【インタビュー】「EMOハノーバー2025で世界のメガトレンドに注目」

世界有数の生産技術専門展示会「EMOハノーバー2025」が本年9月22日~9月26日までドイツのハノーバー国際見本市会場で開催されるにあたり、「EMO Hannover 2025 World Tour」で来日したEMOの主催者であるドイツ工作機械工業会(以下VDW) エグゼクティブダイレクターのDr.マルクス・へーリング氏とドイツメッセ ヘッドオブニュービジネス ハートブィヒ・フォン・ザース氏にインタビューを実施した。
公平性が担保されるEMO

ドイツ工作機械工業会では、昨年の工作機械生産額は約87億米ドルで日本は世界のトップメーカーの中で3位されており、生産量の60%が輸出されているとしている。「アジアの重要な出展社の中で日本はEMOでも際立つ存在になる」と予想。へーリング氏はEMOの公平性について、「たとえば中国の展示会であれば、ほとんどの出展者は中国メーカーで来場者も自国の方が多い。意思決定者なのか、あるいは生産ラインの方なのか分かりにくいと感じてしまう。それに対してEMOは、様々な国から来ている国際性が担保され意思決定者も多く、中国で得られるようなチャンスよりももっと幅広いと考えている。」と話す。
工作機械は最終製品に大きな影響を与えるものになり、国の工業力にも直結するため、工作機械産業は非常に大きな影響力があるものだが、現在、競争の激化や投資の鈍化など、世界規模で解決しなければならない課題は業界全体にも見られるうえ、製造現場では熟練労働者の不足が問題視されている。これを解決する鍵のひとつに自動化・標準化があるが、130年以上の歴史があるVDWは「標準化は常に重要テーマとして扱ってきた。」という。
その理由について「最終的に輸出されたとなった時に、それを扱っていくお客さま、あるいは生産者からしても、コストそのものを削減する効果もあるうえ、製品の競争優位性を上げていくことにも資していく。その上で選択肢が増える環境をつくってきたと思う。やはり私たちドイツの単一国の市場っていうのではなく、EU、ヨーロッパとしての市場を設けていくことになっている。多国籍、様々な国の人たちが一堂に会しているわけで、もちろんヨーロッパ、EUは大きなカスタマーベースを持っている巨大なマーケットであり、個々にいる国が一つにならなくてはならず、それには標準化というのはすごく重要なプロセスだった。その点は、少々日本と違うのかもしれない。」とへーリング氏。
ひとつの産業ではなく裾野を広く

ドイツの工作機械業界産業として現在注目すべき点について尋ねてみると、へーリング氏は、「メカニカルエンジニアリングとして、ひとつの産業に特化するというよりはできるだけ裾野を広くしていく。以前は自動車寄りの時もあったが、最近ではより注目度が上がっているのは防衛産業。医療系では高齢化が進む中では解決しなければいけない問題からバイオアプリケーションもある。さらには航空・宇宙産業も裾野の広いアプリケーションの多い産業でもあるので、ここから先はいかに持続的にユーザーベースとして拡大していく見込みがあるのか期待したいところだ。」との見方を示した。
さらに、気になる自動車の未来については、「EVなのか水素なのかという風潮があるが、これといって断言できるものではなく、いずれにせよ、ここから先はどういうふうに先端化していくのか、イノベーションを図っていくのか、といった点にあると思う。目標を達成するためにはなにが必要なのか、ということを考えたら、未来のモビリティーと交通輸送について、しっかり議論する必要があるのではないか。そのためにはどういった技術が必要なのかと考えなければなりません。」と述べたあと、電気自動車が出現したころを振り返り、次のように続けた。
「そもそも電気自動車がでてきた1970年代から、EVの話はあったはずなんですが、そのチャンスを私たちは逃してきたというような歴史がある。内燃機関がどんどん発達していくなかで、コスト的にも内燃機関が良いという風潮もあり、結局EVの話は当時なかなか進まなかったのではないかと感じている。」(へーリング氏)
EMOでは材料の進化も見られ、積層造形も注目!

今回のEMOでは、新たな原材料、新たな技術を紹介する場でもあるので、ホットな見どころといえば、〝積層造形〟だという。
フォン・ザース氏は、「ぜひ今年のEMOはとにかく今までよりもさらに重要性を持つ業界の者にとってのワールドサミットのようなものになるので、参加はマストであり、イノベーションとして重要なタイミングに来ているということを申し上げたい。デジタル化が加速するなか、例えば、イノベーションで三角形を描くならば、自動化があり、持続可能な技術があり、AIがある。これらのイノベーションをここから先へ進めていく。もしかしたら指数関数的な動きも、爆発的なイノベーションの成長も、ここから先期待できるかもしれない。それが今度のEMOで垣間見ることができるかもしれないので、ここは参加必須だと思っていただければ嬉しい。」と世界有数の生産技術専門展示会であるEMOへの期待と意気込みで締めくくった。