JIMTOF2024レポート【切削工具・周辺機器編】

切削工具の展示品の多くは、EVの軽量化に欠かせないアルミ加工や、高硬度材に適したもの、切りくずのトラブルを解消して面品位向上や工具寿命を伸ばす製品が目立っていた。周辺機器では生産ラインの自動化を意識した製品や、しっかり工具を把持し、ビビリを押さえてワークの面品位を高め、工具寿命を延長させる工夫を凝らした製品が目立っていた。


 

工程集約ができる切削工具だ

 様々な趣向を凝らして展示していたイワタツール。デモンストレーションではロボット加工技術研究会とのコラボレーションで切削工具とロボットを活用した加工法を提案し話題となった。注目されたのは、ヘリカル穴加工エンドミルの「ドリルミル」。

 ヘリカル加工によって自由な穴径で加工することができることが特長。工具径のφdx125%~MAX2倍まで可能であり、これまでに複数のドリルで行ってきた工程を工具1本に集約できるメリットがある。

 

 

安定した切削加工を実現する

 切削工具メーカーが一堂に集まっていた西展示場で、照明などに趣向を凝らし、圧倒的な存在感を図っていたイスカルジャパン。多くの来場者で溢れており、ようやく撮影できたのは、優れた防振機構を備えた「WISPER LINE(ウィスパーライン)」。

 この製品は、防振機構の搭載により、長い突き出しでの加工時や、負荷の高い加工時に加工中のビビリ振動を抑制し、加工面精度・工具寿命・切削条件の向上に貢献するもの。安定した切削加工が実現するとともに生産性を大幅に向上できる製品だ。

 

 

 

独自の新形状が鍵を握る

 オーエスジーが注力していた製品は、高性能・低炭素型転造タップ「GREEN TAP」だ。この製品は独自の新製法を採用し、従来と比較して製造時の消費電力量を削減することでCO₂の排出量を35%削減している環境に配慮して作られた低炭素型製品。同社では「工具の長寿命化は機械の安定した連続加工を可能にすることで消費電力量を削減し、工具の廃棄物削減にもつながる。」としている。

 独自の新形状の鍵を握るのは特殊ねじ山仕様で、最も発熱する刃先付近に多くの切削油剤を供給することで冷却効果を高めて耐久性を向上している設計。


 

微細精密の未来を切り拓く製品がズラリ!

 12月1日付けで日新ダイヤモンドから社名が変更になったオーエスジーダイヤモンドツール。世界初の単結晶切削工具標準品のNブランドのカタログを配布し、勢いを見せつけた。樹脂、非鉄金属のC面取り加工で鏡面加工が可能な「N-ChamferMill(エヌチャンファーミル)」、単結晶ダイヤモンドスクエアエンドミルの「N-Radius Mill (エヌラジアスミル)」などのほか多くの製品を展示しており、ダイヤモンド工具による加工の可能性を来場者に訴求していた。

 

 

オートジョーチェンジによる多品種自動生産が可能に!

 北川鉄工所は、人気の〝BRシリーズ〟の技術から省人システムを開発し、デモンストレーションを行っていた。同システムの最大のメリットは、ジョー取付けミスを低減しながらワーク搬送の自動化を実現していることだ。

 様々な自動化アイテムを合わせて提案してくれることで、ユーザーニーズに合わせたオートジョーチェンジによる多品種自動生産が可能になった。時代に合致した生産ラインの構築を求めた来場者の心までもガッチリ把持していた。

 

 

加工振動を抑制!

 住友電気工業では、剛性と切りくず排出性を両立し、最大L/D=7の深穴加工を実現した新製品のインサート交換式ドリルSumiDrill「GDX型」を展示。

 この製品は高剛性ホルダ設計によって加工振動を大幅に低減する仕組み。独自の溝設計により、切りくず排出性とホルダ剛性を高次元で両立している。加工振動を抑制しているので切削抵抗を低減し、安定した深穴加工を実現する一品。

 

 

加工に応じた組み合わせができる!

 豊富な品揃えで来場者を魅了していたBIGでお馴染みの大昭和精機。今回注目したいのは、SFハイドロチャックとSFスリーブ(焼きばめ方式)の交換で多彩なレイアウトを可能にしたSFスリーブ。

 レンチ1本でSFスリーブを簡単着脱できるのも嬉しい。この製品を使用すると、ワーク・治具干渉を最小限に抑え、深掘り加工や立ち壁加工に威力を発揮する。無駄な工具の突き出しを押さえるので、そのぶん加工能率もアップする優れものだ。


 

工具の集約化に貢献!

