工作機械需給動向(2023年1月~12月実績)まとまる 日本工作機械工業会

 日本工作機械工業会がこのほどまとめた工作機械需給動向(2023年1月~12月実績)は次のとおり。

受注額(日本工作機械工業会)

(1)概 況
 2023年の工作機械受注額は、3年ぶりの減少で、前年比▲15.5%の1兆4,865億円となった。コロナ禍からの回復を牽引したペントアップ需要や半導体関連需要、自動車関連需要が落ち着き、不動産不況による中国の減速もあり、3年ぶりに1兆5,000億円を下回ったものの、過去7番目の受注額を記録した。
 
 このうち、NC工作機械は、1兆4,630億円(同▲15.3%)となった。受注額全体に占めるNC工作機械の比率は98.4%(同+0.2pt)と、8年連続で98%を超えた。受注総額の内訳をみると、内需は4,768億円(同▲21.0%)、外需は1兆97億円(同▲12.7%)で、外需比率は同+2.2ptの67.9%となった。
 
(2)内需の動向
 2023年の内需は、3年ぶりに減少し、前年比▲21.0%の4,768億円と3年ぶりに5,000億円を下回った。2022年後半まで受注を牽引したコロナ禍のペントアップ需要や部品不足に伴う能増投資、半導体関連需要等が徐々に落ち着く中で、底堅くも緩やかな減少傾向が年間を通じて見られ、2023年後半は400億円を下回る月が多く見られた。

 業種別にみると、全11業種中10業種で前年比減少となった。主要4業種では「航空機・造船・輸送用機械(同+7.0%、202億円)以外は前年比10%以上の減少となった。特に、半導体関連での受注が多い、「電気・精密(同▲33.3%、577億円)」、内燃機関、EV関連の投資がどちらも低調な「自動車(同▲25.3%、1,006億円)」は大きく減少した。その他の業種でも、「商社・代理店(同▲32.8%、46億円)」、「金属製品(同▲27.2%、368億円)」が2割を超える減少となった。

(3)外需の動向
 2023年の外需は、3年ぶりに減少し、前年比▲12.7%の1兆97億円と3年連続で1兆円を超え、過去6番目の受注額となった。アジアでは中国を中心に減少したものの、欧州、北米は強いインフレ懸念にも関わらず底堅く推移し、円安傾向もあって月平均841億円と堅調な水準を維持した。

 地域別にみると、アジアは3年ぶりに減少し、前年比▲23.2%の4,276億円で、3年ぶりの5,000億円割れとなったものの、4,000億円台の受注は維持した。このうち、東アジアは同▲28.3%(3,198億円)で、韓国(同▲24.0%、250億円)、台湾(同▲43.5%、203億円)、中国(同▲27.3%、2,740億円)が軒並み前年比2割以上の減少となった。特に中国では、前年の受注を牽引したEMSやEV関連投資が大きく減少し、不動産バブル崩壊による経済の不安定化もあり、設備投資は伸び悩んだ。その他アジアは、多くの国・地域で前年割れとなる中、唯一好調だったインドが増加したことで、同▲2.8%の1,078億円と3年ぶりの減少も、2年連続で1,000億円超えとなった。インド(同+26.5%、511億円)は、自動車関連を中心に堅調に推移したほか、半導体やEMS関連の受注も増加し、一般機械と電気・精密が過去最高額を更新し、インド計も初の500億円超えで過去最高額を更新した。

 欧州は、2022年2月からのロシアによるウクライナ侵略、イスラエル軍とハマスの戦闘が続くガザ地区などの地政学リスクに加え、エネルギー問題や金利高等の影響が懸念される中にあっても、3年連続で前年比増加し、同+1.1%の2,335億円と過去4番目の受注額となった。国別では、EU(同▲3.9%、1,699億円)域内のドイツ(同+6.3%、565億円)、“その他”(同+2.7%、384億円)がともに過去2番目の高水準の受注を記録したほか、“その他西欧”のトルコ(+38.9%、227億円)、スイス(+27.9%、148億円)は、統計区分開始(2015年)以来の最高額を2年連続で更新した。

