天田財団「2022年度助成式典」を開く

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 天田財団(代表理事理事長=末岡愼弘氏)が、12月3日、日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホール(東京都千代田区)で「2022年度助成式典」を開いた。今年で35年目を迎えた同財団による本年度の助成は90件、総額2億6,631万円となった。設立から約1,000名を超える研究者への累計助成金額は37億696万円、累計助成件数は2090件となった。

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あいさつする末岡代表理事理事長

 あいさつに立った末岡 代表理事理事長は、「金属加工というものづくりを通じて継続して世界の人々の豊かな未来を実現することがアマダグループの責任かと考えている。この思いから天田財団は金属加工に関する研究開発による助成により、産業、経済の発展に寄与することを目的として1987年に企業財団として設立され、今年で35年目となる。」と財団の目的を話したあと、「今年はロシアのウクライナ侵攻により、世界経済は大きなダメージを受けており、インフレーションの加速や日本ではスタグフレーションの懸念も高まっている。先行きの不透明感が増している一方、科学技術の分野ではデジタルトランスフォーメーションの対応や、SDGsの達成、カーボンニュートラルの実現など、技術的な課題が山積している。私は科学技術のイノベーションこそが課題を解決して次の時代を切り開く原動力ではないかと考えている。近年、自然科学分野における日本の地盤沈下が顕著だと指摘もある。また、大学院の博士号取得者が減少傾向にあるともいわれている。第一線で活躍されている研究者の皆様にとってこのようなわが国の研究開発環境に様々な課題や不安を抱えているものと拝察している。特に若手研究者の人材育成や研究資金の確保は喫緊の課題ではないか。天田財団が目指していることは若手研究者を育成することに加え、研究成果を産業界へ普及啓発し、社会実装に繋げることである。」と声援を送った。

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磯部アマダ社長

 続いて、磯部 仁 アマダ社長が、「わが国の企業を取り巻く環境は、激変の様相を呈している。新型コロナウイルスの影響は世界的にみると中国など一部の地域を除いて、経済面では収束の方向に向かっている一方で、ウクライナ侵攻など地政学的な課題や、半導体を中心とする各種部品の供給不足はわれわれ製造業にいまだ大きな影を残しており、加えてエネルギーコストの上昇、脱炭素のものづくりや各種DX、デジタルへの対応など企業経営にとって課題山積という曲面を迎えている。このような中で、機械メーカーであるアマダグループにおいても様々な対応と対策に追われているところだが、幸い足元の設備需要の回復には非常に力強いものがある。」と述べたあと、中間決算にも触れ、「半期ベースで売上、営業利益ともに過去最高を更新した。やはり最新のテクノロジーを搭載したマシンや深刻化する労働力不足を背景とした自動化設備への要望は日本のみならず、世界的にも非常に強いと実感している。本日ご列席の先生方に関しては研究活動を通じて、日本発の新たな技術や理論の構築に取り組んで頂き、企業のイノベーション喚起にご尽力いただければ幸いである。」と力強くあいさつをした。

 続いてビデオメッセージにて文部科学省 科学技術・学術政策局 井上睦子 産業連携・地域振興課長が祝辞を述べた。

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総評を述べた青山天田財団理事 慶應義塾大学名誉教授

 2022年度助成金目録贈呈式に先駆け、天田財団理事 慶應義塾大学 青山藤詞郎 名誉教授が総評を述べた。これによると、「塑性加工分野は、機械、加工、材料に関連する学会に所属されている研究者、レーザプロセッシング分野は物理、レーザ、機械に関連する学会に所属されている研究者がそれぞれ多くなっている。本来の研究開発に対する助成領域は金属の加工なので、機械関連技術に係わる研究者が多く申請されている。2019年からの申請者の推移もこの傾向は同様である。また、本年度初めて採択された助成者の比率はレーザ分野が40%、塑性加工分野が18%となった。申請者の年齢構成だが、両分野とも39歳以下の若手研究者枠を設けており、それを加えて申請者の平均年齢を算出した。両分野とも平均が48歳前後であった。申請者の平均年齢を過去3年と比べると若干本年度は上がった。」とした。

 助成先機関については、「大学が137校、高等専門学校43校、研究機関34機関、学会17学会と多岐にわたる。本年度の助成先機関は大学が75%、公設試験研究機関が20%、高等専門学校が5%となっている。」と述べた。

 天田財団は、助成研究成果を社会や産業に還元すべく、普及啓発にも積極的に取り組んでいる。近年オンラインジャーナルでの掲載や、関連する公共展示会における配布活動も行っている。

 2022年度助成金目録贈呈式が行われたあと、講演会が開催され、その後、交流会が開かれた。
 

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