 ダイジェット工業が訴求していたのは、モジュラーヘッドにオール超硬シャンクアーバ〝頑固一徹〟もしくは超硬シャンク一体型の〝頑固一体〟で高能率加工が実現し、コストダウンに貢献する仕組みだ。

 粗加工から仕上げ加工、さらには往復加工まで多類のヘッドとの組み合わせが可能なので工具の集約化が図れる。ヘッド部がねじ止め式のため、先端部は簡単に交換できる点が嬉しい。

 

 

従来比2倍以上の驚異的な寿命!

 日進工具は従来比2~5倍以上の驚異的な寿命を誇ったSUS420用ロングネックボールエンドミル「XRBH230」に注目が集まった。

 この長寿命の鍵を握るのは、新コーティング〝MPX〟と最適化された刃先形状のなせるわざ。工具寿命が向上したことで、工具費用の削減ができるという経済効果抜群の1本だ。サイズはR0.05~R1まで。全83サイズが揃っている。

 

 

人気のバリレスシリーズから非鉄金属用が登場!

 

 昨年、大注目を浴びた不二越の〝バリレスシリーズ〟から、非鉄金属用が出た! アルミの穴加工のやっかいな点はバリが出やすいことだが、「DLC-REVOドリルバリレス」は強ねじれ角など形状やコーティングにも工夫を凝らし、摩擦係数が低く、アルミがくっつきにくい特長を有している。

 コーティングは水素含有量が少ない高硬度薄膜。これらの技術によりラジアスエッジの耐摩耗性と切れ刃エッジのシャープ性を維持!

 

自動化・省人化に機上測定は不可欠な時代

 本年、日本法人設立25周年を迎えたブルーム-ノボテスト。製造現場の自動化・省人化には欠かせない〝機上測定〟のトータルソリューションをズラリと揃えて展示していた。

 工具測定用レーザシステム「LC50-DIGILOG」は加工回転数で工具を測定&補正するもので、機内環境での測定信頼性を確保している。ソフトウエアの「LC-VISION」で工具形状の可視化/振れ量、多枚刃の各刃高さ測定と機械主軸の振れや振動を管理する。機上測定は自動化・省人化に必要不可欠!


 

まだ未発売だがユーザーの悩みに答えた製品が展示

 新製品の展示以外にも工具の魅力をVRで体験できるコーナーで訴求し、多くの来場者が楽しんでいた三菱マテリアルでは、「多種多様なステンレスのターニング加工で突発損傷を防止して加工コストを低減したい。」というユーザーの声から「MC7100/MP7100シリーズ」から新たにステンレスの守護神ともいえる新材種を未発売だが展示していた。

 高速加工で加工時間短縮が可能な「MC7115」、連続加工・断続加工を幅広くカバーする「MC7125」、粗加工から中仕上げ加工まで突発欠損に強い「MP7135」の3種類。

 

さらなる深い加工に絶妙な壁角度で応えた超硬シャンク!

 

 金型加工に特化した工具を展開していたMOLDINO

 今回、注目したのは、未発売として展示されていたフリーネックタイプの「アルファモジュラーミル専用超硬シャンク」だ。どんどん細くなっていく形がまさに加工の〝かゆい所に手が届く〟的な同社の細かい視点を感じる一品。深い直彫り加工を対象としたもので、アルファ高速ラジアスミル「TR2F」と合わせると、高機能材ダイカスト型の直彫り加工化で加工時間を大幅短縮するという。

 対象壁角度は0.9°以上、1.4°以上、2.9以上の3つのタイプがある。


 

 

 ユキワ精工はツールホルダでワークの自動交換を実現する様子を来場者に示していた。このメリットは機上で自動化されることにより、設備投資のスペースとコストが抑えられること。マシン内のワークストッカーから自動でワークの供給、排出を可能にし、複数個のワークの機械加工を自動化することで夜間運転も可能になるので機械の稼働率がアップするうえ、搬送ロボットの電力不要となり省エネが実現する経済効果も高くなる仕組み。

 中小企業の強い味方! 

 

 

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