日本機械工具工業会「2025(令和7)年度 秋季総会」を開催 ~和井田製作所の見学も実施~

 

佐橋会長

 日本機械工具工業会(会長=佐橋稔之 住友電気工業 常務)が10月29日、30日の両日、「2025(令和7)年度 秋季総会」を開催した。

 29日は岐阜県高山市内の高山グリーンホテルで総会が開かれた。大石哲也専務理事の司会進行のもと、佐橋会長があいさつをした。この中で佐橋会長は日頃のお礼を述べたあと、「本年6月の総会では景況感は非常に厳しいが後半は盛り返して24年度を超える生産額4840億円の見通しを出したのの、なかなか改善傾向が見えづらいというのが正直なところだ。工業会としては非常に大きな問題として本年2月から施行された中国のタングステン輸出規制で4、5、6月に中国からの輸出管理が強まり若干夏にかけて動き出してきたものの、不安定かつ先行きも見通せないという状況である。」と供給不安が現在も継続している旨を述べ、「タングステン自体、相場が非常に上がっており、昨年度比でほぼ2倍近いところまで上がっている。」と厳しさを滲ませた。

 佐橋会長は、こうした業界を取り巻く背景のもと、重点項目に「①タングステン原材料の調達、②国際化、③日本のものづくりの3つを強化する。」と述べた。

 

経済産業省製 産業機械課 是安課長補佐

 来賓を代表して経済産業省製造産業局産業機械課の是安課長補佐があいさつをしたあと、「経済産業省直近の施策について」の説明があった。今回はテーマを①中国関税動向、②中国輸出管理の最新動向にスポットを当てた。

 是安課長補佐によると、「米国政府は通商拡大法232条に基づき、ロボティクス及び産業機械」の調査に関する意見募集を開始する旨を発表した」とした。調査対象と例示された品目は以下の通り。

 

■ロボット及びプログラム可能なコンピュータ制御式の機械システム
 CNCマシニングセンタ、旋盤およびフライス盤、研削・バリ取り装置、産業用スタンピング(打抜き)およびプレス機、自動工具交換機、ジグ、固定具、切断・溶接・ワーク搬送用の工作機械。

■金属の処理、成形、切断に用いられる用途特化型機械
 オートクレーブ、産業用炉、金属仕上げ・金属処理装置、EDM(放電加工)機、レーザ切断機、水流切断機など、(なお、無人航空機システムは本調査の対象外(別途調査)

 また、米中緊張激化について触れ、「近年、米国は安全保障上の観点から、中国のAI・半導体製造能力抑止のため、先端半導体の輸出管理を強化した。中国は、自国に優位性のある重要鉱物等の規制を強化する動き」であるとし、中国による重要鉱物の対日輸出状況と対策について説明をした。

佐橋会長から表彰を受けるオーエスジー 石川会長兼CEO(右)

 続いて「2025年度日本機械工具工業会賞」の発表あり、田中総務委員長(住友電気工業)より、業界功労賞を受賞した石川則男 オーエスジー代表取締役会長兼CEOの紹介があった。業績の概要は以下の通り。

 石川氏は2015年から4年間副会長を務められたのち、2019年6月に第3代会長に就任。折しも新型コロナウイルス感染拡大の最中で、会合はオンラインをメインとする活動を余儀なくされ、2021年新年賀詞交歓会も中止となりビデオメッセージを配信した。「人の行き来は制限を受け手も私たちがつくり出す製品に制限はありません、回復しない不況はありません」とポジティブな発言を発信し会員を鼓舞した。一方、会員統計ではデータベースを整え会員向けオンラインシステムを稼働させ、蓄積されたデータを会員がいつでも自由に活用することを可能とするシステムを立ち上げたこととうとう永年の功績による。

 その後、技術功績賞、環境賞それぞれの発表があった。

■技術功労賞(社名50音順)
(1)技術功績大賞
 ・「SCPT-Ni合金」の開発 日本特殊合金(株)

