【令和6年 年頭所感】日本産業機械工業会/日本工作機械工業会/日本機械工具工業会/日本ロボット工業会
「産業機械業界の更なる成長と日本経済の発展に向けて」
■日本産業機械工業会
会長 斎藤 保
2024 年の年頭に当たり、謹んで所感を申し上げます。
まず1 月1 日に発生した「令和6年能登半島地震」において、お亡くなりになった方々に対して、心より哀悼の意を表すとともに、被災された多くの方々にお見舞い申し上げます。また、被災地域の一日も早い復興を、衷心よりお祈り申し上げます。
昨年を振り返りますと、2022 年2 月から続いているロシアによるウクライナの侵攻は膠着状態に陥り、更に昨年10 月にはハマスとイスラエルの武力衝突が起こり、世界情勢に大きな影響をもたらした一年でありました。その一方で、明るい話題に目を向けますと、2020 年から続いた新型コロナ禍は、5 月に感染症法における分類が、2 類相当から5 類に変更されたことにより、3 年に及ぶ閉塞状況が終息し、経済活動が正常化に向かいました。そして、WBC での侍ジャパンの優勝、阪神の38 年ぶりの日本一、大谷選手のMVP 獲得や大型契約と、野球の話題が我が国を元気づけてくれました。
こうした中、世界経済を振り返りますと、前述のロシアによるウクライナ侵攻によってエネルギーや食料市場が混乱し、価格や供給において、不安定な状態が続きました。一方で、欧米では、昨年前半は、急激なインフレに対する金利の引き上げが続きましたが、後半にはインフレは抑制されたことから、秋以降、金利が据え置かれています。また、ゼロコロナ政策でつまずきを見せた中国経済は、不動産問題が更に大きく影響して、経済の混乱が続いております。
日本経済については、企業収益の改善が続き、財務省が公表した2023年7月~9月の法人企業統計調査結果によると、全産業の経常利益は3四半期連続で増益でした。経済活動がコロナ禍から脱して平時に向かい、企業業績は多くの産業で改善しており、今期に最高益を見込む上場企業が増加しました。また、当工業会においては、2023年4月~9月(年度上半期)の受注総額が2兆7,685億円となり、コロナ禍前2019年度上半期よりも28%増、消費税10%への引き上げ前2018年度上半期よりも15%増となるなど、回復が続きました。主に、電力、化学、石油の分野での投資が着実に実施されております。
さて、今年2024年ですが、我々産業機械業界が更なる成長を遂げ、日本経済の発展に貢献するためには、以下の課題に取り組んでいく必要があると考えます。
1つ目としては、GX(グリーントランスフォーメーション)への対応です。低炭素・脱炭素社会の実現には、原子力発電の活用、更なる再生可能エネルギーの導入拡大の他、徹底した省エネの推進や、CCUS の導入、次世代エネルギーである水素・アンモニアの混焼技術や、製造、輸送技術の社会実装の加速が不可欠です。産業機械業界は、グリーン産業を目指し、GX に関する技術の開発・実証・社会実装に取り組みます。
2つ目は、我が国の経済安全保障への貢献です。ロシアのウクライナ侵攻や中国のゼロコロナ政策等に端を発した世界的なサプライチェーンの混乱は、日本経済にも大きな影響を及ぼしました。我々産業機械業界は、サプライチェーンを構成する製造装置・部素材・原料等の製造能力の強化に資する技術を開発し、生産設備の提供に取り組んでいく必要があります。
日本産業機械工業会は、こうした社会の変化や課題に応え、地球環境保全、国際交流、標準化などの各種事業を推進し、産業機械業界並びに会員企業の皆様の事業発展に向けた活動に力強く取り組んでまいります。
政府におかれましては、総合経済対策の実行により、需給ギャップを解消する施策を実施し、活発な設備投資や消費を促し、過去30年続いてきたデフレ経済からの脱却に取り組まれますことを期待しております。
年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
「世界の製造業の発展に貢献
■日本工作機械工業会
会長 稲葉善治
2024年の新春を迎え、謹んで年頭の御祝詞を申し上げます。
さて、昨年を振り返りますと、新型コロナウイルスは5類に移行し社会は平静を取り戻しましたが、一方で、米中対立は長期化・先鋭化しており、ウクライナ戦争も長期化の様相を呈しているほか、中東パレスチナでは激しい軍事衝突がありました。地政学的リスクが世界各地域で顕在化しており、世界情勢は不透明・不確実の度合いが強まった1年でした。そのような状況にあって、工作機械受注は、内需では、半導体製造装置関連や自動車向けの需要が減速し、外需では欧米は比較的高水準を維持しましたが、中国は景気低迷の影響もあり大幅に減速しました。その結果、2023年の工作機械受注額は、高水準ながら緩やかな調整局面となりました。
