【令和6年 年頭所感】日本工作機器工業会/日本精密機械工業会/日本工作機械販売協会/日本歯車工業会
「ビジネスチャンスは大きな広がりを見せている」
■日本工作機器工業会
会長 寺町彰博
あけましておめでとうございます。
年頭に際し、所見を述べさせていただきます。
昨年の世界経済は、多くの国で新型コロナウイルス感染症禍からの経済活動の正常化への流れが継続する一方、ウクライナや中東情勢をはじめとする地政学的リスクの高まり、インフレの進行、米国の一部の金融機関の破綻に端を発した金融不安、そして不動産不況などに揺れる中国経済の低迷など、多くの懸念材料がある中で、先行きに対する不透明感がさらに増すこととなりました。日本においては新型コロナウイルス感染症が5類感染症へと移行し、本格的な開放へと着実に進みました。
一方で、当工業会に関連する動きを見ると、半導体関連は需要をけん引するドライバーが多様化する中で「ChatGPT」をはじめとした生成AIが登場し、新たな成長の活路としての期待が高まっています。また、国家が後ろ盾になった中央銀行デジタル通貨が本格的に導入される時代を迎えることにより、暗号化や認証技術に関連した半導体需要が増大すると思われます。そして安全保障の観点から半導体の自国生産を拡大する動きがある中、関連する投資は今後も大きな拡大が見込まれます。さらには、先進国を中心として生産年齢人口が減少する中で自働化、ロボット化の流れは着実に進展しています。そして世界的に脱炭素化の流れが強まる中で自動車業界におけるEV化や再生可能エネルギー関連投資の拡大など、私たちのビジネスチャンスは大きな広がりを見せています。
そのような中、生産財から消費財まで様々な分野において「見える化」や「自働化」が進み、機械装置だけでなく、それを構成する部品やツールなどにも高品質で壊れないという私たちの「強み」がますます求められています。しかしながら、より競争力を高めるためには、このような「強み」を磨き上げるのみならず、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推し進め、個の力として終わらせることなく相互の連携を深めることが重要であると考えます。
さらに、事業環境が目まぐるしく変化する時代においては、世界の潮流をしっかりとつかんで、それに即応し、ベストよりモアベターを優先し、実行スピードを上げること、すなわち良いと思ったら早く実行に移して結論を出し、修正点があればより良くする、これを繰り返してこそ、チャンスを掴むことができると考えます。
従いまして、このように環境が激変する中で、当工業会といたしましても、会員の皆様と強い信念を共有するとともに、新たなものを徹底的に開発、提案し、業界の発展に寄与してまいる所存です。
最後になりましたが、会員企業様の益々のご発展と皆様のご健勝とご多幸を心より祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。
「どうなる日本 どうする日本」
■日本精密機械工業会
会長 髙松喜与志
皆様、明けましておめでとうございます。
皆様には健やかに新春を迎えられたことと、心よりお慶び申し上げます。
今年は『甲辰(きのえ・たつ)』龍が天に登る様に、急速な成長と変化を誘う年になると言われていますが、2024年今年の景気はどうなるのか?
2023年末にタイ・ベトナムへ行って来ました。タイは日本と同じで慢性的な人手不足、ベトナムは年々人件費が上がっていて自動化などの合理化投資の必要性が高まっている様です。ベトナムの街を歩いて見て日本と一番違うと感じたのは、小さい子供がとても沢山いる事でした。また、新しい都市計画が進んでいて、街がどんどん広がっている事です。
超高層ビルが立ち最新の高層アパートをどんどん作っている元でバラック前の屋外で散髪する人達、イオンモールなどの大型スーパーが出来、賑わって居る隣で、屋台でお風呂の椅子に座って食事や酒盛りをする人々、道路には大量のオートバイの流れの中にピカピカのベトナム製のEV車が走りアンバランスが目立ちます。途上国は活気が有りGDPの伸び率が高いことを目の当たりにしました。
ベトナムで私の会社で作った工作機械を改造して自動化している顧客を見ました。
人に代わって材料を工作機械に着脱させる装置、機械から出た加工品を次の工程に受け渡すコンベア、不良品を次工程に渡さない検査装置、自動搬送車などを自社の社員が全て作って居るのを目の当たりにしました。(どの会社もこんな事が出来たら我が社は上がったりや!)(最近の電子工作の技術を駆使すれば外販は無理でも社内設備は作れる)
タイで両替をしたら円安で以前より少ないバーツしか貰えない。そして元気なベトナムを見て我々日本人と日本はどうなってしまうのか、心配になってしまいます。
私には今年の景気では無く、日本の近未来がどうなるのかが心配です。皆様のご努力により、龍が天に登る様に急速な成長と変化を期待したいです。
「さらに魅力ある日工販を目指して」
■日本工作機械販売協会
会長 髙田研至
健やかに新春を迎えられました事、謹んでお慶び申し上げます
