OSGグラインドテック 新工場をお披露目

オーエスジーの100%子会社であるOSGグラインドテック(社長=狩生宗毅氏、本社:茨城県常総市)が本年6月9日、新工場を記者団に披露した。従来からの「ねじ転造工具」「切削工具の再研磨サービス」事業に加え、新たな柱としてオーエスジー大池工場から設備を移管し、「超硬エンドミル等の製品生産」をスタートさせた。新工場をレポートする。

まず、ドリルやエンドミル等などの工具再研磨生産エリアを拝見。工場の1/4程度の敷地が再研磨工程で活用されている。設備は、NC機が13台、手動機や小型設備を含めると、再研磨生産エリアで約70台の設備を保有。左を見ると黄色いカバーのある自動供給装置(ローダー)があった。NC機13台のうち4台はローダーが付いており、大ロットのものはローダー機で夜間運転をしているという。小ロットのものは、半自動の設備で生産し、1ロットあたり製品の本数は2.5本~3本程度という細かな製品の生産をしている。生産能力は超硬エンドミルが中心になるが月産で1万3000本の生産能力を誇る。
さらに進んでいくと、工場の真ん中に大きな通路があり、工場の半分ほどの面積を占めるのは、ねじ転造丸ダイスの生産エリアだ。このエリアはねじ転造丸ダイスのメインの工程である〝ねじ研〟が実行される。こちらの設備はねじ研以外の工程を含めるとNC機が34台、小型の設備等を含めると約70台の設備で生産をしている。なお、4月に最新の〝ねじ研設備〟を導入し、現在、ねじ研工程はNC機18台で生産している。こちらの生産能力は月産で900セット(転造ローラーは2個1セットで使用する)。今後は生産性を向上させ、月産1,000セット以上を目指す。

さらに奥へと進むと自動倉庫があった。ここは転造丸ダイスの新品を製作する際の半製品を保有している。左を見ると、転造丸ダイス工程の仕上げ工程と検査工程が行われていた。
一度工場の外へ出て工場の南側へ移動すると、小屋があった。ここは潤滑油等を保管する油庫と破棄物の分別する場所となっていた。回りを見渡すと、森に囲まれており、緑の香りが心地よい。まさに自然の中の工場である。

もう一度、工場内に戻ると、通路の左側に、転造丸ダイス製品の前工程が行われているエリアがあった。端面研磨、内面研磨、外周の旋削加工が行われる。パレットの上には、前工程が完了した製品が鎮座し、次の工程であるねじ研工程を待っていた。
続いて、超硬切削工具を生産するエリアを見学。ここはオーエスジー大池工場の生産設備を移設し、本年3月から本格的にこの工場で超硬エンドミルの生産を開始したエリアであり、オーエスジー関東エリアの分工場といったところ。設備は複合研削盤が8台、分割工程の設備が4台。このエリアだけ壁で囲まれている。その理由は、高精度の加工は、温度変化による設備の姿勢変形等が製品精度に影響を与えるため、このエリアは±1度程度で徹底温度管理をしていた。生産能力は月産約1万本。空いているスペースには、今後、オーエスジーからの設備移設を進め、2028年には現在の3倍にあたる3万本の生産を目指し、生産量を引き上げていく方針。その頃には35台の設備がズラリと並ぶ予定だ。

工場の西側は、広さ23,000㎡ほどが空いており、将来増設用の敷地となっていた。他にも、110名ほどが収容できるお洒落なインテリアが設置されている広い食堂があった。仲間とお話ししながら食事を楽しんで欲しいという思いが込められた食堂である。広さを確保したのは、月に1度の全社員に向けた朝礼や、大人数で行う会議にも活用するためだという。
敷地内にあったオーエスジー各工場のシンボルとして設置されている三澤憲司氏の作品にも注目したい。黄金色に輝く丸い形の先はオーエスジーの大池工場を向いているという。会見の場には三澤氏も登壇し、この作品は、「地球内部から地表に出た物質が、若者たちの叡智によって磨き上げられ宇宙へ向けて反射する。この工場は、ヴィヴィットで、ジャイアントである。」と作品についての思いを語った。

狩生社長は、「来年60周年を迎えるにあたり、新工場を建設、移転を機に旧社名のエスデイ製作所からOSGグラインドテックとして生まれ変わり稼働を開始した。本年1月からオーエスジーグループの一員として事業拡大と成長路線を進んでいる。この工場は、オーエスジーグループの戦略の1つである地政学リスクへの対応にも備えている。」と話した。

オーエスジーの石川則男会長兼CEOは、今回の新工場建設について、「トランプ政権によるデカップリングもあり、この工場は先行き不透明感が増す中でリスク回避に必要なBCP計画に沿った考えのもとで建てられている。幸いにして現在、超硬エンドミル、ドリルの受注環境が良くなっているが、海外の人件費は高騰しているのでこのタイミングで工場を立ち上げたことは良かった。」と述べ、オーエスジーグループの広がる可能性に期待を滲ませた。