時間の無駄を省くことは省エネ&経済効果に結びつくということが理解できる展示内容だった。

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段取時間の短縮と熟練作業の緩和に貢献する黒田精工

 無駄なエネルギーを省くためには段取時間の短縮を実行するのが手っ取り早いが、近年は労働人口の減少により熟練作業が難しくなった。黒田精工は〝段取時間短縮と熟練作業の緩和〟を目的とした油圧拡張式クランピングツール「HYDRAULIC-TOOL」を展示していた。この製品は静的油圧により薄肉円筒部品を金属変形させ、ワークをクランプする高精度位置決め治具で、作動ねじを回すだけの簡単操作で誰でも簡単に安定した高精度クランプを実現するもの。オプションの割カラー、割コレットを使用すると本体1台で径違いの複数ワークをクランプすることもできるので、治具集約も実現する。

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デジタルツールの加速を予感させた住友電気工業

 住友電気工業で目を惹いたのは、参考出品の「センシングツール」。これはセンサーで切削力の変化を測定して無線で送信、加工状態を監視ができるもの。実機にはセンサー、電池、無線装置が搭載してあり実ワークで加工状態を測定する。なんだか凄いぞ! メリットは、①垂直荷重、水平荷重を測定ができる、②断続加工でも明確な測定ができる、③剛性は通常の99%を確保、④高感度で微細な変化を測定できること。日本のデジタルツールもどんどん加速していく兆しを見た!

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クリーンテクノロジーを多く展開していたタンガロイ

 ブース内にひときわ目立つ緑色の一角を設け、クリーンテクノロジーを展開していたのはタンガロイだ。工作機械は被稼働時も待機電力を消費していることに着目し、工具交換時間の削減でマシンダウンタイムを短縮する「MODU MINI TURN」(モジュ・ミニ・ターン)を展示。この製品は、シャンクを機上に設置したまま、ヘッド交換のみで段取替えができるもので、ヘッド取り付けねじを外すことで簡単に脱着できスムーズな工具交換が特長。これにより消費電力量は60%削減! 他にも加工時間短縮による使用電力量の削減や、ソリッドからインサート交換式を提案、しかもそのインサートは小型化しており、超硬原材料を削減する環境に優しい工具を展示していた。

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びびりを徹底排除! 新製品群が豊富だった大昭和精機

 

 豊富な新製品群で来場者を魅了したのはBIGでお馴染みの大昭和精機。注目の製品は、ヘッド交換式ホルダでも安定したダンパー性能を発揮する防振機構内蔵の「スマートダンパー スクリュオンホルダ」だ。ダイナミックダンパーによりビビリをシャットアウトするので、仕上げ面が良好で美しい面品位を実現する。剛性と干渉回避に優れたテーパボディも魅力だ。他にもEVがトレンドとなっていることもあり、小型旋盤用の刃先位置測定器「ベースマスターミニ」にも注目が集まった。

 

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「SUSテナブル!」 安定穴形状を持続させる工具を展示したダイジェット工業

 今回のJIMTOFは環境を意識したブースのつくりが目立ったが、ダイジェット工業もサステナブルなものづくりをイメージして緑を多用した爽やかなブースで来場者を迎えた。注目を浴びた製品は超硬コーティングEZシリーズ「ストライクドリルシリーズ」だ。JIMTOF特別版には2~5D/0.1トビサイズを拡張・8Dタイプリールタップ下穴用タイプがあった(本年12月に追加ラインナップ)。キャッチコピーは「SUSテナブルなDRILL」。特にステンレスの穴開け加工において安定穴形状を持続させる工具である。しかも長寿命! 同社のキャッチコピーのセンスに思わず唸ってしまう筆者だった。

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微細工具の先端テクノロジーを豊富に披露した日進工具

 

 微細工具の先端テクノロジーを惜しげもなく展開していた日進工具。参考出品も多数展示しており内容の豊富さに圧倒された。注目したいのは、同社のコアラインであるPCDボールエンドミル「PCDRB」がR3まで登場し、本年12月に規格が拡大するということ。様々な形状に切削加工で磨き時間を大幅短縮できる工具だ。他にも刃先剛性と切りくず排出工場で高精度金型加工を高能率にする無限コーティングプレミアムPlus高硬度鋼高能率加工用小径3枚刃ロングネックボールエンドミル「MRBSH330」も来年1月に規格を拡大して新登場するというから乞うご期待!

