日本工作機械工業会 新会長に坂元繁友氏

日本工作機械工業会は去る5月30日、ホテルニューオータニ(東京都千代田区紀尾井町)で開催した第16回定時総会で、新会長に坂元繁友 芝浦機械社長を選出した。前会長の稲葉善治 ファナック会長は相談役に就任した。
会見の席上で坂元新会長は、「大変変化の激しい、不透明、不確実、不安定な時代に会長職を拝命し、身の引き締まる思いである。伝統ある会長職の責任の重さを痛感するとともに、大きな使命感を感じている。この大任を果たし、業界全体の発展を図るために、粉骨砕身努力いたす所存である。工作機械業界を巡る状況は各国の関税政策の動向や、米国の関税政策の動向や世界各地域における地政学的リスクにより、当業界は難しいかじ取りを迫られる局面にあるかと実感している。製造業ではDX、GXを軸とする方向に変化の進化のスピードを早めており、工作機械は少子高齢化時代に適応した周辺装置類と融合した自動化技術も進展している。日本の工作機械産業は、これからの急速な時代の変化に柔軟に対応して、世界の製造業の発展に貢献していかねばならないと考えている。日工会としては、各議会等の前年度活動結果を元に策定いたしました事業計画に沿って、2025年度の事業を4月から間断なく進めている。前期から取り組んでおります、デジタル・グリーン・レジリエンスを中心とした調査研究事業のほかに、国際交流の推進、広報活動など、幅広い事業につきまして、コンプライアンスを重視しながら展開して考えている。」と意気込みを示した。

前会長の稲葉相談役は、「会長として2期4年の間、DX、GXによる技術革新や、需要構造の進化、通称環境の複雑化など、産業界を取り巻く環境は刻々と変動した。米中覇権争い、突然起こった新型コロナのパンデミック、、ロシアのウクライナ侵攻、トランプ大統領が再選し、矢継ぎ早に関税政策が発されて世界中が不透明、不安定な時期に突入した。日工会としては着実にやるべきことをやるべく足元を固めるためにデジタル・グリーン・レジリエンスなどをはじめ実績を上げることができた。ご無理をお願いし、坂元新会長にこれからの舵取りをお願いするが、現時点で非常に厳しい環境にある中だが、これまでの企業経営での経験を活用され、業界を熟知されているので、しっかりと日工会を牽引されていくと確信している。」と声援を送った。

「イノベーションは止まらない」
総会終了後の懇親会で、あいさつに立った坂元会長は、新会長としての意気込みを示したあと、「わが国工作機械産業を巡る環境は世界情勢を見回すと、米国の関税政策の動向や、世界各地における地政学的リスクの顕在化により、不透明感が漂う状況と認識される。製造業は生産拠点やサプライチェーンの再構築を迫られている可能性がある。当業界においては経済安全保障などに関して細心の注意が必要となり、難しいかじ取りを迫られる局面に差し掛かっていると痛感している。世界情勢は今後も不安定な状況が続くと懸念されているが、このような状況での世界の産業においてイノベーションは止まることなく、人材不足や人件費高騰、熟練従事者の減少に対して、生産工程の省人化、自動化、そのほかAI機能の発展も進展している。私たちは技術革新に対応した世界トップレベルの製品とサービスの提供を通じて、今後も世界のものづくりに貢献していきたい。」と意気込みを示した。
国内製造業の課題についても触れ、「保有工作機械のビンテージは10年以上の割合が6割を占めている。諸各国の設備に対して生産性や省エネ性の面で大きく劣ってきているという状況だ。本年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画において、古い、旧式の工作機械をはじめとする生産設備等の省エネ性能の相対的なリスクが、わが国産業競争力強化につながる官民一体となった取り組みの必要性が指摘されている。最新設備への設備更新は日本の製造業の国際競争力を維持、強化させると同時に、社会課題の解決に向けた取り組みと位置づけられている。」と述べた。

来賓を代表して、経済産業省の田中一成大臣官房審議官が、「30年間にわたるデフレ構造から脱却しようとしている。1月には経団連から2030年135兆、2040年に200兆、このような野心的な国内投資の官民目標を表明された。さらに、平均の賃上げ率が2年連続で5%を超えるという高い水準も達成している。この勢いをしっかりと地方の中小企業、小規模事業者の賃上げにもつなげていくため、国内投資を通じて経済成長を実現するとともに、中小企業や賃上げ原資を確保できるよう、価格転嫁、取引適正化に引き続きペースを上げて取り組んでいく。現在アメリカによる関税措置の影響を受け、世界経済の先行き不安定だが、経済産業省では先月対策本部を立ち上げ、全国約1,000カ所以上の特別相談窓口、さらには中小企業向けの資金繰り支援に取り組んでいる。」と声援を送った。
乾杯の発声は前会長の稲葉善治相談役が行った。宴もたけなわの頃、散会した。