そのような局面にあっても、製造業ではデジタル・グリーン・レジリエンスをキーワードとする取り組みが進められており、産業や社会の構造変化は着実に進展しております。工作機械の技術面においては、協働ロボットや自動計測装置、パレットプール等を活用した自動化・省人化、AI・IoTを活用したDX、シミュレーションを駆使したデジタルツイン、高速・量産対応の積層造形技術、カーボンニュートラルを見据えた省エネ等、これらの技術革新が加速しております。市場面では、地政学的リスクの上昇もあり通商環境が複雑化しており、輸出管理・経済安全保障には細心の注意を払わねばなりません。日本の工作機械産業はこれらの状況に適宜適切に対処し、本年も世界の製造業の発展に貢献して参りたいと存じます。
本年は、11月に我が国工作機械業界最大のイベントであるJIMTOF 2024を東京ビッグサイトで開催し、「技術のタスキで未来へつなぐ」をコンセプトに、日本が誇る最先端の工作機械技術・製品を世界に向けて発信致します。南展示棟では、特別併催展としてAdditive Manufacturing Area in JIMTOFを催すほか、出展者と学生を繋ぐアカデミックエリアの設置を計画し学生と現役世代の交流の場を創出します。また、国内外の技術者が集う「国際工作機械技術者会議」や全国の学生を招待して実施する「工作機械トップセミナー」など、盛沢山の併催行事を用意して、工作機械産業の魅力を来場者の皆様にお伝え致します。是非、多くの方にご来場頂きたいと存じます。
日本の工作機械産業は、世界をリードする高機能で信頼性の高いモノとしての工作機械でコトづくりを支えて参ります。関係各位には当工業会の事業に対する一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。
「次世代工具需要に期待」
■日本機械工具工業会
会長 五島 康
2024年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
平素から、関係各位のご支援、ご協力に対し、心から感謝申し上げます。
まずは、昨年度の当工業会の生産額は、約4,800億円と一昨年度を下回りました。中国経済の鈍化と、ロシアのウクライナへの軍事進攻、またイスラエル、パレスチナ問題による原材料の高騰を受けた景気後退により、輸出が減少した事が大きな要因であります。
そこで、2024年の目標としましては、まず、生産額5,000億円の達成です。EV化が進む中、工具需要も減少していることは確かであり困難であることは承知しておりますが、EV化により、別の部品や、新たに主力となる被削材にシフトすることによって、次世代の工具需要が見いだされる事を期待し、5,000億円の目標を挙げさせていただきます。次に、5月に開催されます、WCTC世界切削工具会議を成功裏に収める事です。今回のWCTCでは、各国、各エリアでの工具生産額を取りまとめ、統一した工具需要を纏める事を目標としております。これにより、当工業会、ひいては会員会社の皆様の世界的な立ち位置が見える事となり、日本国内だけではなく、海外に需要があることが明確になると思います。その他にも様々な企画を準備しておりますので、会員の皆様方には是非ご参加をお願い申し上げます。
ところで、今年の干支は辰です。辰年は時代を動かす、「変革(転機)」や「激動」の年と言われています。冒頭にも申し上げましたが、ガソリン車からEV化へ、また、DX等、主に製造業での働き方が変わっていく大転換期、社会が急激なスピードで変わっていく時代であります。我々はその中でどの様に生き抜いていくのか、どの様なワークや被削材が主流になっていくのか、それに応じた工具や、加工法はどんなものが出てくるのか、私自身、非常に楽しみにしておりますし、工業会としてもその大転換期に対して、各委員会を通じて、後押しできるようにしてまいりたいと思っております。
また、今年の7月前半を目処に新紙幣が発行されます。1万円札の渋沢栄一、5千円札の津田梅子、千円札の北里柴三郎が新たに登場します。この3名に共通する事としましては、3名とも海外留学経験者です。渋沢栄一はフランスに留学し、後に約500社もの企業の設立に関わり、日本経済の基礎を築きました。津田梅子はアメリカに渡り、新しい女子教育のスタイルを作り、女性の自立を推進することに尽力し、北里柴三郎はドイツで破傷風血清療法を確立、後にペスト菌を発見し、近代日本の医学の父と呼ばれるようになりました。つまり、海外を経験したことで、多くの知識を吸収し、それをその分野に役立てた方々です。会員の皆様には、国際委員会が提案しておりますIMTS(アメリカ)、EMO(ドイツ)を始めとした海外展示会へのツアーや、実際に出展を体験され、多くを学び、自社の発展に寄与していただきたいと願っております。