 

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単結晶ダイヤモンド工具の威力を見せつけた日新ダイヤモンド

 樹脂・非鉄金属まで鏡面が切削で完結する「単結晶ダイヤインサート」を展示していたのは日新ダイヤモンド。アクリル樹脂などを鏡面で仕上げようとすると、超硬やPCDだと切削+バフ研磨かガス研磨の工程が必要だが、単結晶ダイヤ工具を活用すれば切削のみで完結するので加工時間と工程が大幅に短縮され省エネにも貢献する。加工サンプルに定規が展示されていたが、加工面の曇りがまったく見当たらずピカピカだった。これは単結晶ダイヤモンドだからこそシャープなエッジが実現し、ワークにそのまま転写されることによる。単結晶ダイヤモンド工具のサステナブルな強みを改めて認識させられた。

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画期的な工具設計が強みの不二越

 不二越は「ものづくりの世界に革命を起こす」をテーマにした工具群をズラリと展示。注目は人気の「アクアREVOミル」に〝ステンレス用〟が新たに登場したことである。新開発の溝形状〝エアーフルート〟を採用し、圧倒的な切りくず離れとクーラント冷却効果にて工具刃先への加工熱を抑制するので、高能率加工と工具の長寿命を実現している。また、切削速度や送り量を上げても噛み込みによる傷を心配する必要もないので、高品位な加工面が実現できる。

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自動化に絶対必要なのは〝安心感〟。これを実現するための工具測定と管理の分野で強みをみせたブルーム-ノボテスト

 製造現場における生産ラインはデジタル技術を用いた自動化がトレンドだが、安心したものづくりに欠かせない製品の数々を展示していたのがブルーム-ノボテストだ。特に工具測定&管理の分野では同社のレーザ式測定システム「LC50-DIGILOG」に注目が集まった。回転工具の刃先をレーザで遮光させ測定データを連続的に取得することで高速な測定が可能になった。他にも測定結果を視覚化する「LC-VISION」では測定中により多岐にわたる記録された値を、解析用ソフトウェアを用いることによりリアルタイムで視覚化および分析可能としている。

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豊富な製品群のなかでもこの新ドリルシリーズは技術の玉手箱! 大注目の三菱マテリアル  

 穴あけ加工に一石を投じたのは三菱マテリアルだ。新ドリルシリーズ「TRISTARドリルシリーズ」の第一弾を展示しており注目を集めていた。「待ちなし、折れなし、曲がりなし」のキャッチで細穴加工の常識を変える小径ドリルである。なんとドリル径×50倍の超深穴も数秒で加工、しかも多くの穴を、より真っ直ぐ、より正確な穴に加工してくれる。この鍵を握るのは、同社独自で進化したクーラント穴形状(TRI-Coolingテクノロジー)とタフでエッジの利いた切れ刃デザイン、そして新材種「DP1120」のなせる技であった。

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画期的な新工法で加工の無駄を提案したMOLDINO

 荒加工によける加工時間を大幅短縮し、工具の集約とダウンサイジングを実現したのがMOLDINOだ。近日発売予定の高能率側面切削用エンドミル「ER5HS」に加え〝負荷制御ツールパス〟を活用すればこれが実現するという。これにより等高線加工から高能率側面切削への変更を提案、刃長をフルに使うことで加工時間短縮と工具寿命の向上を両立するという。その効果は等高線荒加工と比べて加工時間はなんと65%削減! また、ヘリカル穴開け・繰り広げ・溝加工も「ER5HS」1本に集約できる。加工の無駄を排除しながら高精度と経済効果を高めるノウハウを見ることができた。

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経済的効果をもたらし脱炭素社会への貢献につながるチャックを展示したユキワ精工

 SDGsを意識した展示も多い今回、爽やかな緑色のブースで目を惹いたのはユキワ精工。目玉商品は「G1チャック」だ。この製品を活用すればビビリが低減するので不良品や工具使用量が削減するとともに機械のダウンサイジングやサイクルタイムの短縮なども実現することから、加工現場の省資源、省エネルギーの実現にはチャックも重要な役割を果たしていることが分かる。加工の工程および時間を短縮しながら高品質な加工を実現する「G1チャック」から脱炭素社会への貢献につながるという好循環! ブース内も賑わいを見せていた。

 

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