「今年は緩やかな調整局面はあっても大崩れには至らない」日本工作機械工業会が賀詞交歓会を開く

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あいさつをする稲葉会長

 

 日本工作機械工業会(会長=稲葉善治 ファナック会長)が1月11日、都内のホテルニューオータニ ガーデンタワー(東京都千代田区)で賀詞交歓会を開いた。

 あいさつに立った稲葉会長は、2022年を振り返り、「昨年の国内外の情勢を振り返ると、米中対立の先鋭化、ロシアによるウクライナ侵攻をはじめとする世界各地域での地政学的リスクの顕在化、およびコロナのパンデミックなどにより世界情勢は不透明、不確実な状況が続いている。製造業においては、原燃料価格が高騰し部材、半導体の需給が逼迫する深刻な状況に直面した。」と感想を述べ、昨年の工作機械の受注については、「設備投資はデジタル化、自動化、省エネ、環境対応に関連した根強い需要を背景に好調に推移した。その結果、2022年の工作機械受注は、9月に上方修正した1兆7,500億円に達した模様。」とした。

 また、工業会の活動についても触れ、「10年ぶりに工作機械産業の戦略リポートである工作機械産業ビジョン2030を発行し、11月にはJIMTOF2022を、4年ぶりに開催した。今回で60周年を迎えたJIMTOFには、国内外から11万4,000人の来場者があった。日本を誇る最先端の工作機械とその最新技術を世界に向けて発信した。当会は、工作機械メーカーのスマートファクトリーでの先般的な取り組みを紹介する企画展示、アディティブ・マニュファクチャリングの製品情報や活用事例を紹介する金属AMセミナー、および全国から学生を招待して工作機械産業の意義や役割を講義する工作機械トップセミナーなどの開催を通じて、工作機械産業の魅力を社会に発信した。」と述べた。


今年は1兆6,000億円の見通し

230203日工会稲葉会長2 今年の受注額の見通しについては、「ウイズコロナにあって政治的、地政学的緊張状態を背景とした分断化が継続し、経済成長も下振れリスクを伴う不透明な状況を想定せざるを得ない。欧米等でのインフレ、利上げ、中国での景気減速懸念や新型コロナウイルスの感染拡大などにより、設備投資はしばらくの間、若干落ち着いた展開となる可能性がある。製造業ではカーボンニュートラルに対応する省エネや環境対策。AI、IoT技術を駆使し、さらにロボット技術と融合させた生産システム全体の省人化、効率化、生産拠点の分散化や調達チャンネルの見直しによるサプライチェーンの再構築等の取り組みが力強く押し進められている。半導体、製造装置関連需要など少し先を見据えた商談が活発に動いている分野もあり、本年の工作機械受注総額はリスクが大きなかたちで顕在化しない限り、緩やかな調整局面はあっても大崩れには至らない。したがって、2023年の工作機械受注額は総額1兆6,000億円になるとの見通しである。」との見方を示した。

 また、昨年と比較して、「低いと感じられるかもしれないが、2022年は2020年、21年とコロナ禍により大変苦労したので、私として1兆6,000億円は大変大きな数字だと感じている。まずは1兆6,000億円をターゲットとして、今年の夏にはまた上方修正ができれば良いと考えている。ぜひこの数字を目標に頑張っていく。」と明るい見通しを述べた。

 近年のデジタル技術の普及については、「モノづくりからコトづくりへと発展していくとの見方がある。コトの需要を開拓していくにはしっかりとしたモノがあることが大前提であり、片方の進化だけでは大きな発展は望めない。日本の工作機械産業は、モノとして素性の良い工作機械を生産できるという特色と強みを持っている。この強みを将来にわたって継承し、世界をリードする高機能で信頼性の高い工作機械の供給を通じてモノづくりとコトづくりを融合することで、世界の製造業の発展に貢献していくことができると確信している。」と力強く述べた。

230203日工会稲葉会長3 本年の同工業会の活動については、「昨年来より取り組んでおりますグリーン、デジタル、レジリエンスの3分野への取り組みを各委員会が中心となり、さらに内容を進化させていく。グリーンについては、工作機械製造にかかる調達から使用、廃棄までのLCA化を推進する。デジタルについては、生産現場での自動化要求に対応していくための使用機能の指針について検討を進めていく。レジリエンスにつきましては、サプライチェーン強靱化に資する業界の知見向上を目指して活動を進めていく。産学官の英知を結集し、技術、市場、経営、人材の4つのテーマについて検討を加えた工作機械産業ビジョン2030には、この3分野をはじめ業界の取り組むべき課題と工作について多くの示唆が盛り込まれている。日本の工作機械産業の国際競争力の維持、強化のため、それを具現化する取り組みも進めていく。」とした。

「われわれは歴史の転換点にいる」 経産省 山下 製造産業局長

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来賓を代表してあいさつをする経産省 山下 製造産業局長

 来賓を代表して、経済産業省 山下隆一 製造産業局長があいさつをした。山下局長は、 「われわれは歴史の転換点にいると感じている。デジタルの力で世界はもう少し近くなってくる。世界の情報が個人ベースでも毎朝入ってくるような状況だ。こちらからも発信ができるので世界はつながっていくと確信をしている。ショックを受けたのは世界の秩序が一瞬の元に揺らいだロシアのウクライナ侵攻だった。同時に、新型コロナウイルスのパンデミック状況が長い時間続くなど、当初は考えておらず、どうやって共存していくかという状況になっている。このコロナの問題はまず、サプライチェーンの問題と国境や、国と個人の関係についても、改めて考えさせられた。」と昨年を振り返った。

 地球環境問題にも触れ、「化石燃料で人類は繁栄をしてきた。蒸気機関以降、化石燃料の上に乗って繁栄を築いてきたが、これらを止めて全く違うかたちの反映を目指す。これは人類を挙げてのチャレンジである。こういう状況の中で日本は同時に人口減少の状況に入っている。一つ一つが非常に難しい課題だが、この問題を誰かの問題ではなくて、われわれそれぞれの問題だと思う必要があると思っており、後世の歴史から見た時に、あの時にあの問題にさらされた人たちは一体何をしてたんだ、どんなアクションをしたんだということを、後世から問われるんだと感じている。」と述べた。

 現在の日本の環境については、「残念なことに日本はまだデフレの宿題を返していない状況である。まずは、このデフレの宿題をきちんと終わらせて、この難しい課題に挑戦をしていくモードに変えていく必要がある。昨年末に経済界から5年後には年間100兆円もの国内投資をするという見通しを示された。これは非常に心強い。民間の方々が心強い意思を示されたということはこれまであまりなかったことであり、皆さんの意欲を上手に生かしていく必要がある。われわれがこの民間の力を支援して、投資をイノベーションにつなげていく。そのイノベーションを生産性の向上につなげていく。生産性の向上を所得の向上につなげていく。この国の経済を上手なかたちで循環させていくことが非常に重要だ。そのために、昨年、補正予算ということで7兆円も投資に関する補正予算を編成している。これをぜひ、活用していただければと思う。」と力強く述べた。

 また、福島の復興についても触れ、「福島の復興を円滑にやり遂げるためには今度、アルプス処理水の海洋放水の準備をしているところであるが、これをうまく進めていくためには漁業者の皆さまが安心して事業を継続できる環境をつくり上げていくことが極めて重要であり、昨年末に〝魅力発見!三陸常磐ものネットワーク〟という官民の枠組みを作り上げた。これが大きな消費につながっていくことを期待している。」と述べた。
 

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