【令和8年 年頭所感】経済産業省製造産業局

「強い経済を実現していく」
●経済産業省 製造産業局長 伊吹英明

■総論
 令和8年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

 世界では、米国の関税措置や、米中欧をはじめ各国による自国優先の大規模な産業政策の展開など、自由主義経済に代わる新たな国際秩序が生まれようとしています。国内に目を向けると、賃上げや国内投資が約30年ぶりの高水準となり、名目GDPも初めて600兆円の大台を超えるなど、日本経済に明るい兆しが現れています。他方で、我が国は人口減少や少子高齢化という構造的要因に直面するとともに、世界的な資源価格の変動などの外部要因も重なったインフレ圧力の高まりなどの多くの懸念も抱えています。

 こうした状況の中、現下のマクロ経済環境を踏まえ、米国の関税措置などの国際秩序の変化に対応しつつ、事業者の皆様とともに強い経済を実現していくために、供給力の強化や輸出拡大も含めた成長戦略、産業の国際競争力強化の重要性がますます高まっています。

■関税対応
 米国関税措置については、昨年7月に日米間の合意が成立し、9月4日に関連する大統領令等が発出されました。日米関税交渉を通じて、関税を引き下げることはできましたが、引き続き一定の税率が残っているのも厳然たる事実であります。これらの影響は、我が国の基幹産業である自動車・自動車部品分野をはじめとする様々な分野に、また、大企業のみならず、中小企業を含むサプライチェーン上の様々な企業に影響を与える可能性があります。実際に、中小・小規模事業者からは、関税の影響を受けて受注が停滞している、今後の業績に悪影響を及ぼす可能性を懸念している、といった声が聞こえております。

 こうした影響を緩和するため、経済産業省としては、資金繰り支援や価格転嫁をはじめとした取引適正化の推進、生産性向上を目的とした各種補助金における関税影響を受けた事業者の優先採択、中小企業等の販路拡大支援、見直された車体課税の活用を着実に実施してまいります。

 特に取引適正化については、本年1月1日より中小受託取引適正化法・受託中小企業振興法が施行されました。同法により新たに規制対象とされた、協議に応じない一方的な代金決定の禁止を徹底するとともに、サプライチェーン上の複数事業者の連携を支援してまいります。

■危機管理投資・経済安保
 昨年10月に誕生した高市政権において、重要鉱物を含むマテリアル分野、航空宇宙分野、防衛産業分野など、危機管理投資・成長投資を集中的に行う17つの戦略分野が示されました。こうした投資を官民一体で推し進めることは、経済安全保障の観点からも重要であり、我が国の自律性・不可欠性を高めることにもつながります。

 昨年は、経済安全保障推進法に基づき、新たに無人航空機と人工衛星・ロケットの部品が特定重要物資に指定されました。こうした新規物資や、既存の特定重要物資である重要鉱物や永久磁石に対して、安定供給の確保・サプライチェーン強靭化を図るべく、令和7年度補正予算において供給源の多角化や国内生産能力強化等に関する費用を措置しました。

 レアアースや半導体等の重要な物資については、特定の国に過度に依存することのない強靭なサプライチェーンを構築するため、有志国と連携し、代替供給源の形成を進めてまいります。事業者の皆様におかれましても、供給源の切替も含め、特定の国に依存しない生産体制の構築をよろしくお願いいたします。

■GX
 GXの分野においては、昨年来、改正GX推進法に基づく排出量取引制度を具体化すべく、各産業界の現状を踏まえつつ、分野別の排出量原単位等の作りこみを行ってきました。2026年度は、いよいよ本制度を本格稼働させるときです。経済産業省としては、こうした規制措置に加えて、グリーン鉄などの需要創出、排出削減が困難な産業向けの燃料転換や製造プロセス転換に対する支援を継続し、脱炭素化に向けた事業者の皆様の取組を後押ししてまいります。
 
■DX
 生成AIの技術革新と社会受容の加速、そして半導体の高性能化は、様々な分野に影響を与えています。ロボットとAIを組み合わせた「AIロボティクス」の普及により、ロボットの活用範囲が拡大し、日本が強みを持つ製造業や、日本の勝ち筋である高齢化、災害等の社会課題の解決に活用されることが期待されています。政府としてもAIロボティクスの戦略を策定し、供給体制の強化と需要創出を戦略的に進めてまいります。

 自動車産業においては、SDV化の進展により、自動車の付加価値の源泉がハードウェアからソフトウェアへと急速に移行しつつあります。E2Eに基づく自動運転の技術開発・実証など、官民で連携してSDV化を実現してまいります。また、こうした重要な分野を含めて投資を促進していくことは経済産業政策の重要な役割のひとつであり、高付加価値な投資を後押しする「大胆な投資促進税制」の創設が令和8年度与党税制改正大綱に盛り込まれました。事業者の皆様におかれましては、本税制を活用して、国内設備投資により資本ストックの質を向上させ、供給能力を抜本的に強化していただくことを期待しております。

