日本機械工具工業会 秋季総会並びに2023年度日本機械工具工業会賞表彰式を開催
日本機械工具工業会(会長=五島 康 不二越執行役員)が、10月26日、ホテル金沢(石川県金沢市)でWeb併用方式にて秋季総会並びに2023年度日本機械工具工業会賞表彰式をWeb併催方式で開催した。翌日27日は、小松製作所(以下コマツ) 粟津工場の組立工場を見学した。
第一部の総会では、新規入会会員の紹介、2023年度「日本機械工具工業会賞」の発表、各委員会報告の他、2023年度機械工具生産額改訂見通しなどの報告、WCTC(世界切削工具会議)2024に向けた報告があった。
五島会長は日頃の感謝の意を表したあと、「中国経済の急激かつ大きな減速、ロシア、ウクライナ紛争の長期化な要因で輸出が減少したが、当業界の目標は生産金額5000億円である。それを達成させるためには自動車産業での工具市場をいかにして取り込んでいくかが鍵になる。今後、EV向けの工具開発、需要開拓に取り組む必要があるかと思う。」と意気込みを示したあと、本年10月にポートメッセなごやで開催された〝メカトロテックジャパン2023〟について触れ、「生産性の向上や環境に配慮した工具、部品構造の変化に伴う被削材に対応した工具など、お客様のニーズに対応した様々な工具が出品された。世界のものづくりを支えて革新していくことで業界の活性化につながっていくことと期待をしている。」と述べた。
来賓のあいさつ並びに経済産業省直近の施策について経済産業省製造産業局の川内拓行産業機械課長補佐がWebで述べた。
第二部は、日本機械工具工業会賞表彰式が行われた。今年度は業界功労賞1件、技術功績大賞1件、技術功績賞4社6件、技術奨励賞1件、環境大賞1件、環境賞1件、環境特別賞1件(受賞内容は下記に掲載・敬称略)。表彰式が行われたあと、受賞者を代表して、堀 功氏(元、不二越)が謝辞を述べた。
2日目は、コマツ・粟津工場内の組立ラインを見学した。また、切削工具のエンドユーザーであるコマツからは切削工具への要望なども述べられた。
2023年度日本機械工具工業会賞『業界功労賞』
〇堀 功 (元(株)不二越)
業界経歴
2011年6月~2013年6月 日本工具工業会 副理事長 2年
2013年6月~2015年6月 日本工具工業会 理事長 2年
企業経歴
2011年2月 執行役員工具事業部長
2013年2月 取締役工具事業部長
2014年2月 常務取締役工具事業部長
2015年2月 常務取締役技術開発担当
2017年5月 同社退職
功績の概要
氏は2011年6月に旧、日本工具工業会副理事長に就任。2013年5月にアジア圏で初開催となった世界切削工具会議(WCTC2013)京都会合では、両団体により設立した日本切削工具協会(JCTA)の実行副委員長として、成功裡に導くなど日本の機械工具業界の振興発展に尽力した。
同年6月から日本工具工業会理事長に就任し、超硬工具協会とともに機械工具2団体統合へ向けた「統合推進委員会」を立上げ、議論を開始した。お互いに切磋琢磨しながら向上し続けることが日本の産業界を牽引する責務であるとの考えに基づき、両会員の融合へ内外調整に力を注ぎ、2015年6月に「日本機械工具工業会」設立を実現させた。
技術功績大賞
「高熱膨張ガラス成型金型用新硬質材料の開発
●冨士ダイス(株) 小椋 勉、三守秀門
【新規性】
高熱膨張を有する新硬質材料の開発により、新しい超高精度ガラス成形を実現した。近年、自動化機器(自動車、ドローン、監視システム)の実用化に伴い、赤外線透過レンズの需要が高まった。そのレンズガラスの熱膨張係数(9 MK以上)は一般ガラス(6~8 MK)より大きいため、従来の金型材料(4~5 MK)ではガラス成形することができなかった。従来に思想にとらわれない新しい合金設計の下、優れた鏡面性と高熱膨張係数(9 MK)を兼備した新硬質材料を開発した。
技術功績賞
「高硬度鋼加工用汎用cBN「KBN020」の開発」
●京セラ(株) 森 聡史、磯部太志、七原広之
【新規性】
同開発は、焼入れ鋼切削に必要となるcBN工具において、断続から連続加工の幅広い汎用領域での加工実現を目的として行った。同製品は、高含有cBN母材に高耐摩耗PVD膜を成膜することで長寿命化を図った。高含有cBNはPVD膜の密着性が悪いことが知られているが、高密着力の下地層を成膜することで解決した。また、母材焼成プロセスも見直し、高熱効率でのcBN母材生産も可能にした。
