日本能率協会 「2024年度(第45回)当面する企業経営課題に関する調査」の結果を発表
日本能率協会(会長=中村正己氏)は、このほど「2024年度(第45回)当面する企業経営課題に関する調査」の結果を発表した。この調査は、企業が直面する経営課題を明らかにし、今後の経営指針を探ることを目的として1979年から実施しており、今回は第1弾として、~当面の経営課題編~の調査結果のポイントの4つを以下のとおり紹介している。
(1)「現在」の経営課題「人材の強化」と「収益性向上」が突出
「現在」の経営課題として、「人材の強化」「収益性向上」が約5割で、他の課題と比較して突出して高い割合を示した。「人材の強化」は、2年連続で1位となっており、生産年齢の減少に伴う人材獲得競争が激化している。「収益性向上」は、原材料費やエネルギー価格の高騰、人件費上昇など、コスト増加要因への対応が求められているためと考えられる。
(2)「3年後」の経営課題「デジタル技術・AI活用」が、8.3ポイント上昇
「3年後」の課題は、依然「人材の強化」が5割近くを占めている。現在の経営掲題との比較では、「デジタル技術・AIの活用・戦略的投資」が、11位から7位へ8.3ポイント上昇しており、AI活用の本格利用の機運が向上していることが示されたと考えられる。他方、「収益性の向上」は、12.3ポイント低下しており、各種コスト増加要因の対応を、「3年後」までに完了させたいとの思いが感じられる。
現在・3年後の経営課題として重要度が高い項目(上位項目を抜粋)
(3)大企業は「事業ポートフォリオの再構築」への取組みを推進
「現在」の経営課題の従業員の規模別の特徴としては、以下が挙げられる。
【大 企 業】「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」が33.0%と非常に高く、長期的な経営環境変化を見据えて、積極的な事業基盤の転換や見直しの推進を進めていると推察される。
【中堅企業】「人材の強化」は49.5%、「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」は20.0%で、大企業、中小企業と比較して2倍近く差がある。人材確保について、採用だけでなく、社員の離職防止やエンゲージメント向上も含めて対応する必要性が示唆されている。
【中小企業】「人材の強化」が49.7%と高く、採用競争が激化し、思うように採用できない状況と推察される「売り上げ・シェア拡大」も48.0%と高くなっている。
現在の経営課題で従業員規模別の特徴
(4)組織・人事領域の課題では、大企業は「動的な人材ポートフォリオ」を推進、中堅・中小企業は社員の転職・離職防止(リテンション)が急務
組織・人事領域の課題の1位は、「次世代経営層の発掘、育成」となっている。「若手社員・優秀社員のリテンション(定着、離職防止)」は、昨年より+11.1ptと大幅に課題レベルが上昇した。中堅・中小企業では、採用だけで人材を確保することも難しく、社員の転職・離職防止(リテンション)に注力することで事業の継続的推進ができる体制を維持することが急務となっているためと推察される。大企業では、「人材版伊藤レポート2.0」に示されている「経営戦略と人材戦略の連動」「動的な人材ポートフォリオ」に該当する課題が30%以上となっている。特に「動的な人材ポートフォリオ」に該当する「事業戦略達成に必要となる能力・資質を有する人材の予測と機動的配置(人材ポートフォリオ最適化)」は、昨年より+21.8pと大幅上昇しており、非常に注力している課題となっている。
組織・人事領域課題の上位項目と従業員規模別の特徴
■「2024年度(第45回)当面する企業経営課題に関する調査」概要
【調査時期】2024年9月13日~11月30日
【調査対象】日本能率協会の法人会員並びにサンプル抽出した全国主要企業の経営者(計5,074社)
【調査方法】郵送調査法(質問票を郵送配布し、郵送及びインターネットにより回答)
【回答数・回収率】回答数470社・回答率9.3%
■「2024年度(第45回)当面する企業経営課題に関する調査」報告書
▼以下のURLで、2025年4月1日以降、公開予定▼
https://www.jma.or.jp/website/report.html