【令和7年 年頭所感】日本工作機器工業会/日本精密機械工業会/日本フルードパワー工業会/日本工作機械販売協会

「積極的果敢なリスクテイクが必要」
■日本工作機器工業会
会長 寺町彰博

 昨年の世界経済は、ウクライナや中東情勢をはじめとする地政学リスクの高まり、インフレの進行、そして不動産不況などに揺れる中国経済の低迷など、多くの懸念材料がある中で、先行きに対する不透明感がさらに増すこととなりました。日本においては元日に能登半島地震が発生し、そこから復興途上にあった能登地方を記録的な豪雨が襲い甚大な被害に見舞われました。

 一方、夏にはパリオリンピック・パラリンピックが開催され、パリオリンピックでは日本勢が海外開催としては過去最多となるメダルを獲得し、米国MLBにおいては、大谷翔平選手をはじめとする日本人選手が活躍するなど、多くの人々に勇気と感動がもたらされた年でもありました。

 当工業会に関連する動きを見ると、半導体関連においては需要の牽引役が多様化する中で、生成AIなどの新たな成長ドライバーや自国生産拡大の動きなどを背景に今後も大きな拡大が見込まれます。さらに先進国を中心とする自働化・ロボット化の進展、自動車業界における環境対応車へのシフトや再生可能エネルギー関連の投資の拡大など、私たちのビジネスチャンスは大きな広がりを見せています。

 そのような中、私たちがこれらのチャンスをしっかりと掴み、大きな成長を成し遂げるには「積極果敢なリスクテイク」が必要だと感じています。日本は高度成長期において、どちらかというとリスクヘッジよりリスクテイクによって成長してきたといえるでしょう。しかしながら、その後のバブル崩壊により財務の健全性がより重視される中、企業はリスクヘッジへと走り、リーマン・ショックでさらにその傾向に拍車がかかったと思われます。その過度な慎重さの表れとして、これまでの当工業会に関連する需要の拡大期には欧米や中国が先行し、日本が追いつく頃には需要のピークを迎えてしまっているように感じます。さらに、日本において今まさに人手不足が深刻化しているにも関わらずロボットの販売が振るいません。

 しかしながら、日本において産官学が一体となってこのテーマに真摯に取り組み、再びリスクテイクを積極化させることができれば、必ずや私たちはグローバル競争の中で打ち勝ち、世界の製造業をリードしていくことができるものと考えております。

 従いまして、このように環境が激変する中で、当工業会といたしましても、会員の皆様と強い信念を共有するとともに、各社の積極果敢なリスクテイクを後押しできるような工業会となるべく引き続き尽力してまいりたいと存じます。

結びになりますが、会員企業様の益々のご発展と皆様のご健勝とご多幸を心より祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。

「若者取り込みに知恵を出し合う」
■日本精密機械工業会
会長 北井正之

 明けましておめでとうございます。
 皆様におかれましては輝かしい新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。

 今年は2025年。「2025年問題」が起こる年です。いわゆる「団塊の世代」800万人全員が75歳以上、つまり後期高齢者となり、超高齢社会が訪れることで生じるさまざまな影響が出てくることが予想されております。

 我々の業界でも、高齢化、若者離れが進んでおります。高齢化につきましては、非常に技術力のある方がこの業界にはたくさんいらっしゃいますので、健康の続く限り一緒に働いていただきたいと思いますが、若者につきましてはなかなか門戸を叩いてくれません。

 弊工業会では、昨年のJIMTOF2024で学生対象のスタンプラリーを行いました。弊社のブースにも学生が来ました折りに、ものづくりの楽しさ、奥深さを楽しく語ったところ、目を輝かせて聞いてくれました。その時に感じたことは、日本のお家芸であり、この国になくてはならない工作機械業界について、学生に対して、楽しくやりがいがあり、誇りの持てる業界ということをうまく発信できていないのではないかということでした。

 今年は巳年。ギリシャ神話で、医療と知恵の神であるアスクレピオスの杖には、蛇(へび)が巻き付いています。これは蛇(へび)の再生能力や知恵を象徴しているとの事。知恵を出し合い、大手企業だけではなく中小企業にも若者を取り込める仕組みづくりを考え、工作機械業界全体の活性化に繋げていければと思います。

 また、蛇(へび)は弁財天の使いとされています。巳年が皆様にとりましてたくさんの福をよび込む年になりますよう心よりお祈り申し上げ、年頭の挨拶とさせていただきます。

「海外関連団体との交流を強化」
■日本フルードパワー工業会
会長 川瀬正裕

 2025年の年初にあたり、一言ご挨拶申し上げます。

 昨年は、国内外で多くの選挙が行われ、大きな変化が起こる年となりました。我が国では、岸田内閣から石破内閣へ政権交代が行われ、衆議院の与野党逆転が起きました。米国では、次期大統領にトランプ氏が決定し、各国がその対応に追われています。