「新ねじ切り旋削加工方法OptiThreadingの開発」
●サンドビック(株) 河田洋一
【新規性】
同開発は旋削ねじ切り加工における新たな加工方法の提案と、その加工に必要な工具の動き(ツールパス)を作成するソフトウェアサービスである。旋削ねじ切り加工は、その性質上、加工条件が自ずと制約されており、加工条件を自由に選べる自由度が低い。その結果、加工中の切りくずは分断されず長く伸びがちになり、これが工具やワークへ絡み付き、様々な問題を引き起こす。本開発の新たな加工法では、この切りくずを効果的に分断することを目的としている。
「難削材転削用材種ACS2500/3000の開発」
●住友電工ハードメタル(株) 鈴木優太、深江恒佑、中山裕博
【新規性】
近年、航空機、石油ガス、医療産業等において、その機器や部品には耐熱性や耐食性に優
れるNi基、Co基、Ti合金等の材料が多く使用されている。これらは熱伝導率が低く難削材と呼ばれ、切削加工の際は高い高温強度や反応性も相まって、工具の寿命が著しく低下する問題がある。そこで同社ではこのような難削材の転削加工において、安定長寿命かつ高能率加工を実現する新しい工具材種「ACS2500」および「ACS3000」を開発した。
「非鉄金属加工用マルチドリル『MDA型』の開発」
●住友電工ハードメタル(株) 高橋洋一、西 健太、田林大二
【新規性】
自動車産業をはじめとする各種機械部品において、小型・軽量化を目的にアルミニウム合金など軽材料へ置き換えが進んでいる。その中で切削工具には生産性と品質向上のための高能率条件下での高精度加工に加え、加工負荷の低減やコスト削減のための長寿命化が要求されている。同製品は穴あけ加工に対してこれらの要求に応えるべく、求心性と工具剛性を大きく向上した新形状設計に、新開発のDLCコーティングを組合わせることで、従来製品に対し約2倍以上の高送り(Φ6.0/Vc180m/min/f1.2mm/rev)加工においても高精度加工と加工負荷の低減及び長寿命化を実現した。
「高能率旋削工具ADD Multi Turnの開発」
●(株)タンガロイ 井田雄大、坂内由昌
【新規性】
同開発品は、外径・端面のみならず、倣い・ヌスミ・仕上げ加工なども可能な高能率旋削工具である。従来ISO工具に対し、後挽き高送り加工による生産性の向上が大きな狙いであるが、新しいインサート形状とクランプ機構の採用により、前挽きとの交互加工および倣い・ヌスミ・仕上げなどの多方向加工に対応し、安定性が向上したことによって、非切削時間や工具管理本数の削減も提案できる。6コーナインサートであり、環境にも配慮している。
「高能率工具『AddForceBarrel』の開発」
●(株)タンガロイ 阿曽孝洋、堀 一生、北川尚史
【新規性】
高精度インサートおよび高精度クランプ機構による長寿命化と、多刃仕様による高能率化を実現する。金型やブレード等の中仕上げ・仕上げ工程では、加工しろが小さいため、工具の振れ精度が寿命に大きな影響を与える。インサートの拘束基準に工夫を加えることで、切れ刃精度の向上を達成した。また、独自の切れ刃配置とダブテイルクランプ機構を採用することで、インサートを小型化し、工具の多刃化を可能にした。
技術奨励賞
「高硬度材微細加工用エンドミル「2KMB」の開発」
●京セラ(株) 中園陽二、平松昇太郎、渡邉賢作
【新規性】
同開発は金型業界における高硬度材の微細加工(ソリッドボールエンドミル)において、工具集約の実現を目的として行った。同製品は硬度や被削性が異なる様々な高硬度材において長寿命、安定加工、美しい仕上げ面の実現を狙った。特殊2層構造コーティングで耐チッピング性と耐摩耗性の相反する性能を両立し、高硬度材に適した切れ刃強度を有し、且つ優れた切れ味を発揮する独自形状で安定加工と美しい仕上げ面を両立できる点が特徴である。
環境賞
〈環 境 大 賞〉
三菱マテリアル(株)
〈環 境 賞〉
京セラ(株)
〈環境特別賞〉
エフ・ピー・ツール(株)
日本タングステン(株)
冨士ダイス(株)