(2)技術功績賞 
 ・溝入れ,突切り用PVD材種PR20シリーズの開発 :京セラ(株)
 ・チタン合金旋削用新材種AC9115/25Tの開発 :住友電工ハードメタル(株)
 ・ダイヤコーティングエンドミル「AVIX型」の開発 :住友電工ハードメタル(株)
 ・高切りくず排出性BTA工具「BSG」の開発:(株)タンガロイ
 ・二軸押出機用部材「MZⅡ」の開発 :日本タングステン(株)
 ・EV部品加工用フォーミングラック :(株)不二越
 ・ステンレス鋼旋削材種MC/MP71シリーズの開発 :三菱マテリアル(株)

(3)技術奨励賞 
 ・「押圧FSWホルダ」の開発 :富士精工(株)

■環境賞 (社名50音順)
 (1)環境大賞:(株)タンガロイ
 (2)環境賞 :京セラ(株)
 (3)環境特別賞(3社):日本新金属(株)、三菱マテリアル(株)、三菱マテリアルハードメタル

 受賞者を代表して石川 オーエスジー会長兼CEOが謝辞を述べた。この中で石川氏は、「特殊鋼工具の団体だった日本工具工業会の理事長を務めたのが2009年から2011年、そして日本機械工具工業会の会長には第3代目の会長として2019年から2021年の期間だった。業界として前者はリーマンショック、後者はコロナ禍であり、会員の皆社は大変厳しい経営環境であったと記憶されていると思う。先ほど会員統計について紹介があったが、この時、日本機械工具工業会を世界で存在感のある業界にしたい、そのためには生産の数字を製品ごとにきめ細かく、正確に発信することで存在感が高まるのだろうと感じていた。最近は、トランプ関税、中国によるレアアースやタングステンといったわれわれに関係する課題があるが重要な情報を正確に共有し、皆様と信頼関係を構築することが望ましいと感じている。工業会が世界のものづくりのど真ん中でずっと輝いてほしい。」とエールを送った。

「総務委員会」、「技術委員会」、「環境委員会」、「国際委員会」の活動報告を各委員長が発表した後、2025年度改訂生産額見通しを大石専務理事が説明した。

 この日は懇親会が開かれ、参会者は親睦を深めた。

2日目は和井田製作所を見学! 

和井田製作所 見学の様子

 

説明をする和井田会長兼社長

 30日は、和井田製作所(会長兼社長=和井田光生氏 本社:岐阜県高山市片野町)の見学をした。同社は1933年設立、特殊研削盤の開発、生産、販売を行っているが、特に精密研削盤には評価も高い。従業員数は現在連結ベースで196名。

 和井田社長は、「北アルプス3000メートルクラスの山に囲まれて、冬は寒く夏は暑いところだが、この地は戦争の被害を受けておらず、古い遺産がたくさん残っている町であり、匠の精神が活かされている歴史ある町。」と高山の歴史に触れたあと、企業理念について、「直接お客様と会話をし、そのニーズを受けてしっかり開発をし、特に世の中にない機械、これらをしっかりと継続的進化をさせていく。」と話し、コア技術については「研削加工とそれを具現化するための精密機械技術」の2点を挙げた。

 またトレンドでもある半導体のシリコンウエハ用の機械やスキルレスが実現するソフトウエア、最新の機械などの紹介があった。また同社では生産増強を30%ほどアップさせており、工場内は温度管理(±0.5℃)が徹底されていた。また、CO2の観点から油圧をできる限りやめ、省エネの観点から梱包資材にリサイクルを取り入れている。

 機械設計については、「トポロジー最適化により機械の軽量化をしつつ、剛性は変わらないよう対応している。」と話し、和井田社長は「できる限り1人でも多く、製造業に興味をもっていただきたい。」と述べた。

和井田製作所にて記念撮影

 和井田製作所を見学した後は、船坂酒造で利き酒を楽しんだ後、高山陣屋や古い街並みなどを見学して解散した。
 

MOLDINO