日本工作機械工業会 2024年(暦年)工作機械受注実績
日本工作機械工業会がこのほど発表した「2024年(暦年)工作機械受注実績」の概要は次の通り。
受注
■概 況
2024年の工作機械受注額は、2年連続減少で前年比▲0.1%の1兆4,851億円となった。1兆5,000億円を2年続けて下回ったものの、過去8番目に高い受注額を記録した。年後半からの回復が期待された内需の半導体関連、自動車関連需要が発現せず調整局面が続き、外需では、中国が持ち直しの動きを見せ、北米は堅調さを維持したことで、結果的に受注総額は前年並みを確保した。
このうち、NC 工作機械は、1兆4,616億円(同▲0.1%)となった。受注額全体に占めるNC工作機械の比率は98.4%(同±0.0pt)と、9年連続で98%を超えた。受注総額の内訳をみると、内需は4,415億円(同▲7.4%)、外需は1兆436億円(同+3.4%)で、外需比率は同+2.4ptの70.3%で、暦年実績として初めて70%を上回った。
■内需の動向
2024年の内需は、2年連続で減少し、前年比▲7.4%の4,415億円と2年連続で5,000億円を下回り、4年ぶりに4,500億円を下回った。EV関連投資や半導体関連投資の回復が期待されていたものの本格的な回復は見られず、2023年後半からの調整局面が2024年を通して続く形となった。
業種別にみると、全11業種中6業種で前年比減少となった。主要4業種では「航空機・造船・輸送用機械(前年比+20.1%、242 億円)」以外は2年連続の前年比減少となった。特に、「一般機械(同▲11.1%、1,810億円)」と「自動車(同▲9.5%、910億円)」は4年ぶりに2,000億円、1,000億円をそれぞれ下回った。その他の業種でも、「その他製造業(同▲17.8%、188 億円)」、「電気機械(同▲13.1%、315億円)」が1割を超える減少となった。
■外需の動向
2024年の外需は、2年ぶりに増加し、前年比+3.4%の1兆436億円と4年連続で1兆円を超え、過去3番目の受注額となった。2024年入り後、欧州が弱含み、年後半にかけても低調に推移した一方、アジアでは中国を中心に回復傾向を示し、北米も底堅く推移したことから、月平均870億円と総じて堅調な水準を維持した。
地域別にみると、アジアは2年ぶりに増加し、前年比+21.0%の5,172億円で、2年ぶりに5,000億円を上回り過去4番目の受注額となった。このうち、東アジアは同+21.8%(3,895 億円)となった。また、国・地域別では韓国(同+18.3%、296億円)、台湾(同+10.2%、223億円)、中国(同+23.0%、3,371億円)が軒並み前年比二桁の増加となった。特に中国では、不動産バブル崩壊による経済の不安定化による需要の低下が懸念されたものの、補助金政策の効果もあって持ち直し、その後もEV やIT関連の大型受注も加わって高水準の受注が継続し、過去4番目の受注額となった。その他アジアは、前年から好調が続くインド(同+25.6%、642億円)で年後半からIT関連投資が拡大し、2年連続で過去最高額を更新した他、ベトナムでもIT関連投資が見られ、全体では同+18.5%の1,277億円と2年ぶりに増加し、6年ぶりに1,200億円を超え、過去2番目の受注額となった。
欧州は、ウクライナや中東などの地政学リスクに、エネルギー問題や金利高等の影響が懸念される中にあっても、2023年までは堅調水準を維持していたが、2024年入り後はドイツを始めEU主要国を中心に弱含み、欧州の全ての国・地域で前年割れとなった。国別では、EU(同▲17.4%、1,404億円)域内のドイツ(同▲26.8%、414億円)、イタリア(同▲27.0%、240 億円)がともに2割を超える減少となったほか、スイス(同▲57.0%、64億円)、“東欧”(同▲39.3%、13 億円)等が大幅な減少を示した。