 北米は、同▲6.9%の3,206億円と3年ぶり減少も、2年連続で3,000億円を超え、過去3番目の受注を記録した。アメリカ(同▲9.6%、2,820億円)は、自動車で日本と同様、やや回復が遅れているほか、金利高によりジョブショップの動きがやや鈍かったものの、医療やエネルギー関連、航空宇宙関連を中心に堅調に推移し、過去3番目の受注額となった。また、カナダ(同+15.3%、199億円)は3年連続の増加で、過去最高額を2年連続で更新した。メキシコ(同+21.9%、187億円)は、3年連続で増加した。 

 各地域別の受注シェアは、アジアが42.3%(同▲5.8pt)、欧州が23.1%(同+3.1pt)、北米が31.8%(同+2.0pt)となった。国別シェアでは、1位がアメリカで27.9%(同+0.9pt、前年2位)、2位が中国の27.1%(同▲5.5pt、前年1位)、3位はドイツで5.6%(同+1.0pt、前年3位)、4位がインドで5.1%(同+1.6pt、前年5位)、5位がイタリアで3.3%(同▲0.3pt、前年4位)、6位が韓国で2.5%(同▲0.3pt、前年7位)、7位がフランスで2.4%(同+0.3pt、前年8位)、8位がトルコで2.3%(同+0.9pt、前年13位)と、首位が交代した他、台湾が順位を下げ、今年受注が目立ったインド、トルコが順位を上げた。

(4)機種別の動向
 受注額を機種別(含むNC機)でみると、全11機種中9機種で前年比減少となった。主な機種別の受注額は、旋盤計が前年比▲12.8%の5,071億円で、3年ぶりに減少したものの、3年連続の5,000億円超えとなった。内訳では「うち横形(同▲14.2%、4,725億円)」は減少したが、「うち立て・倒立形(同+10.9%、346億円)」は3年連続で増加した。また、旋盤計における「うち複合加工機(同▲3.0%、2,136億円)」は旋盤計よりも減少幅は小さく、生産効率化、省人化のためのニーズを感じる結果となった。なお、旋盤計に占める複合加工機の割合は42.1%と前年から4.2pt上昇し、2年ぶりに4割を上回った。

 マシニングセンタは、同▲15.3%の6,147億円と、2年ぶりに7千億円を下回ったが、3年連続で6,000億円を上回った。「うち立て形(同▲16.5%、3,377億円)」、「うち横形(同▲16.5%、2,171億円)」、「うちその他(同▲1.9%、600億円)」と全ての区分で減少したが、「うちその他」の減少率は軽微だった。また、マシニングセンタ計における「うち5軸以上」は同▲2.2%(1,574億円)と、2年連続で1,500億円を超え、複合加工機同様、マシニングセンタ計よりも減少幅は小さく、「うちその他」の「うち5軸以上」は、5割以上の増加を示した。その結果マシニングセンタに占める“うち5軸”の割合は25.6%(同+3.4Pt)と2年連続で上昇し、6年連続で20%を超えた。その他の機種では、ボール盤(同+1.4%、2億円)、中ぐり盤(同+11.4%、163億円)の2機種のみ前年比増加となった。 

(5)販売額
販売額は前年比+3.1%の1兆6,166億円で、3年連続で増加した。高水準の受注があった一方、部品不足等によって多くの受注残を抱えていた当業界は、部品不足が徐々に解消に向かう中、販売額も高水準を維持し、5年ぶりに1兆6千億円を超え、過去2番目の水準となった。うちNC機は、同+3.0%の1兆5,913億円となった。 

