東京大学とクボタが社会連携講座「次世代資源循環ソリューションのためのデジタルツイン基盤技術講座」を開設

 東京大学大学院工学系研究科とクボタは、このほど、2021年11月30日に締結した「クボタと東京大学との間における産学協創協定」に基づき、資源循環型社会の実現に貢献する次世代溶融炉の開発推進に向けて、溶融分離及び回収に関するシミュレーション技術の確立をめざし、社会連携講座「次世代資源循環ソリューションのためのデジタルツイン基盤技術講座」を開設したと発表した。

 発表によると、廃棄物の処理を巡っては、近年、種類の多様化、複雑化が進み、リサイクル率の低さ、最終処分場のひっ迫といった問題が顕在化しており、減容化、無害化、再資源化に優れた特性を持つ溶融炉が注目されていることを受け、クボタでは、1970年代から廃棄物の減容化、無害化を目的に開発してきた溶融分離技術をさらに発展させ、あらゆる廃棄物からエネルギーやリン(肥料成分)、有価金属を回収する資源循環ソリューションを実現するための中核技術として、処理能力と有価金属の回収率を向上させた次世代溶融炉の開発を進めており、次世代溶融炉の開発には、溶融分離と回収に関わる現象を把握することが重要であるとしている。

 溶融炉を用いた処理では、廃棄物を焼却した後の焼却灰や下水汚泥などを1300℃以上で溶融し、スラグ成分と有価金属を含むメタル成分に分離させる。その後、冷却固化し分離機に通すことで、固体粒子となったスラグとメタルをそれぞれ回収する。この時、溶融分離の過程では、固体粒子(焼却灰、下水汚泥、廃プラスチックなど)、液体(スラグ)、気体(可燃性ガス、既燃ガス)が共存すると想定されているが、炉内は高温であることから、現在の計測技術ではその状況を可視化し十分に把握できておらず、また、回収の過程においても、分離機の内部ではスラグとメタルの粒子が攪拌(かくはん)され混じり合っており、その挙動を把握することは困難であるため、溶融炉及び分離機を仮想空間上で忠実に再現したシミュレーションモデル(デジタルツイン)を構築できる技術の確立が求められている。

 この講座の代表教員を務める酒井幹夫教授は、微小な固体粒子の集合体である粉体のシミュレーションにおいて世界的権威であり、同研究室では粉体に加えて、固相・液相・気相が混在した状態(粉体・混相流)を再現できる高度なマルチフィジックスシミュレーション技術を独自開発しており、講座を通じて、溶融分離及び回収に関する粉体・混相流の理論を確立し、計算科学の新たな学術体系を構築・発展させるとともに、得られた知見を実機の設計に活用することで、次世代溶融炉の開発を推進し、持続可能な循環型社会の実現に貢献することをめざすとしている。

社会連携講座の概要

 ●講座名:次世代資源循環ソリューションのためのデジタルツイン基盤技術講座
(Digital Twin Fundamental Technology Course for Next Generation Resource Circulation Solutions)

 ●設置期間:2024年8月1日~2027年7月31日(3年)
 ●代表教員:酒井幹夫 東京大学大学院工学系研究科 原子力国際専攻 教授
 ●研究内容:溶融炉及び分離機の環境を再現したデジタルツイン構築に向けた、高温状態下の粉体・混相流を対象とした高度なマルチフィジックスシミュレーション技術の開発
 

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