製造工程を簡略化! 切削工具のデータベースを提供するCIMSOURCE Japan(シムソースジャパン)

写真左:永田氏 右:ギュル氏

 

 ドイツのソフトウェア開発会社であるCIMSOUCE GmbH。同社は工具メーカーから提供された製品情報のデータをデジタルプラットフォームから工具の利用者に提供することで、工具メーカーにとっては製品の販売代理店としての役割を、工具の利用者にとっては豊富な工具データの供給者としての役割を果たしている。形状や切削データなどを条件検索できるデータ検索サーバーを年契約で提供しており、『ToolsUnited』(ツールズユナイテッド)では、世界中の工具メーカー50社120万種類以上(2024年10月時点)の切削工具データを扱っている。

「年に6回、最新の情報をアップデートしている。今後も国内外の工具メーカーに働きかけ、掲載メーカーを増やしていきたい。」としている同社。CIMSOURCE GmbHのビジネスインテグレーション エルトゥグル ギュル氏、CIMSOURCE Japanのセールスエンジニア永田智和氏にお話しを伺った。


工具のDX化を推進

 ― CIMSOURCE Japanが設立したきっかけを教えてください。
 永田 JETRO、神奈川県、横浜市が連携して支援してくださりました。日本市場でわれわれのサービスを広く提供することを目指しており、国内企業との取引拡大を目指しています。
 ― 日本法人が設立してすぐに新型コロナウイルスが猛威を振るいコロナ禍に突入していまいましたので、日本市場の開拓も大変だったと思います。
 永田 昨年から日本の市場が動き出したように感じます。製造現場では高能率化はもちろん、自動化・省人化に向けたニーズが高まっています。最近になって工具メーカーの皆様も『ToolsUnited』に登録する必要性を感じていただけるようになりました。
 ― 工具の種類も多岐に渡りますし、加工現場で工具が欠品してしまうと大変です。『ToolsUnited』の優位性について教えてください。
 ギュル 工具管理システム(TMS)やCAMへの工具登録を支援、規格に準拠した図面データ3D STEP、2D DXFファイルの提供が可能です。切削工具の3Dデータをデータベース化したものを軸にして、購買、物流、現場での工具形状をもとにした自動識別、工具交換時間の予想など切削工具に関するすべての管理業務をデジタル化しているため、生産分やのみならず経理分野のシステムとのデータリンクが簡単にできます。これまで現場の経験や勘に頼っていた管理項目を〝知識のデータベース化〟することが可能になりますから、将来的にはAI技術などを使った拡張も期待できます。
 ― 従来は、欲しいサイズの工具を探すのにもカタログから探すのが非常に面倒でしたが、工具のDX化が進めば便利になります。
 永田 『ToolsUnited』で欲しい寸法を入力すると簡単に絞り込みができ、リストアップされます。ユーザーが使用しているCAMや工具管理システム(TMS)向けに直接インポート可能なデータを提供していますし、3Dデータをダウンロードしてシミュレーションもできるので、いちいち工具メーカーに問い合わせをする必要もなくなります。そのぶん、時間を有効活用できるうえ、IDO13399およびDIN4000規格に準拠していますから、国際的にも求められている品質を確保できます。

日本とドイツの違い 
 

 ―CIMSOURCEはドイツ企業ですが、日本で活動されていて違いを感じたことはありますか。
 永田 日本は皆で話合いをしてひとつにまとめて合意をし、進めていく印象があります。
 ギュル ドイツでは自分たちの実行したいことや主張をどんどんしていきます。また、ドイツはデジタル化が進んでいて、デジタルマニュファクチャリングにより、プロセスをより効率的に変革して変化が起きても迅速に対応する取り組みをしています。したがって『ToolsUnited』がヨーロッパではとても必要性が高い製品になっています。
 ― 工具の標準化について課題は?
 ギュル ISOがざっくりしているものになっている点が気になります。たとえばドリルやフライスなどのカテゴリー分けがされておらず分かりにくい状態になっているので、われわれで、DINのようにカテゴリー分けをしましょうという働きかけをしています。
 永田 規格の背景を知らないと理解ができないところがあるので、もっと分かりやすくシンプルにしていく働きかけをしています。もうひとつ課題として挙げるのは、規格が承認されて発行されるまでにすごくプロセスが長いと、発行された時にはもう時代遅れになっていることもありますから注意が必要です。
 ― やはり製造現場では工具のDX化で効率を求める動きが加速するでしょうね。
 永田 日本には多くの工具メーカーが存在します。大手は『ToolsUnited』に加入していますが、中小企業がまだ少なく、その要因として、人手不足もあり、デジタル化に移行するために人を割けないという理由もあると思います。そこで、われわれがデジタル化に移行できるようしっかりサポートしていきたいと思っています。

ヨーロッパではデジタルデータがないと難しい

 

 ―労働人口の減少が加速している日本の製造業にデジタル化は急務とされています。
 ギュル 2017年までは工具検索のために『ToolsUnited』が活用されていましたが、現在はシミュレーションがメインになっています。ヨーロッパでは新製品をつくる場合、デジタル化のデータがなければ、そもそもその工具が使われない。つまりフィルターにかかってしまうような状態になってしまうことがあるのです。膨大な工具データをデジタル化するのは大変ですから、私たちに依頼、サポートさせていただければ、製品をつくるユーザーの検討対象になるようにいたします。切削工具メーカーの工具が検討されるか、されないか、というのは工具メーカーにとって重要なことだと感じています。
 永田 工具メーカーはCAMメーカーにも工具データを送っています。そのためだけに工具、インプットテーブル、入力フォームを使ってるので、工具メーカーは、CIMSOURCEにデータを送れば後は自動でできますし、間違や二度手間、三度手間っていうのがなくなります。一方、CAMメーカーも『ToolsUnited』に入って連携させることで、取引のない工具メーカーのデータもユーザーは取れるようになれますから、CAMメーカーも登録していただければ、お互いウィンウィンの関係になれます。従来は、ユーザーが工具を選定するときに、各メーカーが公開している工具情報を得ていました。工具の情報は各メーカーが独自に管理しており、ひとつの工具を選ぶには大変手間が掛かっていましたが、標準化しデータ化することで、登録した工具はCAMで干渉シミュレーションができ、目で確認しながら最適な加工を実行することができます。製造現場のDX化で業務効率化に貢献できるシステムが『ToolsUnited』なのです。
 ギュル CIMSOURCEは工具メーカーとともに成長していく企業を目指しており、『ToolsUnited』に将来性を感じています。またコロナ禍で変わったことのひとつに働き方があります。技術の進化で、工具を直接見て確認をするということの必要がなくなってきました。パソコンなどの通信機器があれば、リモートで場所を問わず、デジタル化したデータで確認する時代が来たのです。これから先もこうした動きは進んでいくとみています。
 ―ありがとうございました。

 

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