■結語
 最後になりますが、大阪・関西万博は2,900万人を超える来場者をお迎えし、成功裏に閉幕することができました。また、様々なビジネス交流も生まれ、「未来社会の実験場」というコンセプトどおり、自動運転バスや空飛ぶクルマ等、多様な分野で最先端の技術実証が展開されました。関係者の皆様におかれましては、多大なる御支援を賜り、深く感謝申し上げます。今後は、一連の成果を整理し、「レガシー」としてどのように継承していくか、検討を進めてまいります。

 以上、申し述べました通り、経済産業行政は多くの課題に直面しております。様々な御意見に耳を傾けながら、全身全霊で職務に取り組んでまいります。
最後に、皆様の益々の御発展と、本年が素晴らしい年となることを祈念して、年頭の御挨拶とさせていただきます。

「中小企業・小規模事業者を全力で応援」
●経済産業省 製造産業局 産業機械課長 須賀千鶴

 令和8年の新春を迎え、謹んで新年の御挨拶を申し上げます。

 昨年は、岩手県大船渡市で発生した林野火災や度重なる豪雨・台風、青森県東方沖を震源とする地震をはじめとして、多くの自然災害が発生した一年でした。被災されたすべての皆様にお見舞いを申し上げます。

 世界では、米国の関税措置や、米中欧をはじめ各国による自国優先の大規模な産業政策の展開など、自由主義経済に代わる新たな国際秩序が生まれようとしています。国内に目を向けると、賃上げや国内投資が約 30 年ぶりの高水準となり、名目GDPも 600兆円の大台を超えるなど、日本経済に明るい兆しが現れています。

 他方で、我が国は人口減少や少子高齢化という構造的要因に直面しております。労働力人口の縮小は、生産能力の低下を通じて供給面に制約をもたらします。加えて、世界的な資源価格の変動など、外部要因も重なり、インフレ圧力が高まる懸念があります。

 こうした状況の中では、官民の投資により、日本経済の供給力を高めることが、需要と供給のバランスや物価の安定に繋がっていきます。米国の関税措置などの国際秩序の変化に対応しつつ、現下のマクロ経済環境認識を踏まえて、高市内閣が目指す「強い経済」を実現していくために、供給力の強化や輸出拡大も含めた経済産業政策、成長戦略の重要性がますます高まっています。

 物価高を乗り越えて「強い経済」を実現するためには、物価上昇を上回る賃上げを実現しなければなりません。中小企業・小規模事業者が、最低賃金の引上げへの対応を含む賃上げの原資を確保できるよう、従来から、価格転嫁対策・取引適正化やデジタル化・省力化による生産性向上、事業承継・M&A等による事業再編を支援してまいりました。今般成立した令和7年度補正予算も活用し、こうした取組をさらに力強く支援していくことにより、労働供給制約社会において、「稼ぐ力」を高め「強い中小企業・小規模事業者」を目指して経営を行っている中小企業・小規模事業者を全力で応援してまいります。

 価格転嫁対策については、中小企業等が事業の正当な対価を得て投資や賃上げの原資を確保するために、官公需も含めた取引適正化を徹底します。特に、1月1日に施行された中小受託取引適正化法(取適法)に基づき、新たに規制対象とされた、協議に応じない一方的な代金決定の禁止等を徹底するとともに、受託中小企業振興法(振興法)に基づき、サプライチェーンにおける多段階の事業者が連携する取組を支援してまいります。

 「危機管理投資・成長投資」による強い経済を実現するため、AI・半導体や量子、バイオ、航空・宇宙、エネルギー・GXなど戦略分野を中心に、大胆な設備投資や研究開発の促進など、総合的な支援措置策を早急に検討し、官民の積極的な投資を引き出します。

 ロボットとAIを組み合わせた「AIロボティクス」の普及により、ロボットの活用範囲が拡大し、日本が強みを持つ製造業や、高齢化・災害など日本が抱える社会課題の解決に活用されることが期待されています。政府としてもAIロボティクスの戦略を策定し、供給体制の強化と需要創出を戦略的に進めてまいります。
また、製造業のDXの実現に向けて、製造現場のデータ整備と製造プラットフォームの開発支援を担う「製造DX拠点」を構築する構想についても、検討を進めてまいります。

 米国の関税措置については、昨年の日米間の合意等も踏まえ、引き続き、産業に与える影響の把握と緩和に取り組みます。

 経済安全保障の観点では、レアアースや半導体等の重要な物資について、特定の国に過度に依存することのない強靱なサプライチェーンを構築することが重要です。官民が一体となった国内生産力の強化や供給源の多角化、国家備蓄の強化等を強力に進めます。

 大阪・関西万博は2,900万人を超える来場者をお迎えし、成功裏に閉幕することができました。また、様々なビジネス交流も生まれ、「未来社会の実験場」というコンセプトどおり、モビリティ、GX、デジタルをはじめ、多様な分野で最先端の技術実証が展開されました。産業界の皆様におかれましては、多大なる御支援を賜り、深く感謝申し上げます。一連の成果を整理し、「レガシー」としてどのように継承していくか、検討を進めてまいります。

 最後に、本年が皆様方にとって実りの多い一年となりますよう祈念して、新年の挨拶とさせていただきます。

 

MOLDINO