ヤマザキマザック ミネラルキャストを自社で内製、採用機種を拡大

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米国生産機に採用しているミネラルキャスト

 

 ヤマザキマザックは、このほど優れた振動減衰性能など工作機械の高精度化に有効な素材であるミネラルキャストを内製し、自社製の工作機械への採用を拡大していくと発表した。

 ミネラルキャストは鉱石とエポキシ樹脂で結合させた複合素材で、高い振動減衰性能や熱安定性を有し、工作機械の高能率化・高精度化に貢献するもの。工作機械は「マザーマシン」と呼ばれ、自動車、航空機、半導体など、あらゆる産業のものづくりに関わっており、常に加工精度や生産性の向上が求められている。

 工作機械の加工精度や生産性は、機械構造体の剛性や振動減衰性能に依存するため、その構造体に使用する素材は重要であり、工作機械の構造体には鋳物を使用することが一般的だが、昨今はさらなる性能向上のために、より優れた特性を持つ代替素材のニーズが高まっている。

 ミネラルキャストはその一つとなり、素材として優れた特性を持つだけでなく、製造工程におけるCO2排出量が鋳物に対して大幅に少ないことや、安全でクリーンな環境で製造が可能であるなど環境性能も優れている。また、あらかじめ配管やタップインサートをミネラルキャスト内に鋳込む(組み込む)ことができるなど設計の自由度が高く、機械加工や組立工数を削減し製造リードタイムを短縮することができるなどのメリットもある。

 このように優れた特性やメリットがある一方で、特に日本国内では製造メーカーが限定されており、輸送費を含めた調達コストが鋳物に比べて割高であることが、工作機械に積極的に採用することへの課題の一つとなっていた。こうしたことから、同社では、高精度で生産性の高い工作機械を短納期で顧客に提供することや、またCO2削減など環境経営の一環として、同社ではミネラルキャストを自社で内製化・採用拡大に向けて、数年前より試験研究をおこなっていた。本年度中に量産化に向けての技術開発を完了し、2024年度中に量産を開始、内製ミネラルキャストを採用した新機種の出荷を開始する予定。

ミネラルキャストの特長

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ミネラルキャストの製造には、適切な材料の選定・配合などの「材料の技術」、材料を均一に混ぜる「混合の技術」、複雑な形状の型枠に隙間なく流し込む「注入の技術」などのノウハウが必要

 

(1)高い振動減衰性
 振動減衰性とは、振動をどれだけ短時間で収束させることができるかという指標。ミネラルキャストは、鋳鉄と比較して約10倍(素材サンプルを使用した同社試験結果)の振動減衰性能に優れており、工作機械の稼働時に発生する振動をより早く吸収し、加工精度の向上や工具の長寿命化に貢献する。

(2)優れた熱安定性
 ミネラルキャストは熱伝導率が鋳鉄の約25分の1、比熱が高いため、温度変化に強い工作機械の構造体を作ることができる。

(3)環境負荷の低減
 ミネラルキャストの製造には鋳物のような高温溶融処理が不要であり、製造時のエネルギー消費量を大幅に低減することが可能であり、CO2排出量の削減(製造工程におけるCO2排出量は鋳物に対し約8割減〈同社比〉)に大きく貢献する。また、製造時に数千℃の溶湯(ようとう:金属を高温にして溶解し液体状態にしたもの)を扱う鋳造と比較し、ミネラルキャストの製造工程では高温の液体を扱う作業がないため、安全でクリーンな労働環境を実現する。

(4)製造リードタイム削減
 ミネラルキャストは注型から脱枠までの所要時間が約24時間と鋳物に比べて短く、製造リードタイムを短縮(鋳物に対して約6割短縮)することが可能。さらにタップインサートや金属部品、ホース、冷却部品などをあらかじめ内部に鋳込むことが可能であり、機械加工や組立加工など後工程の工数も削減、工作機械の短納期化に寄与する。

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