【令和7年 年頭所感】 日本産業機械工業会/日本工作機械工業会/日本機械工具工業会

「GXに関する技術の開発・実証・社会実装を後押し」
■日本産業機械工業会
会長 金花芳則

 2025年という新しい年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
皆様には、気分も新たに新年を迎えられたことと思います。

 昨年は世界中がポストコロナ経済再生の実質的スタートの年となりました。政治的には、台湾の総統選挙に始まり、ロシアの大統領選挙、インドの総選挙、日本の総理交代及び総選挙、米国の大統領選挙と選挙イヤーでありました。さらに、米中対立の常態化や東アジアの緊迫化、ロシアのウクライナ侵攻の継続、中東での緊張の高まりなど、地政学的リスクはいや増し経済安全保障の徹底・強化の必要性の認識が強まりました。

 こうした中、世界経済を振り返りますと、経済協力開発機構(OECD)が昨年12月に公表した世界経済予測では、インフレ率低下、雇用拡大及び金利引下げなどを背景に、世界経済は今後2年間安定的に成長するとの見通しが示されました。一方で、貿易摩擦と保護主義の高まりでサプライチェーンが混乱し、消費者物価を押し上げ、成長に悪影響を及ぼす恐れも懸念されており下振れのリスクを感じるところであります。

 日本経済動向を見ると、昨年12月の内閣府月例経済報告では「一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している」と5ヶ月連続で景気判断が据え置かれ、設備投資や輸出、個人消費の各項目についての判断も同様となりました。一方で、企業収益については21ヶ月ぶりに下方修正されるなど、景気回復のテンポは緩やかになってきているとのことです。

 産業機械業界の状況ですが、当工業会の受注統計では、昨年4月~9月(年度上半期)の受注総額が前年同期比1・7%増の2兆8162億円となり、年度上半期の受注金額としてはコロナ禍以降で最高を記録しました。官公需と外需が伸びており、官公需は環境装置およびポンプ等の増加、外需は中東や北アメリカがけん引役となりました。

 さて、2025年ですが、我々産業機械業界が更なる成長を遂げ、また、日本経済の活性・発展に貢献するため、次の課題に対し、より積極的な取り組みが必要と考えます。まず、GX(グリーントランスフォーメーション)への対応です。次期エネルギー基本計画の着実な実行を支えるためにも、当工業会会員の皆様が製造・供給する製品・サービスは不可欠なものであります。原子力発電の活用、更なる再生可能エネルギーの導入拡大の他、徹底した省エネの推進や、CCUSの導入、次世代エネルギーである水素・アンモニアの社会実装の加速が不可欠です。産業機械業界は、グリーン産業を目指し、GXに関する技術の開発・実証・社会実装を後押しします。

 本年は第30回を数える海外貿易会議の実施年となっており、スウェーデンとイタリアでの開催を考えています。水素利用の取り組みが目覚ましくイノベーションの盛んな北欧と、スマートファクトリーへの転換が進む一方で新エネルギーにかかる取り組みも積極的なイタリアについて、その実情を調査し現地関係者との意見交換を実施します。

 次に、我が国の経済安全保障への対応です。世界規模でのサプライチェーンの再整備は、日本経済を支える根幹に当たります。我々産業機械業界は、サプライチェーンを構成する製造装置・部素材・原料等の製造能力の強化に資する技術を開発し、生産設備の提供に取り組んでいく必要があります。

 日本産業機械工業会は、こうした社会の変化や課題に応え、地球環境保全、国際交流、標準化などの各種事業を推進し、また、政策提言を積極的に行うなど、産業機械業界並びに会員企業の皆様の事業発展に向けた活動に力強く取り組んでまいります。

 政府におかれましては、昨年12月に成立した補正予算に盛り込まれた「日本経済・地方経済の成長」などへの対応を速やかに実施していただくとともに、水素・アンモニアなどの新エネルギーの活用を含むGX事業の推進・実装に取り組まれますことを期待しております。

 年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましてはなお一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

「世界の産業界はDX・GXを核とする技術革新を加速」
■日本工作機械工業会
会長 稲葉 善治

 2025年の新春を迎え、謹んで年頭の御祝詞を申し上げます。

 さて、昨年を振り返りますと、ロシアのウクライナ侵攻の行方が益々深刻化する中で中東での軍事衝突もパレスチナから周辺諸国へと拡大の様相を呈するなど、地政学的リスクが世界各地域で懸念されております。また、欧米の高金利による経済活動の低迷や中国での不動産不良債権問題に端を発した経済の混迷などが続いており、世界情勢は混沌とした中で不透明・不確実な状況が続いた1年でした。

 一方で、日本の工作機械業界は日工会を中心に、デジタル・グリーン・レジリエンスをキーワードに新製品・新技術の開発を力強く進めて参りました。この結果、工作機械の受注総額は昨年の年初に発表した1兆5千億円には僅かに届かなかったものの、高水準を維持する事が出来ました。