 東アジアでは、韓国で戒厳令が一瞬発令されるなど、政治的混迷が深まりました。中国では住宅関連産業の低迷や若者の就職難などが続いており、デフレの懸念が高まる中で、成長鈍化が懸念されております。また、ロシア・ウクライナ戦争が続く中、シリアのアサド政権崩壊というニュースも入り、世界情勢はますます厳しさを増しています。

 今年1月には米国で第二時トランプ政権が発足します。米国は対中、メキシコ、カナダに一律関税を課すとの話もあり、中国からの部品調達や海外に進出する中国企業からの部品調達にも影響を及ぼすことが懸念されます。このような状況下で、サプライチェーンの再構築と「経済安全保障」の確保が求められています。

 さて、我が国の経済状況についてですが、昨年12月に発表された日銀短観では、業況判断DIが大企業・製造業で+14%と若干改善しました。特に生産用機械や化学、自動車などの業種が改善し、効率化投資やデジタル化、脱炭素化、サプライチェーン強靭化への投資の必要性が高まっていることが示されています。

 当業界の2024年の出荷額(推定値)は、油圧機器が約3千6百億円、空気圧機器が約5千3百億円となり、対前年比約4.2%減の約8千9百億円となりそうです。このような、厳しい経済環境下、工業会としては、効率的な会議の推進や海外関連団体との交流強化、新しい課題への対応などを進めていきます。また、カーボンニュートラルやデジタル社会への対応、若手技術者の育成にも力を入れてまいります。

 今年は巳年です。蛇は再生や永遠の象徴と言われ、我々にとっても、これまでの努力が実を結び、新たな成長や変革の年となることを期待しています。


「教育事業の充実を図る」
■日本工作機械販売協会
会長 髙田研至

 皆様、新年明けましておめでとうございます。
 健やかに新春を迎えられました事、謹んでお慶び申し上げます。

 昨年を振り返りますと、元旦に能登半島を中心に大きな地震が発生し、多くの方が被災され復興道半ばの被災地で9月には集中豪雨により、またしても多くの尊い人命が失われました。早期に社会を挙げての支援により復興される事を願っております。

 世界情勢はロシアのウクライナ侵攻はまだまだ着地点が見えない現状、中東でのイスラエルの戦闘、米国の大統領がトランプ氏に代わるなど、自国第一主義の台頭、米中の覇権争い、中国経済の失速、円安、物価上昇、人件費高騰など、多くの問題が山積しております
 
 昨年11月JIMTOF、7月にはロボットテクノロジージャパンが大盛況の内に開催され、自動化、高効率化、知能化、デジタル化といった技術革新、工程集約や同時5軸複合加工機など構造的な大変革が求められている中、日本の製造業は生産性を向上させ世界で競争力を回復させることが緊急の課題となっております。

 しかし、残念ながら日本の製造業は理解をしながらも遅々として変化を嫌い、将来に向けての展望が開けていない状況であります。とくに中小の製造業においては、現状のままでは多くの会社が淘汰されるのではないかと危惧しております。この様な中、国のバックアップの元、需要の喚起と共に生産性向上、生産現場の改善など商社は積極的に関与できるスキルを身につける事の重要性を感じており、教育事業の充実を図ってまいります。

 さて、日工販における最大ユーザーである自動車業界様ですが、昨年は認証問題により生産台数が上がらない上に、一昨年にはBEV(電気自動車)に自動車業界全体が大幅に移行される様な状況で有りましたが、世界の自動車メーカーは一変し、投資の見直しが発表されております。トヨタ自動車様においても新たにエンジン開発がされ、BEV(電気自動車)を2026年に150万台と計画されていましたが2027年に100万台と変更される事により、設備投資がされるかと期待していましたが、現実は既存の設備の改造が中心であり、また、BEVの遅れにより新たな投資が先延ばしとなり非常に厳しい一年となってしまいました。では、本年が期待できるかですが、現実的には、トランプ大統領の再登板により、世界のどこに投資をするかの判断が難しくBEVの遅れにより昨年同様に非常に厳しい一年になることが予想されます。

 この様な状況の中、期待できる投資は、自動化、DX化、生産性向上、カーボンニュートラルなど、現場での改善活動を中心に現場主義に徹した活動が重要な営業活動となってまいります。

 最後になりますが、日工販として昨年、日工会様の受注予測の⅓以上を内需で受注したいと5,500億円を目指しましたが、残念ながら昨年も5,000億円に達しない状況です。是非、本年は1/3以上を目指して参ります。

 

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