北米は、同▲4.5%の3,062億円と2年連続減少も、3年連続で3,000億円を超え、過去4 番目の受注を記録した。アメリカ(同▲5.2%、2,673 億円)は、日本と同様、自動車関連の需要に勢いが感じられないものの、大手企業の受注が下支えした一般機械や電気・精密が堅調だったほか、航空宇宙関連では大型受注が多く発現し、航空機・造船・輸送用機械の受注は過去2番目を記録した。また、カナダ(同▲3.0%、193 億円)は4年ぶり減少も、前年に次ぐ過去2番目となった他、メキシコ(同+5.3%、197億円)は、4年連続で増加し、一般機械以外の主要業種は前年から増加を示した。
主要3極別の受注シェアは、アジアが49.6%(同+7.3pt)、欧州が18.1%(同▲5.0pt)、北米が29.3%(同▲2.5pt)となった。国・地域別シェアでは、1位が中国で32.3%(同+5.2pt、前年2 位)、2位がアメリカの25.6%(同▲2.3pt、前年1 位)、3位はインドで6.2%(同+1.1pt、前年4位)、4位がドイツで4.0%(同▲1.6pt、前年3 位)、5位が韓国で2.8%(同+0.3pt 前年6 位)、6位がイタリアで2.3%(同▲1.0pt、前年5 位)、7位がフランスで2.2%(同▲0.2pt、前年7位)、8位が台湾で2.1%(同+0.1pt、前年9位)と、首位が交代した他、欧米勢が順位を下げ、アジア勢が順位を上げた。
■機種別の動向
受注額を機種別(含むNC機)でみると、全11機種中7機種で前年比減少となった。主な機種別の受注額は、旋盤計が前年比▲3.5%の4,893億円で、2年連続減少で、4年ぶりに5,000億円を下回った。内訳では「うち横形(同▲3.2%、4,574億円)」、「うち立て・倒立形(同▲7.9%、319億円)」とも減少した。一方、旋盤計における「うち複合加工機(同+6.2%、2,267億円)」は前年比増加しており、生産効率化、省人化のニーズが高いことを裏付ける結果となった。なお、旋盤計に占める複合加工機の割合は46.3%と前年から4.2pt 上昇し、初めて45%を超えた。
マシニングセンタは、同+2.6%の6,310億円で2年ぶり増加も、2年連続で7千億円を下回った。「うち立て形(同+6.5%、3,598億円)」、「うちその他(同+13.4%、680億円)」が増加した一方、「うち横形(同▲6.4%、2,032億円)」は減少した。また、マシニングセンタ計における「うち5軸以上」は同+4.5%の1,645億円で、マシニングセンタ計よりも増加率が高く、受注総額が過去最高を記録した2018年(1,642億円)を上回った。特に「横形」と「うちその他」の「うち5軸以上」は、3割以上の増加を示した。その結果マシニングセンタに占める“うち5軸”の割合は26.1%(同+0.5Pt)と2年連続で上昇し、2年連続で25%を超えた。その他の増加機種は、ボール盤(同+56.6%、3億円)、放電加工機(同+15.5%、520億円)、歯車機械(同+11.9%、314億円)となっている。
販売額
販売額は前年比▲5.6%の1兆5,262億円で、4年ぶりに減少したが、3年連続で1兆5,000 億円を超えた。うちNC機は、同▲5.5%の1兆5,033億円となった。引き続き高い受注残高を背景に、販売は引き続き高水準で推移した。
機種別(含むNC機)にみると、全11機種中10機種で前年比減少となった。主な機種別販売額は、旋盤計が同▲6.4%の5,133億円、マシニングセンタ計が同▲5.1%の6,302億円、研削盤計が同▲6.5%の925億円、レーザ加工機などの「その他」計が同▲4.6%の1,530億円となった。
受注残高
2024年末の受注残高は、前年末比▲2.3%の7,678 億円で、2年連続で減少したものの、4年連続で7,000億円を上回った。受注が調整局面入りし、部品不足が徐々に解消する中で、2022年10月に9,201億円まで膨らんだ受注残高は、2023年11月に8000億円を下回ったものの、外需を中心に受注が堅調に推移する中にあって、8,000億円前後の水準が続いており、引き続き高いレベルにあると言える。当該年末の受注残高を直近3カ月(24年10~12 月期)の販売平均で除した「受注残持ち月数」は5.6カ月で前年末から0.2カ月低下した。また、NC工作機械の受注残高は同▲1.9%の7,463億円となった。