最後になりましたが、日本機械工具工業会会員の皆様の一層のご活躍と、辰年に昇龍のように、飛躍と発展を祈念いたしまして、年初のご挨拶とさせていただきます。
「ロボット利活用拡大への意欲を喚起」
■日本ロボット工業会
会長 山口賢治
先ず、元日に発生しました能登半島地震では、北陸地方を中心に甚大な被害を及ぼしています。犠牲になられた方々に、謹んで哀悼の意を表します。また、被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。そして1日も早い復旧を目指し、当業界も可能な限り、協力をしてまいりたいと存じます。
さて、昨年末に、ロボット業界にとっての最大イベントでもある「2023国際ロボット展」を開催し、その開催規模に加え来場者数も過去最大となる14万8千人余りの方々にご来場をいただき、盛会裏に終了することが出来たことで、当業界の2024年に向けての力強い応援となりました。
本展示会の開催にご指導、ご支援を賜りました経済産業省はじめ関係諸団体、そして出展各社の皆様に心より御礼申し上げます。
一方、このところの世界情勢は、長引くロシア・ウクライナ情勢や中東情勢の地政学的リスクに伴って不安定化が更に進みつつあります。そして、国際経済もこれらの要因に加え、中国経済の低迷や欧米でのインフレ圧力の強さなどから減速傾向にあります。直近の国際通貨基金による世界経済の見通しをみても、一昨年が3.5%の伸びであったのに対し、昨年は3.0%、そして今年は2.9%にまで減速するとの観測もあり、様々な懸念を抱えたなかでの幕開けとなりました。
さて、当会の今年の活動については、業界活性化のさらなる推進に向け、昨年に引き続き以下の3点を重点項目として取り組む所存です。
第一は「市場拡大に向けた取組」です。
当会では、昨年より経済産業省が実施する「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業(通称・ロボフレ事業)」の補助金交付執行団体事務局として、「施設管理」及び「食品」の2分野におけるロボットフレンドリーな環境構築に必要な研究開発の支援事業に参画しており、本年も引き続き務めて参ります。
また、政府では、中小企業等の生産性向上や売上高拡大の後押しに向けた投資促進を図るため、2023年度補正事業において「中小企業省力化投資補助事業」、「中小企業生産性革命推進事業」等の施策を推進することとしており、当会としてもそれら施策を通じたロボットの利活用拡大に努めるほか、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会及び日本ロボットシステムインテグレータ協会との連携を通じ一層の市場拡大に努めてまいります。
第二は「イノベーションの加速化に向けた産学連携の推進」です。
グローバル市場での我が国の優位性確保や潜在市場の顕在化に加え、様々な社会課題解決に向けても、ロボット技術のイノベーションの加速化が急務となっており、引き続き日本ロボット学会をはじめ関係学会及び関連業界との連携に努めることとします。
第三は「国際標準化の推進、国際協調・協力の推進」です。
国際標準については、欧米が市場獲得の手段として戦略的に取り組んでいますが、引き続き我が国も官民挙げての取り組みが重要です。特に、ロボットの国際標準化について審議しているISO/TC299では、本年5月に大阪府の池田市で5つのワーキンググループ会議が開催されることとなっており、国際標準化活動に対しては、ロボットのリーディングカントリーとして引き続き積極的に取り組むこととしております。加えて、国際ロボット連盟を通じた活動並びに国際交流を積極的に推進していく所存です。
また、本年は、6月12日~14日にかけ「第25回実装プロセステクノロジー展」を、そして9月18日~20日にかけて「Japan Robot Week 2024」の2つの展示会を東京ビッグサイトで開催します。両展示会を通じて技術情報の発信とともに様々な分野へのロボット利活用拡大への意欲を喚起することに加え、市場調査、技術振興等の各事業を意欲的に展開する所存です。
引き続き関係各位の一層のご支援とご協力をお願い申し上げますとともに、皆様のご活躍とご発展を祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。