 さて、昨年11月には「技術のタスキで未来へつなぐ」をコンセプトに、我が国工作機械業界最大のイベントであるJIMTOF 2024を東京ビッグサイトで開催し、日本が誇る最先端の工作機械技術・製品を世界に向けて発信致しました。来場者数は前回比13.0%増となる12.9万人、うち海外からの来場者数は前回比2倍強の1万人余を記録する盛況でした。また、今回のJIMTOFでは南展示棟において、特別併催展としてAdditive Manufacturing Area in JIMTOFを催しました。更に、同館において出展者と学生を繋ぐアカデミックエリアを設置する事により学生と現役世代の交流の場を設け、来場者参加型の企画展示も実施致しました。また、国内外の技術者が集う「国際工作機械技術者会議」や全国の学生を招待して実施する「工作機械トップセミナー」など、盛り沢山の併催行事を開催することにより、モノづくりの醍醐味、工作機械産業の魅力を学生諸君に力強く発信致しました。こうした数々の企画を通して、来場者の皆様に工作機械と製造業の明るい未来を感じていただけたと存じます。

 本年につきましても、世界各地の地政学的リスクや、国際社会の分断により、通商環境は一層不安定かつ複雑化していくと思われます。そのような状況の中でも、世界の産業界はDX・GXを核とする技術革新を加速させております。日本の工作機械業界としても、世界の先頭に立ってIoT・環境・自動化等の技術を搭載した高付加価値な工作機械を開発して参ります。一方で、我が国においては、ビンテージの古い老朽設備の更新、少子高齢化による労働力人材の不足といった課題を抱えており、その対応を進めて行かねばなりません。

 日本の工作機械業界は、世界最高の性能と信頼性を誇るモノとしての工作機械の供給を通じてコトづくりを支え、社会課題の解決に貢献する活動を積極的に展開して参ります。関係各位には当工業会の事業に対する一層のご理解とご支援をお願い申し上げます。

「万博で新たに発表される技術や製品に期待」
■日本機械工具工業会 
会長 松本克洋

 令和7年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
 平素から、関係各位のご支援、ご協力に対し、心から感謝申し上げます。

 昨年秋の衆院総選挙において、政権与党が過半数を下回り、野党勢力が議席を増やしました。また、米国でも今月には、第二次トランプ政権が発足する予定です。現在、報道により言われているのは米国政府による関税の引上げ政策で、円安ドル高の状況が続くと思われます。この状況下で、昨年度の当工業会の生産額は4,641億円であり、一昨年度の4,915億円を超える事ができませんでした。

 今年度生産額の当初見通しを約4,950億円としておりましたが、昨年10月の秋季総会で、4,703億円への改訂をご報告いたしました。昨年度比で増加しておりますが、一昨年度実績を超える事ができない状況です。これは、国内の電機・情報通信機器等ハイテク関連向け工具の生産増加と、世界的な半導体需要の回復により関連工具が伸びたものの、国内自動車関連の回復遅れによる為と推測します。そこで、令和7年度の目標としましては、冒頭の米国の政策で厳しい状況ではありますが、生産額5,000億円の達成です。

 昨年9月に3社の会員企業の方々が、初めてIMTSの工業会共同ブースにて出展されました。3社の皆様がどの様にお感じになられたかは、興味深いところですが、米国でのお客様との会話から生まれた種は、必ずや実を結ぶと思っております。今年も次の市場として期待される、インドのIMTEXへの視察ツアーや、前回同様にEMOでの共同出展を工業会としても企画しております。皆様がそれらに参加し、そこから販路を見つけ、それにより生産がアップし、少しでも5,000億円に到達する為に努力される事を期待しております。

 ところで、今年の干支は巳(蛇)です。巳年は復活と再生を意味する年であり、金運上昇、商売繁盛、また蛇はしばらく食べなくても生きていられる事から忍耐強く、長寿、子宝でも良い年と言われています。まずは、景気の浮揚に伴い、我々の業界の生産額が復活する事を切に願っております。

 また、今年は4月13日~10月13日にかけて、大阪・関西万博が開催されます。前回大阪で開催された日本万国博覧会大阪が、約半世紀以上前の1970年に開催されております。その当時、動く歩道、モノレール、リニアモーターカー、電気自転車、電気自動車、テレビ電話、携帯電話等、21世紀の現代社会で普及している製品やサービスが初めて登場しました。

 当時、夢の製品と思われていたものが50年後には、もはや当たり前のものとなり、それが無くては生活に支障が出るものになっている事に少なからず驚きを隠せません。今年の万博でも新たに発表される技術や製品が、50年後にはどの様な形で世界に浸透しているのか、また、どの様に発展するのか楽しみで仕方ありません。

 空飛ぶクルマや、人工多能性幹細胞(iPS細胞)技術を応用した、生きる心臓モデルなど、私達のイマジネーションが及びもつかないようなインフラや、医療における治療技術など50年後の世界を垣間見る事ができるかもしれません。そういった意味では、先日、JIMTOFの寄稿文でも書きましたが、工具の刃先が石器、青銅器、鉄器、特殊鋼、超硬、セラミックと変化してはいるものの、約3,000年以上基本的には回転して切削する事自体は変わっていないと記載しました。加工はこのまま、回転し切削し続けるのか、そうであればどの様に進化していくのか、万博で技術の種が見つかるかもしれません。

 最後になりましたが、皆様の一層のご活躍と、巳年に復活の年となり、商売繁盛となるよう祈念いたしまして、年初のご挨拶とさせていただきます。
 

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