【年頭所感】(日本産業機械工業会/日本工作機械工業会/日本機械工具工業会)

「世界の脱炭素に向け貢献」
■日本産業機械工業会 会長 斎藤 保

230101産機工会長 2023年を迎えるに当たり、新年のごあいさつを申し上げます。

 皆様には、気分も新たに新年を迎えられたことと思います。

 昨年を振り返りますと、北京冬期オリンピック・パラリンピックでの日本選手の活躍や、カタールで開催されたサッカーワールドカップでの日本代表の果敢な戦いぶりは、新型コロナ禍で疲弊していた我々に、勇気と感動を与えました。

 昨年の世界経済は、欧米等においては、コロナ禍からの急激な経済回復から、景気の過熱状況が生じ、政策当局は、大規模な金融引き締めを継続して実施しました。また、この需要の急激な拡大や、それ以前からの脱カーボンの推進により、資源エネルギー原材料の需給は逼迫し、価格の世界的な高騰が見られました。そこにロシアのウクライナ侵攻と、それに伴う経済制裁やその反抗により、この資源エネルギー、原材料の需給逼迫、価格の高騰は、厳しさを増しました。

 更に、中国におけるゼロコロナ政策、都市封鎖の実施は、中国経済を停滞させ、世界のサプライチェーンをより脆弱化させる事態となり、世界経済のリスクを拡大させました。
今年の世界経済は、欧米等の急激な金融引き締めによる景気後退リスクの高まりや、中国におけるゼロコロナ政策が急激に緩和されたことに伴う社会経済の混乱といったことから、下振れリスクを強く感じさせる状況といえるでしょう。

 我が国においては、欧米等に遅れながらもウィズコロナへと舵を切った一年でした。輸出や生産が持ち直していく中で、景気は緩やかに回復していきましたが、エネルギー・資源価格の高騰や半導体をはじめとする部材不足などは、企業の事業活動に大きな影響を与えました。

 また、電力需給の逼迫により、今冬は7年ぶりに節電要請が実施されているなど、日本が抱えるエネルギー構造の脆弱性が映し出された一年でもありました。一方、2022年度上半期の産業機械受注は、受注総額が2兆6,190億円と内需・外需ともに前年同期を上回る回復が続きました。国内では製造業を中心にコロナ禍で先送りされていた設備投資が再開され、海外では欧米をはじめ、アジア、中東などでの需要が堅調に推移いたしました。特に、半導体やEVバッテリーなどに関連する化学機械やプラスチック加工機械、運搬機械等の分野において伸びが見られました。

 さて、2023年は、半導体等の部材不足、電力料金の高騰などの課題が継続している一方で、グリーン・トランスフォーメーション(GX)や、デジタル・トランスフォーメーション(DX)への対応が更に進展する、我が国にとって正にターニングポイントの一年になると考えます。

 特に、GXは、年末に政府がまとめた「GXの実現に向けた基本方針案」において、今後10年のロードマップが示されています。水素・アンモニアについては、制度構築やインフラ整備を進めるとともに、大規模かつ強靱なサプライチェーン構築への支援が示され、原子力発電に関しては、着実な再稼働や運転期間の追加的な延長、次世代革新炉の開発・建設が検討されることとなっています。

 そうした中、我々産業機械業界としては、水素、アンモニア、CCUSなどの脱炭素・低炭素に関する優れた技術や製品、サービスを広く提供していくことにより、我が国のみならず世界の脱炭素に向けて、一層の貢献をしてまいります。

 政府におかれましては、コロナ禍からの回復途上にある我が国経済が失速することのないよう、各種施策を着実に実行していただくとともに、エネルギーの安定供給や、国内投資拡大のチャンスとなるGX・DXの推進といったアフターコロナ時代を見据えた日本経済の持続的成長に欠くことの出来ない中長期的な課題に対して、スピード感をもって取り組んでいただくことを期待しております。

 年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

「グリーン・デジタル・レジリエンスがキーワード」
■日本工作機械工業会 会長 稲葉善治

230101日工会会長 2023年の新春を迎え、謹んで年頭の御祝詞を申し上げます。

 さて、昨年を振り返りますと、米中対立、ロシアによるウクライナ侵攻をはじめとする世界各地域での地政学的リスクの顕在化などにより、世界情勢は不透明・不確実な状況が続きました。製造業界においては、原燃料価格が高騰し、部材・半導体等の需給がひっ迫する深刻な状況に直面しました。しかしながら、設備投資はデジタル化、自動化、省エネ・環境対応に関連した根強い需要を背景に、好調に推移しました。2022年の工作機械受注は、9月に上方修正致しました1兆7,500億円に達したと思われます。