昨年を振り返りますと、3年以上続いた新型コロナウイルスも終息に近づきありますが、ロシアのウクライナ侵攻は着地点が見えない現状、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘、米中の覇権争い、中国経済の将来不安、急激な円安など、先行きが不透明で予測が困難な状況が続いております
昨年10月には「メカトロテック2023」が、4日間で8万人近い来場者を迎え、大盛況で開催されましたが、残念ながら設備投資意欲の回復には結びついておりません。JIMTOFと同様に自動化、デジタル化、カーボンニュートラルがテーマとなり、今後のものづくりの方向性がしめされ、販売する我々の一段のスキルアップ、コーディネート力を求められていました。
年頭に日工販会長として、内需6,500億円を目指すと宣言致しましたが、残念ながら5,000億円前後に落ち着きそうです。本年も昨年以上に厳しい予測がされていますが、内需5%アップの5,250億円を目指して、ユーザー様の設備投資意欲を駆り立てる努力をしてまいります。
工作機械業界の最大ユーザーである自動車業界様ですが、トヨタ自動車様は2022年に10万台であったBEV(電気自動車)を2026年に150万台、2030年に350万台を計画しております。日産自動車様、本田技研工業様は急激にBEVにシフトしており、今後のBEVへの投資は加速度的に進む事は避けられず、我々の業界は大きな影響を受けざる得ない状況ではあります。一方、トヨタ自動車様の考えでは、BEVへの開発投資、電池への開発投資が重要課題ではあるが、現在でも全方位的な自動車づくりBEV、HEV、PHEV、FCEV等々、地域の特性に合った自動車づくりが基本であり、2030年の計画は、上述の通り、既存の台数プラスBEV350万台ではあります。カーボンニュートラルを達成することが重要であり、エネルギー源を合成燃料で対応し、今後もエンジン開発をグループ全体で検討されています。
最後になりますが、日本は最先端の設備、5軸加工機、複合加工機、3D図面、デジタル化の普及が遅れています。日工販としてユーザー様の生産性向上を目指して、これらの勉強を強化してまいります。そして、中心事業であるSE教育の充実を図り、魅力ある団体を目指してまいります。関係各位のご協力をお願い致します。
「看脚下」
■日本歯車工業会
会長 植田昌克
新年あけましておめでとうございます。謹んで新春のお慶びを申し上げます。
旧年中は日本歯車工業会の事業運営に格別のご支援、ご協力を賜り厚く御礼申し上げます。
昨年、三年の長期に及んだコロナウィルスの感染拡大がようやく収束し、マスクのない以前の暮らしに戻りましたが、世界では各地で残虐な戦争が続き、国内でも事件事故が相次ぎ、多難な一年となりました。一昨年まで工作機械、ロボット、エネルギー関連分野において、急速な需要増大から半導体をはじめ主要部品が品不足に陥りましたが、昨年には一段落し、逆に、景気の先行き不透明感から設備投資の様子見へと様相が変わりました。今年に入っても円安基調が続き、しばらく不透明な市況が続くと予想されますが、新年を機に景気が好転することを心より願っています。
タイトルの「看脚下」とは、先行きが見えない時こそ、慌てずに自分の足元に目を向け、一歩一歩進めば道が開けてくるという意味です。今年はしっかり足元に目を向け、着実に取り組んで行きたいものです。
さて、弊会の教育支援事業「ギヤカレッジ」は歯車に関連する機械技術分野を広く学ぶ一年間のカリキュラムで、昨年には従前の対面による講義に戻りました。日本の将来を担う若き歯車技術者の育成に向けて、引き続き取り組んでまいります。
ギヤカレッジ修了者を対象にした「フォローアップ研修会」、次世代の若手経営者の育成並びにネットワーク構築のための「若手経営者研究会」は一昨年から対面により実施していますが、日頃の業務における問題点や疑問を相互に出し合うことで問題解決の糸口を見つけることができ、充実した内容となりました。今年度はさらに工夫を凝らし、広く参加者を募ります。
経営研修会、技術研修会にも多くの会員様にご参加頂きました。今年も皆様に喜んで頂ける企画を立案し、内容の充実をはかります。ISO国際規格の会議も対面に戻ってきており、これを機に国際会議への出席者の育成をはかるべく、複数の委員を国際会議へ派遣していく予定です。
弊会は「国際競争力強化を視野に事業推進」「会員にとって魅力ある企画の実行」「次世代経営者・技術者育成事業」を柱として事業展開しております。“歯車”はこれまでも、そしてこれからも重要な機械要素の一つとして各種産業機械に使われ続けます。これにはグローバル化の推進、若きエンジニアの育成が必須で、弊会の各種事業を通して歯車業界を下支えしていく所存です。
今後も、経済産業省、各教育機関、諸団体の方々と密接に連携しながら、歯車産業ひいては日本の機械産業の発展を願い、皆様のお役に立てる工業会をめざし努めて参りたいと存じます。
今年が皆様にとって飛躍の年になりますよう祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。