日本機械工具工業会 新会長に住友電気工業 佐橋稔之常務を選任 第11回定時総会並びに創立10周年記念式典を開く

 

 日本機械工具工業会が去る6月3日、東京マリオットホテル(東京都品川区北品川)とオンライン併用で第11回定時総会並びに創立10周年記念式典を開催し、新会長に佐橋稔之氏(住友電気工業常務取締役アドバンスドマテリアル事業本部長)を選任した。また、小原和生氏(三菱マテリアル 執行役常務加工事業カンパニープレジデント)と、田野井優美氏(田野井製作所代表取締役社長)が新たに副会長に就任した。

 10周年特別記念講演では、東京電機大学 工学部機械工学科 松村 隆教授が「切削加工技術の変遷とこれからの高度化技術」をテーマに講演し、聴講者は熱心にメモを取る様子が見られた。

 2025年度『生悦住賞』『新庄(陰徳の士)賞』各受賞者の表彰が行われたあと、報告事項として、総務委員会、技術委員会、環境委員会、国際委員会からそれぞれ報告があった。また、事務局から「2025年度機械工具当初生産見通し」について説明があった。

 それによると正会員へ実施したアンケート「機械工具観測調査」DI値によると、全体業況は、2024年度末に比べ上期は良くなる回答が多く、機械工具の生産額も増加予測で内需・外需ともに先行きは良化すると見られている。業種別では航空機関連向けが増加傾向、外需地域別ではアジア向けた比較的増加する見方が多い結果となった。また、半導体関連は回復基調だが、工具需要の回復は下期になること、中国の輸出規制、長期化する国際紛争と米国関税問題などを考慮すると経済環境の完全回復は2026年度下期以降になると予測する回答が多くを占めた。

 2025年度当初生産額見通しについては、2024年度下期の生産額は前年同期を上回り、対前年度比103.9%の2,399億円となり2024年度実績は前年度比101.7%の4,720億円となった。今回調査した2025年度見通し調査結果と観測調査のDI値とは必ずしも相関しないが、正会員へ調査依頼した生産種目ごとの対前年同期比見通し集計(生産額見通しの増減やコメント)をもとに、機械関連業界の傾向や観測調査の意向も踏まえた結果、2025年当初生産額見通しは前年度実績を上回る、前年同期比102.5%の484,000百万円とした。

2025年度生悦住賞

 

 生悦住賞は、1978年に生悦住貞太郎ダイジェット工業会長が傘寿を迎えたことを機に、超硬工具協会(現日本機械工具工業会)が同年に創立30周年に当たることを記念して協会に多額の寄付をし、この有効活用を目的として「生悦住基金」が設けられ、①会員で草の根的に功労のあった人、②会員内外を問わず業界発展に貢献された人、を表彰するために設定された表彰制度である。

小谷二郎氏 (元 三菱マテリアル)
〈略歴〉
 2016年11月~2023年6月 総務委員
 2017年 2月~2023年6月 国際委員
 2019年 6月~2021年6月 国際委員長
 2021年 5月~2023年6月 総務委員長

〈功績の概要〉
 小谷氏は、2019年からの2年間、国際委員長として活躍。EMO2019(欧州工作機械見本市)ではJTAブース出展や会員による視察ツアーを行った。翌年からの新型コロナ感染症拡大の影響で委員会活動も厳しい舵取りを強いられたが、先を見据え会員企業の海外進出支援企画を継続させた。

 2021年からの2年間は総務委員長に就任。ウィズコロナとなった社会を認識しWEB併用によるハイブリッド会合開催を常時実施。工業会事業の要となる会員統計では、AWSクラウドを利用した統計システムの運用開始を実現することで、プログラムによる自動集計と会員各社がいつでも統計データを取り込めるJTAデーターベースを国からの補助金でほぼ完成させた。また、2022年10月には任意団体だった同工業会を「一般社団法人日本機械工業会」として法人登記を完了し、世の中において機械工具業界の存在を確かなものとした。

2025年度新庄賞受賞者

新庄賞は新庄鷹義氏が55年在任された冨士ダイス(株)社長職から会長職へ昇格し、併せて米寿の慶事にあたる年に、同氏から多額の寄付をもとに新庄基金が設けられた。需要資格者は、会員企業(正会員)の〝陰徳の士〟的立場にある人(一般には目立たないながら、会社にとって非常に有用なことを実践している人、パート従業員、派遣社員、ボランティアを含む)で、所属企業からの推薦を受け表彰する制度である。

・柿谷幸弘(エフ・ピー・ツール)
・小沢幸夫(MMCリョウテック)
・松井広行(オーエスジー)
・大曽根克枝(田野井製作所)
・塚原正企(富士精工)
・澤田 清(瑞穂工業)
・吉村 彰(MOLDINO)
・我妻弘志(彌満和製作所)

「団結力が重要」

佐橋新会長

 懇親パーティであいさつに立った佐橋会長は、製造業のトレンドでもあるデジタル化について触れ、「デジタル化については、世界の切削工具業界にも負けないようわれわれも進んで行きたい。非常に厳しい環境の中だが、重要なのは団結力だと思っている。この懇親会もお疲れさま会ではなく、皆の親睦をさらに深める場としてしっかりと活用し、この景気の波に負けないよう邁進してまいりたいと思っている。」と意気込みを示した。

 

経済産業省 須賀 産業機械科長

 続いて、来賓を代表して経済産業省製造産業局の須賀千鶴 産業機械課長が、「日本経済はアメリカによる関税措置などの影響を受け、世界経済の先行き、大変不安定になっているが、経産省では、4月に米国完全対策本部を立ち上げ、全国にて対応ができるように、すでに全国1000カ所以上に特別相談窓口開設した。我が国産業や雇用を守り切るために必要となる支援については全力を尽くし、躊躇なくしっかりと対策を講じていく。」とあいさつをした。

 乾杯は、日本機械工具工業会初の女性役員である田野井副会長が行った。この中で田野井副会長は、「乾杯を調べてみたところ、〝いやさか〟という言葉が出てきた。ますます栄えるようにという素晴らしい意味が込められている。」と述べ、元気よく「いやさか」の発声で開宴した。円もたけなわの頃、散会した。


 

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