ミネベアミツミのルビーボールベアリングが大塚ローテックの腕時計「9号」に採用

ミネベアミツミの製造する特性ルビーボールベアリングと外径1.5mmの世界最小ボールベアリングが9月22日、国産時計ブランド大塚ローテックの複雑機構搭載腕時計「9号」に採用されたと発表した。これに伴い大塚ローテックとミネベアミツミは同日、国立科学博物館 地球館2Fで会見を開いた。
大塚ローテックは、時計界のアカデミー賞と呼ばれているジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ2024のチャレンジ部門(3000スイスフラン以下の時計部門)でグランプリを受賞した現代の名工である片山次朗氏の国産時計ブランドで、今回発表した「9号」片山氏がモジュールだけでなくベースムーブメントから手掛けた自社製ムーブメントを搭載した腕時計。アワーストラインキング、トゥールビヨンなどの複雑機構を、縦44ミリ、横30ミリのスクエアケースに収めている。
時刻表示は文字盤の右半分に配置された畜光ブロックによって下から照らされている。上のディスクが時、下のディスクが分を表し、正時になるとアワーストライキングが作動し、文字盤左のパイプラインのようなゴングをハンマーが叩く仕組み。アワーディスクの中心軸、アワーストライキングのハンマー稼働軸には、ミネベアミツミが「9号」のためだけに開発した特性ルビーボール・ボールベアリングが採用されている。
今回、「9号」に採用された世界最小ボールベアリングと特製ルビーボール・ボールベアリングは、アワーストライキングやトゥールビヨンといった複雑機構の心臓部で、精密で滑らかな動きを支える重要な役割を担っており、特にこの特製ルビーボール・ボールベアリングは、時計の伝統的な部品素材であるルビーと現代の超精密技術を融合させた革新的な部品。
ルビーの輝きはその芸術性に加えて機構のアクセントとなり、ルビー固有の硬度と滑らかさがベアリングの摩耗を極限まで抑制する。また、温度変化にも強く、複雑な機構に長期的な精度と信頼性をもたらすことに成功した。伝統に新たな価値を与える発想と、それを超精密部品として形にするミネベアミツミの技術力が、「9号」の独創性を支えている。


会見の席で片山氏は、「トゥールビヨンはまるごと動くダイナミックさがとても格好良いので搭載した。また、合理的に考えようとするとマスを集中させてコンパクトにし、余計な遠心力がかからないようにするのが高精度とされているが、テンプごと1周動く動きが見られるようなダイナミックなデザインにしたくてこのような機構にした。」と話した。また、今年初めに発表した「5号改」もボールベアリングの魅力を押し出したものだったが、今回もミネベアミツミ製のボールベアリングを採用しており、片山氏は「5号改の時に新規でつくって頂いたものを使わせてもらい、引き続き、すごいベアリングを搭載したいなという話から発展し、今回のルビーボールを開発していただいた。何度も試作をしたり、手間と時間をかけたルビーボールが入ったベアリングが2箇所使われている。」と説明した。