天田財団 2024年度(令和6年度)助成式典を開く
去る11月30日、天田財団(代表理事理事長=伊藤克英氏)が「2024年度(令和6年度)天田財団助成式典」をAMADA FORAM(神奈川県伊勢原市)で開催した。
伊藤理事長はあいさつのなかで、「金属加工というものづくりを通じて、継続して世界の人々の豊かな未来を実現することが、アマダグループの責任と考えている。その思いから、天田財団は、金属加工に関する研究・開発への助成により、産業・経済の発展に寄与することを目的として、1987年企業財団として設立され、今年で37年目を迎える。本年度の助成は108件、総額2億9,211万円となった。設立から1,200名を超える研究者の皆さまへ助成させていただき、累計助成金額はついに40億円を超え、42億8,018万円、累計助成件数は2,342件となった。」と説明したあと、「資源のないわが国にとって、私はいつの時代も科学技術のイノベーションこそが、課題を解決して次の時代を切り開く原動力ではないかと考えている。昨年、自然科学分野における日本の地盤沈下ということが顕著だとの指摘もあり、大学院の博士号取得者が減少傾向にあるとも言われている。文部科学省によると、大学院博士課程の入学者数は2023年度に1万5,014人となり、ピークだった03年から2割、特に修士から博士に進学した学生は4割減ったそうだ。日本の博士号の取得者数は21年度に126人で、イギリスの342名、ドイツの338名、韓国の317名と比べ、4割以下に沈んでいる。天田財団が目指しているには、1つに若手研究者を育成することであり、2つ目は研究成果を産業界へ普及啓発し、社会実装につなげることである。公益事業の使命は、より多くの人々の利益に資することである。日本が持続的に発展し、これからも世界で主導的な役割を果たすためには、絶えず科学技術のイノベーションを起こすことが必要になる。 私が現役時代から常に発信していた言葉があります。2番じゃ駄目なんです。2番を目指しちゃ駄目なんです。常に1番を目指してください。天田財団は常に1番を目標にする研究者に助成を行いたいと思っている。」と声援を送った。
続いてアマダの山梨貴昭社長が祝辞を述べた。この中で山梨社長は、「私たちを取り巻く環境は、環境問題に対して技術力でいかに解決していくか、不足する人手をDX、AIなどでどこまで補えるかなど、世界のものづくりの環境は大きく変動し、世界中でさまざまな社会課題やニーズに対して解決策を模索する技術競争が起きていると考える。われわれ、社会で最も身近にある自動車のEV化、DX、AIに欠かせない半導体などは、最たる例だが、その地域を占めていたEVは、一服感があり、ハイブリッド技術が再び着目を浴び、再生燃料や水素の利用も研究が進んでいる。半導体はより高性能で、製造もより効率を追求するために、さまざまな技術が模索され、どのような技術がブレークスルーとして効果を発揮するか、どの国の技術がイニシアチブを取るか、まさに国家、産業、研究機関が関わるグローバルコンペティションが起きている。その一方で、技術を追求する中でも、環境への配慮、労働不足を補う自動化技術やDX、AIをフルに活用することも考慮に入れなければならない。しかし、こういう技術だけでは社会課題を解決するには不十分です。われわれものづくりに携わる関係者が必要としているのは、さまざまな課題を解決するブレークスルーを起こす圧倒的な技術である。これにより、より良い技術で自然環境と共生をしながら、持続可能的な社会活動を構築することへ貢献することが、われわれものづくり企業やさまざまな研究開発に携わる方の使命であり、目的とするところではないか。」と祝辞を述べた。
続いて文部科学省 産学連携・地域振興課 産業連携推進室の迫田健吉 室長から祝辞が述べられたあと、「イノベーションの現状と今後について」をテーマに講演が行われた。
招待講演会として、渡邊一弘 創価大学名誉教授 天田財団評議員が総評を述べ、贈呈式が行われたあと、久保木 孝 電気通信大学 機械知能システム学専攻 教授、寺川 光洋 慶應義塾大学 理工学部 教授がそれぞれ講演した。
場所を移して交流会が開かれ、宴もたけなわのころ散会した。