 機種別(含むNC機)にみると、全11機種中6機種で前年比増加となった。主な機種別販売額は、旋盤計が同+3.4%の5,484億円、マシニングセンタ計が同▲0.8%の6,638億円、研削盤計が同+9.0%の989億円、レーザ加工機などの「その他」計が同+17.0%の1,603億円となった。 

(6)受注残高
 2023年末の受注残高は、前年末比▲12.4%の7,858億円で、3年ぶりに減少し、2年ぶりに8,000億円を下回った。受注が調整局面入りし、部品不足が徐々に解消する中で、2022年10月に9,201億円まで膨らんだ受注残高は、2023年11月に8000億円を下回ったものの、依然高いレベルにあると言える。当該年末の受注残高を直近3カ月(23年10~12月期)の販売平均で除した「受注残持ち月数」は5.8カ月で前年末から0.7カ月低下した。また、NC工作機械の受注残高は同▲12.5%の7,605億円となった。

生産額(経済産業省:生産動態統計) 

 経済産業省「生産動態統計」によると、2023年の工作機械生産高は前年比▲2.4%の1兆528億円となった。3年ぶりに前年実績を下回ったが小幅な減少に留まり、2年連続で1兆円を超えた。うちNC工作機械は同▲3.2%の9,805億円で、NC比率は93.1%と、過去最高であった前年(93.9%)より僅かに低下した。 

 機種別に見ると、マシニングセンタ(同▲3.9%、3,951億円)、NC旋盤(同▲2.8%、2,729億円)、NC放電加工機(同▲2.6%、413億円)が前年比で減少した一方、NC研削盤(同+7.4%、935億円)、NC歯車機械(同+52.9%、197億円)等は増加する等、機種により増減に違いが見られた。 

輸出額(財務省:貿易統計) 

 財務省「貿易統計」によると、2023年の工作機械輸出高は、前年比▲3.1%の 8,304億円で、3年ぶりに減少したものの、2年連続で 8,000億円を上回った。うち NC工作機械は同▲3.0%の 8,011億円で、輸出額全体に占める比率は同+0.1ptの 96.5%と、3年連続で過去最高を更新した。

 地域別に見ると、北米が前年比+3.7%の 2,351億円、欧州が同+8.3%の1,800億円と、それぞれ3年連続で増加したのに対し、アジア(3,939億円)は中国の減速が響き、同▲11.8%と3年ぶりに減少した。

 この結果、地域別の比重は、アジアが47.4%(同▲4.7pt)、北米は 28.3%(同+1.9pt)、欧州は21.7%(同+2.3pt)となった。 国別では、アメリカ(2,067億円)が 4年ぶりに中国(2,042億円)を抜いて首位となった。3位以下は、インド(412億円)、ドイツ(375億円)、台湾(339億円)の順で、インドは4年ぶりに3位に浮上し、前年に3位であった台湾は5位に下降した。

 機種別に見ると、マシニングセンタ(3,509億円、前年比▲3.4%)、NC 旋盤(2,239億円、同+5.2%)、レーザ加工機(1,141億円、同▲14.7%)が上位を占め、この上位3機種で輸出総額の83.0%を占めた。

輸入額(財務省:貿易統計) 

 同じく、財務省「貿易統計」によると、2023年の工作機械輸入高は、前年比+1.8%の855億円で、3年連続で増加し、2年連続で800億円を上回った。うち、NC工作機械は同▲0.6%の740億円で、輸入額全体に占める比率は86.5%で4年ぶりに低下した。 

 輸入元を国・地域別に見ると、中国は199億円で3年連続の首位となったが、前年比は▲31.5%で3年ぶりに減少した。2位以下は、ドイツ(179億円、同+26.2%)、タイ(117億円、同▲8.4%)、スイス(82億円、同+32.2%)、台湾(45億円、同+▲22.2%)で、アジアからの輸入が軒並み減少した一方、ドイツ・スイスからの輸入は増加した。なお、この上位5カ国・地域の合計で総輸入額の72.8%を占めた。
 

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