日本工作機械工業会「第13回定時総会」開く

 日本工作機械工業会(会長=稲葉善治 ファナック会長)が、5月30日、東京都内のホテルニューオータニで「第13回定時総会」を開催した。総会終了後の懇親会では、参加者の親睦が深まった。

稲葉会長あいさつ要旨

230630日工会稲葉会長

 昨今の世界情勢は米中対立の鮮明化、長期化、そしてロシアのウクライナ侵攻、東アジア、中東をはじめとした外交、地政学的リスクの顕在化など、政治、経済、社会の各側面で不安定な状況が続いている。為替の円安傾向や世界的なインフレなど、世界経済の減速懸念もあり、先行きに不透明感が感じられる中、本年1月から4月の工作機械受注累計額は5,269億円で、これを3倍いたしますと1兆5,800億円になる。年商見通し1兆6,000億円を幾分下回るペースで、やや足踏みが見られるが、自動化、デジタル革新、省エネ、環境対策といったニーズに後押しされ、この水準を維持していると言える。

 受注環境は、市場や業種による濃淡が見られるが、半導体製造装置や自動車EV関連の将来的な設備投資、インドをはじめとするアジア新興市場の成長、サプライチェーンの強靱化や製造拠点分散化見直しの動きなどを踏まえると、工作機械市場は十分成長力を有している。今後も受注獲得に鋭意注力していく所存である。

 昨年度は、延期していた当会創立70周年式典を開催したほか、2020年代の工作機械業界の戦略リポート、工作機械産業ビジョン2030、また、創立70周年記念誌を発行した。JIMTOF2022は、国内外から11万4,000人の来場者を得て、4年ぶりにリアルで開催し、会期中、工作機械トップセミナーや国際工作機械技術者会議なども実施した。当会が取り組むべき重点課題として掲げた3項目である、デジタル、グリーン、レジリエンスについても委員会での活動を中心に検討を進めてきた。

 デジタルにつきましては、生産システムの自動化を推進するため、工作機械の仕様、機能の指針策定に向けた活動を進めていく。グリーンにつきましては、会員各社の省エネ活動を強化すべく、前期策定した工作機械のLCAガイドラインの活用を促進していく。レジリエンスにつきましては、EPAの活用を促進していくほか、グローバルな視点で将来有望な海外市場、需要産業の動向について調査、研究を進めていく。輸出管理や経済安全保障分野などについても鋭意情報収集を進め、複雑化する通商関係に適宜、適切に対応していく。

 2024年秋に開催する「JIMTOF2024」については、デジタルツール活用による情報発信力の強化、海外企業の受け入れ、社会一般の方々に対して、工作機械産業の役割や魅力を訴求する企画などについて推進していく。

 また、工作機械産業ビジョン2030で指摘された、業界が取り組んでいく課題についても具現化を進めていく。これらの事業を円滑に進め、今後もわが国の工作機械産業が長期的な視野に立って持続的な発展の実現を目指すとともに、世界の製造業の発展にも貢献していく。

経済産業省 山下製造産業局長 あいさつ要旨

230630山下局長

 コロナが5類になってから街はにぎわい、平常モードに変わってきた一方で、今回のパンデミックおよびロシア・ウクライナ問題でグローバルに様々な危機があったと改めて痛感した。振り返ると、特に日本にとって大きかったのは、エネルギーの危機であったと感じている。また、食料の危機も起こり、サプライチェーンの動きにも驚かされた。物流も含めて、非常に苦しんだ。世界をつくっている経済の秩序というのは、今と前とでは大きく変わったのだと改めて強く思っている。

 自由貿易というのは、世界を繁栄に導いた、人類がつくり出した多大なる財産であり、非常に重要だ。自由貿易を守っていくのは非常に大切なことだが、その一方で、世界は現在、様々なリスクの中にある。自由貿易に参加するには、自らのリスクを把握し、どうリスクに備えていくかが非常に重要だと考える。

 正しい秩序の枠組みをつくっていくのは、民間の方々だけでも日本政府だけでできるものではなく、世界の様々な国と、同志国をはじめとする様々な国と枠組みをつくっていく必要があると感じている。

 まずはエネルギーだが、エネルギーの置かれた状況は各国で違うので、これをお互いに理解し、補完し合いながら安定供給をしていくための枠組みをつくっていく必要があるだろう。重要な新しい技術についても、半導体、量子、バイオ、オート、グリーンなど重要技術があるが、こうしたものを国際的な枠組みの中でお互いに補完しながら、きちんと枠組みをつくっていく必要があるだろう。

 重要物資のサプライチェーンについては、レアメタルにも代表されるが、経済的威圧に対応していくのも国際的な枠組みで取り組まなければ、個別の国で対応するのはなかなか難しい。今後、具体的な作業に入っていくには、官民挙げて実行していく必要がある。

 国内に目を転じると、大きく変わってる点がある。その1つに設備投資があり、今年度の政府の見通しは103.5兆円である。経団連会長は、2027年の目標として、国内投資を115兆円としており、大変大きな数字である。賃金についても連合が5月10日に発表した数字では、賃上げ率の荷重平均3.67%ということで、30年ぶりの数字であった。物価も直近(5月発表)ではコアコアCPIは4.1%となった。物価がデフレの状況、あるいは賃金が上がらないなど、国内に投資が起こらないという状況から、明らかに変わってきてると思う。この変わってきている状況をチャンスとして捉え、正の循環に回していくことが求められているように感じる。

 経済産業省は、経済産業政策の新機軸というものをこの2年ぐらい打ち出している。これはグローバルな社会的な課題について、ミッション思考で大規模に長期的に計画的に実行していくということである。この中の典型例にGXがあり、GXの枠組みの中で20兆の支援策をつくっていくための作業が始まる。DXも、半導体と次世代の計算基板というものに2兆円超が準備してあり、5,000億の蓄電池の予算も準備されている。世界が日本を見る目も変わっており、日本を投資先、あるいは生産の拠点にしていこうという動きも非常に強まっている。大切なことは、官も一歩前に出るので、ぜひ、この機に、皆さんも一歩前に出ていただければと考えている。

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