「グローバル展開への本気を示す覚悟」 ~オーエスジーダイヤモンドツール 神谷社長に聞く~

 

 オーエスジーダイヤモンドツール(社長=神谷伸顕氏 本社:滋賀県高島市今津町)は1968年に創業以来、ダイヤモンド切削工具メーカーとして製品を開発、製造・販売を手掛け、自動車・電機業界をはじめ、液晶関連・通信関連・光学部品・医療関連等、多岐に渡る産業で貢献している。2024年12月、日新ダイヤモンドから、社名をオーエスジーダイヤモンドツールに変更し、今春にダイヤモンド切削工具の教科書を兼ね備えたカタログ『The Diamond Basics』を刊行し、6月にはデジタルブックにして同社Webサイトに掲載。ダイヤモンド切削工具の敷居の高さと知名度の低さを打開すべく、業界全体の活性化を図っている。

 新社名への変更の思いや、教科書を兼ねたカタログ製作の狙いについてお話しを伺った。

工場内も設備が増強されている

 ― 昨年12月に日新ダイヤモンドから、オーエスジーダイヤモンドツールに社名を変更しました。その理由や心境の変化を教えてください。
 神谷 世界で唯一、極小径の単結晶ボールエンドミルを製造できるメーカー、神奈川のマイクロ・ダイヤモンド社の事業継承に加えて、OSGがグループ化したオランダのContour社との協業体制の構築を経て、OSGグループとしてダイヤモンド切削工具事業に本格参入する準備が整いました。その意志を明確に市場へ示すため、グループ名である「OSG」を冠した社名へと変更いたしました。これは、世界に向けたダイヤモンドブランドとしての覚悟と、グローバル展開への本気度を示す象徴です。
 ― オーエスジーの中期経営計画に微細・精密加工分野の拡大を掲げていました。日新ダイヤモンド社、Contour社、マイクロ・ダイヤモンド社の3社が協業をする、そのシナジー効果について教えてください。
 神谷 3社はそれぞれ得意とするジャンルが異なりますので、一般、精密、超微細工具の幅広い分野での製品提供が可能となりました。Contour社は眼鏡や眼内レンズなど各種レンズ向けの単結晶ダイヤモンド工具では世界トップレベルのメーカーですから、医療系レンズの新規分野へ参入することができます。特に日本は高齢化が進んでいますから今後眼内レンズなど医療分野は期待ができると思いますし、現在、半導体製造装置の部品にもダイヤモンドツールは欠かせません。ダイヤモンド切削工具は、すべての工具材料の中で最も高い硬度と優れた耐摩耗性を持ちます。そのため、アルミニウム合金、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、セラミックスなどの難削材に対して、極めて高精度で効率的な加工が可能です。また、工具寿命が長く、工具交換頻度の低減や加工品質の安定にも寄与します。特に超精密加工分野では、表面粗さの向上や微細形状の成形において欠かせない存在です。

カタログ製作に込めた想い

粗加工から超微細加工まで対応できる連携体制が強み

 

 ―アイテム数も増加し、総合ダイヤモンド切削工具メーカーとして今春にはダイヤモンド切削工具の教科書を兼ね備えたカタログ『The Diamond Basics』を刊行し、6月にはデジタルブックを同社Webサイトに掲載しましたが、この狙いは。
 神谷 社長に就任して以来の5年間、市場を歩きながら痛感したのは、お客様はもちろん、OSGグループ内の関係者においても「ダイヤモンド切削工具」への理解が十分でないという現実でした。そこで、「ダイヤモンド切削工具の教科書」となるような冊子を作りたいと考えました。ダイヤモンド工具に対しては、「価格が高い」「納期が長い」「扱いが難しい」といったイメージを持たれているお客様が多く、実際には超硬工具では対応できない領域で、非常に大きな可能性を秘めていることがあまり知られていません。
 ― 確かにダイヤモンド工具といえば、非常にマニアックな印象があります。
神谷 本冊子では、ダイヤモンド工具の基礎知識から応用事例までをわかりやすく解説するとともに、すぐにご使用いただける標準在庫品のカタログ情報も充実させ、「手に取りやすく、使いやすい」ダイヤモンド工具としての認知拡大を目指しています。
 ― カタログは結構なボリュームがあります。商品群はどのくらいになりますか。
 神谷 標準品は計28品目。総ページ数は100ページ以上となっています。単なる製品カタログとしてだけでなく、ダイヤモンド切削工具に携わる全ての方々のディファクトスタンダードとなる冊子にするため、随時内容を充実させる所存です。
 

カタログは公式マスコットキャラクター「ダイヤン」がノウハウや加工時の注意点などを解説しており非常に分かりやすい内容となっている

 ― ダイヤモンド工具は特注品が多いイメージがありますが、標準品を多く揃えているのも貴社の強みです。積極的に標準品を揃えたのはどうしてですか。
 神谷 私は、「売れるモノを標準品にするのではなく、お客様が要求しているものを作るように。」と言い続けていました。このカタログには、ポテンシャルが大きいダイヤモンド工具への理解を深めるため、ダイヤモンドに関する基礎知識の部分や、加工時例までを掲載しています。
 ― Contour社の製品も標準化しています。
 神谷 今回のカタログでは従来の標準品から、17品目の新アイテムを一挙にラインナップしました。中でも注目していただきたいのは、Contour社が得意とする「N-Insert-UP(単結晶ダイヤモンドインサート)」や「N-Precision Bite(単結晶ダイヤモンドバイト)」を標準在庫品としてご提供できるようになったことです。これまで特注対応が主だった高精度工具を、必要なときにすぐ使える体制を整えたことは、業界にとって大きな価値を提供する第一歩となります。同工具を手軽に試してもらい、新市場開拓に繋げていきたいと考えています。
 ―ありがとうございました。

▼オーエスジーダイヤモンドツールのデジタルブックはコチラ▼
https://osg-diamond.co.jp/

 

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