 我が国工作機械産業の最大のイベントであるJIMTOFにおいては、昨年11月に東京ビッグサイトで記念すべき60周年となるJIMTOF2022を開催致しました。4年ぶりのリアル開催で、新たに南展示棟を加えた過去最大規模の展示を行い、国内外から11.4万人の来場者にお越し頂き、世界のユーザーの皆様に、日本が誇る最先端の工作機械技術・製品を発信致しました。当会は、工作機械メーカーのスマートファクトリーで展開されている先端的な取り組みを紹介する企画展示、最先端のアディティブマニュファクチャリングの製品情報や活用事例を紹介する「金属AMセミナー」、全国から学生を招待して工作機械産業の意義や役割りを講義する「工作機械トップセミナー」、などの開催を通じて、工作機械産業の魅力を社会にお伝え致しました。

 本年においても、世界情勢は政治的・地政学的緊張状態を背景とした分断化が継続し、経済成長も下振れリスクを伴う不透明な状況を想定せざるを得ません。しかしながら、その状況にあっても、製造業では、カーボンニュートラルに対応する省エネや環境対策、AI・IoT技術を駆使し更にロボット技術と融合させた生産システム全体の省人化・効率化、そして、企業立地や調達チャンネルの見直しによるサプライチェーンの再構築という、グリーン・デジタル・レジリエンスをキーワードとする取組みが力強く推し進められています。これにより、withコロナの施策が進む中で産業や社会の構造変化も進展していくと確信しております。

 日本の工作機械産業は、世界をリードする高機能で信頼性の高いモノとしての工作機械でコトづくりを支え、世界の製造業の発展に貢献して参ります。関係各位には当工業会の事業に対する一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。

「ものづくり関連団体とコラボレーションを加速」
■日本機械工具工業会 会長 田中徹也

230101機械工具会長  新年明けましておめでとうございます。皆様におかれましては恙なく新しい年をお迎えの事とお慶び申し上げます。また、平素からのご支援、ご協力に対して心より感謝申し上げます。

 昨年は新型コロナウイルスの経済的影響が徐々に低下してきた事や、半導体部品の供給が徐々に改善されてきた事などポジティブな動きがあった一方で、ロシアのウクライナ侵攻に伴うヨーロッパ経済の失速、ロックダウン政策による中国経済の減速、資源・エネルギー価格の上昇や物流費の高騰などのネガティブな動きもありました。また年間を通して円安が進行した事も大きなインパクトとなりました。

 日本機械工具工業会は2020年の8月を底に順調に右肩上がりの回復を続け、2022年4月から9月までの上半期累計生産金額実績は2,486億円(対前年同期比108%)、下半期の見込みは2,513億円(対前年同期比105%)、年度見通しは4,986億円(対前年比106%)となっております。年間見通しを予測した時点から上期は12億円程上振れましたので、年間では2018年度以来の5,000億円の大台も視野に入ってきました。

 昨年、正会員へ実施したアンケート「機械工具観測調査 DI値(Diffusion Index景気動向指数)」によりますと、

 ・2022年下期生産額は足元より増加予測で内需・外需共に先行きは良化する 
 ・業種別では自動車・一般機械向けは増加傾向
 ・外需地域別ではアジア・北米は増加、欧州は減少

 の結果となりました。また、長期化する国際紛争とそれに起因する資源高騰などを考慮すると、経済環境の完全回復は2023年度以降になると予想する回答が多くを占めました。

 今年の我々を取り巻く経済環境は、米国の利上げによる景気後退のリスクや半導体産業の減速が見られ始めた事、中国や欧州の経済回復にも時間を要するであろう事などから引き続き注視が必要です。工作機械の受注動向からみても設備投資は昨年より大きく伸びる可能性は高くはないと思われますが、今年は投資された設備の稼働率の向上に伴って機械工具の需要はまだまだ成長の余地があると考えています。また、リアルな対面でのビジネスは昨年以上に活発に行われるでしょう。昨年11月に行われたJIMTOF2022での来場者数も11万人を突破し、2020年のオンライン開催時の5万人を大きく上回る結果となった事からもリアルでのコミュニケーションが、ものづくり産業にとって重要である事が再認識されました。

 中長期的な視点で当工業会として取り組んでいくべき課題としては、

 ・自動車の電動化に伴う工具需要の減少が見込まれる事から会員各社が海外市場に展開する道筋(例えば海外展示会出展など)をサポートする仕組みを整える事
 ・ものづくりの現場から販売の現場まで、あらゆる場面でデジタル化が進展しているため会員各社が乗り遅れないように支援する事
 ・「カーボンニュートラル」を目指し脱炭素社会の実現も重要な社会的使命と認識し取り組んでいく事
 ・日本工作機械工業会、日本ロボット工業会、日本工作機器工業会、日本精密測定機器工業会、日本工作機械販売協会などのものづくり関連団体とのコラボレーションを加速する事

 であると考えています。

 最後になりますが、日本経済の益々の発展と皆様のご健勝を祈念いたしまして年初のご挨拶とさせていただきます。


 

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